じじぃの「科学・地球_319_新しい世界の資源地図・中国・インドの台頭」

中国vs米国vsインド超大国中国USAインド経済米国インド中国軍

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=SKqBFF3EX80

India will become 3rd largest importer by 2050

India could become the world’s third-largest importer by 2050, according to a report released by the UK’s Department of International Trade.
With a 5.9 per cent share of global imports by 2050, the country will become the third-largest importer, following China and the United States.
https://currentaffairs.adda247.com/india-will-become-3rd-largest-importer-by-2050/

新しい世界の資源地図――エネルギー・気候変動・国家の衝突

ヤーギン,ダニエル【著】〈Yergin Daniel〉/黒輪 篤嗣【訳】
地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって、どのような新しい世界地図が形作られようとしているのか?
エネルギー問題の世界的権威で、ピューリッツァー賞受賞者の著者が、エネルギー革命と気候変動との闘い、ダイナミックに変化し続ける地図を読み解く衝撃の書。
目次
第1部 米国の新しい地図
第2部 ロシアの地図

第3部 中国の地図

第4部 中東の地図
第5部 自動車の地図
第6部 気候の地図

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『新しい世界の資源地図――エネルギー・気候変動・国家の衝突』

ダニエル・ヤーギン/著、黒輪篤嗣/訳 東洋経済新報社 2022年発行

序論 より

本書では、この新しい地図を読み解いていきたい。世界における米国の地位はシェール革命でどう変わったか。米国vsロシア・中国の新冷戦はどのように、どういう原因で発生しようとしているか。新冷戦にエネルギーはどういう役割を果たすのか。米中の全般的な関係は今後、どれくらい急速に(どれくらいの危険をはらんで)「関与」から「戦略的競争」へ推移し、冷戦の勃発と言える様相を帯び始めるか。いまだに世界の石油の3分の1と、かなりの割合の天然ガスを供給している中東の土台はどれくらい不安定になっているか。1世紀以上にわたって続き、すっかり当たり前になっている石油と自動車の生態系が今、新たな移動革命によってどのような脅威にされされているか。気候変動への懸念によってエネルギー地図がどのように描き直されているか、また、長年議論されてきた化石燃料から再生可能エネルギーへの「エネルギー転換」が実際にどのように成し遂げられるか。そして、新型コロナウイルスによってエネルギー市場や、世界の石油を現在支配しているビッグスリー(米国、サウジアラビア、ロシア)の役割はどう変わるのか。
第1部「米国の新しい地図」では、突如として起こったシェール革命の経緯を振り返る。シェール革命は世界のエネルギー市場を激変させ、世界の地政学を塗り替え、米国の立ち位置を変えた。シェールオイルシェールガスが、21世紀の現在まで最大のエネルギーイノベーションであると言える。
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第3部「中国の地図」は、いわゆる「国恥の100年」(100年来の屈辱)と、ここ20年にわたる経済力と軍事力の飛躍的な伸長、それに世界最大になろうとしている経済(見方によってはすでにそうなっている)のエネルギー需要にもとづいて描かれる。中国は地理から軍事、経済、テクノロジー、政治にいたるまで、あらゆる方面で勢力を拡大しつつある。「世界の工場」は今、バリューチェーンの上流にのぼって、今世紀の新産業で世界の盟主になろうと狙っている。また、南シナ海のほぼ全域に対して、自国の領有権を主張してもいる。南シナ海は世界の海上通商路の枢要をなす海域であり、現在、米中の戦略上の対立が最も先鋭化している場所だ。中国よるこの領有権の主張にはエネルギーの問題が大きく関わっている。
中国の「一帯一路」構想は、アジアとユーラシア、さらにその先まで広がる経済圏を描き直し、世界経済の中心に「中華帝国」を据えようとするものだ。

第3部 中国の地図 より

第25章 一帯一路

一帯一路には何ヵ国が加わることになるだろうか。いろいろな数字が噂されている。最大で131ヵ国とも言われる。しかし、中国政府は具体的な数字を示していない。ある政府高官によれば、一帯一路は「地理的な概念ではない。開発のことであり、健全な財政のもとに行われる戦略的に重要なプロジェクトのことだ」という。中東欧諸国は、EU加盟国を含め一帯一路に同調している。イタリアとギリシャも参加に前向きだ。すでに中国の企業がアテネのビレウス港の過半数の株式を取得している。パナマの大統領が習近平に、パナマは一帯一路に参加できるかと尋ねると、もちろんだと習は答えた。一帯一路の基本は「相互接続」にあり、パナマ運河は世界経済の重要な「相互接続」を支えている。
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中国からの投資のおかげで、切実に必要とされていた電力の供給量が増え、パキスタンの製造業や輸出は助けられた。しかし同時に、開発プロジェクトのために中国から部材を輸入したせいで、輸入代金が急増した。中国から受けた融資の返済は滞り、債務は急速に膨らんでいる。その結果、2019年、パキスタン国際通貨基金IMF)に復帰して、1980年代後半以来12回目となる救済措置を受けようとした。米国はIMFに多大の出資をし、その中心的な役割を果たしており、これに黙っているわけにはいかない。「米国をはじめとする各国の税金で成り立っているIMFには、中国から借金をしている国を資金援助によって救済する救済する合理的な理由がない。結局それは中国を助けることになる」と、当時のマイク・ポンぺオ国務長官は述べた。
これは、IMFの元専務理事で現在は欧州中央銀行総裁のクリスティーヌ・ラガルドが「問題ある債務増加」のリスクと呼んだものだ。批評家たちは「債務の罠」と呼び、中国に政治的・経済的に利用される恐れがあるものだと指摘している。ある国家が中国に借金を返せなくなると、中国に支配権を握られる。有名な事例は、中国から11億ドルの融資を受けたスリランカのハンバントータ港だ。ハンバントータ港はもともと交通量の少ない港で、債務を返済できるほどの収入は見込めなかった。債務の返済に窮したスリランカは、結局、債務を帳消しにしてもらう代わりに、港を中国の国有企業に99年間リースすることにした。ただし、スリランカ政府はインド政府から強い要請を受けてインド洋の戦略上重要な位置にある同港を軍事目的には使わないという約束を、中国政府から取り付けてはいる。
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アジア地域の国の中で、一帯一路にとって1番目障りなのはインドだ。インド経済は中国の約3分の1の規模しかない。それでも世界経済と統合され、アジアの安全保障上の利益の高まりとともに「台頭」してきている。インドから見れば一帯一路は、中国による支配を広げるための原動力であり、インドの「台頭」につながる恐れもある。またアジア海域での中国海軍の活動も気がかりだ。「「相互接続」によって他国の主権が無視されたり、損なわれたりしてはならない」と、インドのナレンドラ・モディ首相は釘を刺す。インドと中国のあいだには、地図をめぐる対立もある。どちらも「世界の屋根」ヒマラヤの領有権を主張しており、武力衝突すら生じている。
インド自身は「アクト・イースト(東方で行動を)」政策を発表している。この政策は、ある学者が述べているように、一帯一路への「強い不信感」に動機付けられたものだ。「インドには一帯一路は政治や安全保障上の利得を狙った戦略的プロジェクトと映っている」。アクト・イーストが掲げる目標は4つある。インド洋を「安全」にすること、東南アジア諸国との関係を深めること、米国、日本、オーストラリアとの戦略的パートナシップを強化すること、中国との「相違に対処」することの4つだ。

インドは一帯一路回廊を形成する一部とされ、習とモディはベンガル湾に面したチェンナイでの会談後、「チェンナイ・コネクト」の精神を表明したが、対立は避けられないように見える。両国の競争はすでに、海軍の演習やインド洋の軍事化に現れてきている。

それでも多くの国にとっては、当面、1番いい取引を持ちかけてくるのは中国であるということになるだろう。インフラ資金がやってくるほうを向き、グローバル経済の新しい地図の中で自国の場所を確保したいと考える国々は、台頭する中国、積極的に関与する中国の側に付くほうが、ますます一貫性を失い手を引きつつあるように見える米国の側に付くより、得策だと判断するだろう。