バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」
中国ファーストぶりに米国激怒、「中華思想」で崖っぷちの習近平
2018.12.20 まぐまぐニュース!
by 黄文雄『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』
まずは、やはりアメリカのトランプ政権から始まった自国ファースト的な世界の潮流です。
トランプ政権になってからオバマ路線とは大きく違う政策を次々と打ち出し、結果的に米中貿易戦争が起こり、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が逮捕されることとなりました。
もともと中華思想こそ究極の自国ファーストであり、国家を背景に国有企業が過剰生産を繰り返し、世界市場でダンピングを行うという、非常に不公正な競争をしてきたからこそ、アメリカの怒りを買うことになりました。
中国への貿易戦争は、トランプ大統領が勝手に仕掛けたのではなく、アメリカ議会も中国に対して非常に厳しい姿勢で臨んでいます。
https://www.mag2.com/p/news/380328
『壊れゆく世界の標』
ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行
第5章 可能なる平和を求めて より
――中国はあとわずか数年で世界最大の経済大国となる道を着々と歩んでいます。それによってどんな影響が出るのでしょう?
購買力平価(PPP)を基準にすれば、中国はすでに世界最大の経済大国だ。とはいっても、それ自体に大きな意味はない。中国は18世紀にも世界最大の経済大国だったが、その事実がヨーロッパやアメリカの残虐行為から国家が守ってくれただろうか?
まず国民1人当たりの基準として見てみよう。人口が多ければ、当然ながら経済の規模も大きくなる。中国の人口はアメリカのほぼ5倍だから、1人当たりに換算すれば、アメリカよりもずっと低い。
様々な要因を含めた人間開発の基準とされている国連の人間開発指数はどうか。最後に私が確認したときは、たしか90位だった。中国は途方もない規模の生態環境問題や人口統計の問題などを国内に抱えた、比較的貧しい国であり、国民に過酷な状況を強いている恐ろしい権威主義国家なのだよ。
中国は過去に大きな目標を成し遂げたばかりか、近年、経済発展において前例を見ないほどの進歩を遂げている。しばしば忘れられているが、あるいは見過ごされているだけかもしれないが、おおよそ1949年から1979年頃までの毛沢東時代、中国は同時期のインドと比べて、1億人も多くの人命を救った。この二国は開発途上国という点で非常に似通っている。インドは地方の開発計画――保健、教育、開発を支援するプログラム――を導入しなかったために、毛沢東時代にそれを行なった中国と比較すると、1億の人命を犠牲にした。1億は膨大な数だ。しかも、この比較には、中国の大飢饉による死者数も含まれている。それを含めても、1億もの違いがある。この1億人が、中国ののちの発展における基盤の一部となったのだ。
この件に関しては、様々な事情が複雑に絡み合っている。中国は途方もない問題をいくつも抱えている。欧米諸国と比べると開発面で大きな遅れをとっているのもそのひとつだ。また、欧米社会には存在しない問題も抱えている。将来アメリカの競争相手となりうるから中国の発展を妨げるべきだ、という考えには――言うべき言葉が見つからない。われわれは本来ならば、共通善のために協力し合うべきなのだ。
われわれは彼らの罪を糾弾すべきであり、彼らはわれわれの罪を糾弾すべきだ。互いの罪を糾弾し、それについて何か手立てを講じなければならない――糾弾するだけではなくてね。
覇権国家の支配の姿勢
――中国の「一帯一路」構想(注:現代版シルクロード経済圏構想。「一帯」は中国の西側から中央アジア、欧州に通じる陸上地域一帯、「一路」は東南アジアからアフリカの東海岸までに通じる海上ルート)についてお聞きします。アメリカのシンクタンクを含む超党派組織である外交問題評議会は、「中国の巨大インフラ投資により、アジアをはじめとする国々の経済は新たな貿易と成長の時代に突入するだろう」と語り、「しかし懐疑論者は、中国が融資先の政府に債務の罠を仕掛けているのではないかと懸念している」と付け加えています。
一帯一路構想は、中国によってしばらく前に設立された上海協力機構と呼ばれる機関から派生したものだ。上海協力機構には、中央アジアの国々、ロシア、パキスタン、インドが含まれている。アメリカはオブザーバー国としての参加を求めたが、拒否された。中国を拠点としたこの開発構想は、パキスタンを含む中央アジアを通って原則的にトルコまで達するため、ヨーロッパの市場に参入することになる。
一帯一路構想はその拡張版であり、インフラ開発がたっぷり盛り込まれている。北京からカザフスタンまで高速列車で旅をすることができるのに、ニューヨークからワシントンまで高速列車で行くことはできない。アメリカはある意味では、第三世界、開発途上国並みだね。さいわい、反中の枠組みに組みこめば何らかのインフラ開発を進められる可能性はある。こうした事柄はすべて繋がっているのだよ。パキスタンでは、中国による様々な開発が行なわれている。アラビア海沿岸のグワーダルには大きな港があり、中国はそこを使ってアフリカやヨーロッパにアクセスできる。
中国の融資には、通常の融資と同じように懲罰的な要素はあるが、「通常の」範囲内に収まっているようだ。つまり、国家にとって壊滅的な社会構造調整の実施を課す条件が付いている国際通貨基金(IMF)の融資とは違い、悪条件のない融資なのだ。もちろん、よくない面はあるとは思うが、通常の融資に思える。
この構想がうまくいけば、中央アジアは――そして最終的にはヨーロッパとアフリカも――、中国の支配するシステムに統合されることになる。
アメリカはこれを阻止するため、世界各地で、イスラエルでさえも懸命な努力を続けている。たとえば、こんなことがあった。イスラエルがライトレール・システム(注:北米の本格的な長距離旅客鉄道と比べると軽量級の輸送力を持つ都市旅客鉄道)開発の入札を募ると、中国の数社が応募してきた。イスラエルは何もしなければおそらく中国の申し出を受けていたにちがいないが、イスラエルが中国に開発プロジェクト遂行許可を与えるのを必死に阻止しようと、アメリカが大あわてで介入した。中国はすでに(イスラエル北西部にある)ハイファ港を管理・運営している。アメリカはこれがまったくもって気に入らない。ハイファ港は米海軍の軍艦が寄港する主な港だあらね。
これは1例にすぎないが、世界中で同様のことが起こっている。トランプ政権が退任前に行なったことを思い出してほしい。パナマに圧力をかけ、キューバの医師を呼び寄せる計画を断念させた。「悪のキューバ」が新型コロナウイルス危機に陥ったパナマに救いの手を差し伸べるところを、アメリカ国民に見られてはまずいからだ。
同じような圧力によって、様々な国々が中国製ワクチンを使用していない。ボルソナロの犯罪行為はよってブラジルではワクチンが大幅に不足し、大きな危機に陥っているが、アメリカはブラジルに対して中国製ワクチンを使わないよう圧力をかけ続けている。実際のところ、中国製ワクチンはブラジルで製造されているというのにだよ。さらに、ロシア製ワクチンも使うなと圧力をかけている。欧米の情報源によると、ロシア製ワクチンは欧米で使われているのと同じタイプのワクチンであるにもかかわらず、だ。
それもこれも、アメリカの世界支配を確実にしなければならないからだ。