じじぃの「カオス・地球_69_デンジャー・ゾーン・唯一の超大国へ」

Will China End US Global Hegemony? The Future of Our Multipolar World

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=EscKmVqWmy8

米国と中国 10年後の勝者は?


「英語と中国語の覇権争い」10年後の勝者はどちら

2023/05/27  東洋経済オンライン

●中国語が「世界共通語」になる日はやってくるか
これまで〝世界共通語〟として君臨してきた英語。
しかしながら、ここに来て中国語がそれに追随してきている。果たして、中国語が〝世界共通語〟として英語を凌ぐ日はやってくるのだろうか。
著書『英語と中国語 10年後の勝者は』(小学館新書)を上梓した五味洋治(東京新聞論説委員)さんに、ニューヨーク・タイムズ東京支局の上乃久子記者がインタビューした。
https://toyokeizai.net/articles/-/673497?display=b

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章

第1章 中国の夢

第2章 ピークを迎えた中国
第3章 閉じつつある包囲網
第4章 衰退する国の危険性
第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること
第7章 デンジャー・ゾーンへ
第8章 その後の状況

                    • -

『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第1章 中国の夢 より

目指すは「唯一の超大国

地政学的な大惨事は「野心」と「絶望」が交錯したときに発生するものだ。習近平の中国は、まもなくその両方に突き動かされることになるだろう。

われわれはその「絶望」が、経済の原則と、忍び寄る包囲網と衰退の感覚にあると説明していく。だがその前に、まずはその壮大な「野心」、つまり習近平が何を達成しようとしているかを整理する必要がある。中国が目指す高みを理解せずに、中国の崩壊がどれほど困難かを把握するのは難しいからだ。

中国の目標は高い。なぜなら中国共産党はアジアをはじめとする世界の秩序を塗り替えようとする壮大なプロジェクトに取り組んでいるからだ。中国は、国際システムにおけるいくつかの極の1つとしての「超大国」になりたいわけではない。国際システムの中心の地政学的な太陽である。「唯一の超大国」になろうとしているのだ。

習近平はこの野心を2017年10月に発表している。だがそこで使われた言葉は、修正主義的な大国がその意図を曖昧にするためによく使う、不透明なものであった。これが発表されたのは「中国共産党第19回全極代表大会」で、これは中国の指導部が5年に一度、自分たちの業績を誇示し、今後の計画をプレビューするために開催されるものである。

習近平はすでにこの大会で憲法に「習近平思想」を明記し、潜在的な後継者を排除し、毛沢東以来の圧倒的な指導者としての地位を確立すると表明している。3時間を超えるマラソン演説の中で、習近平は国内での権力基盤を強化しつつある中、北京が海外のパワーバランスを揺るがす準備が整っていることを示唆した。

中国共産党の指導の下、中国は「立ち上がり、豊かになり、強くなりつつある」と習近平は宣言した。西洋諸国がかつて民主主義を見習うよう望んだ国は、いまや「あとに続く他の発展途上国のために新たな道を切り開く」ようになった。

北京はすでに世界政治の「センターステージ」に近づきつつある。2049年中華人民共和国建国100周年までに、中国は「国力と国際的な影響力」において「世界のリーダー」となり、中国の「国家の復興」が完全に達成され、さらに「安定した」世界秩序を構築することを掲げたのだ。

習近平の言葉は、素人目には実に平凡なものに見えるかもしれない。ところが共産党の幹部たちがこの言葉を聞いて強く自覚したのは、中国が今やアメリカに対抗できる大国だということである。その数年前、習近平自身、あまり知られていない演説の中でこの点を率直に述べていた。彼の説明によれば、たしかにこの先の道のりは険しく、それを乗り越えるためには「偉大な戦略的決意」が必要だという。ところがその目的地は明確だった。
中国は「資本主義に勝る社会主義」を構築し「主導権を握り、優位に立つ未来」を実現するというのだ。

このような野心は、中国共産党幹部たちの発言からも見すごすことはできなくなった。それは世界有数の海軍造船計画から、ユーラシア大陸の戦略地理を作り直そうとする努力まで、実際に中国共産党が行っていることからも一層明白になっている。

中国の大戦略には、中国共産党の権力基盤を強固なものにして、弱かった頃に奪われた領土を取り戻すという身近な目標の追求だけでなく、地域での影響圏を拡大し、世界的規模でアメリカの権力に対抗するという、より拡大的な目標も含まれる。

中国共産党の目指す目標には、中国の歴史的宿命という感覚と、21世紀の近代的な権力手段を重視するもの、両方が混じり合っている。それらは多くの大国を突き動かす普遍的な地政学的野心と、中国の独裁的な政権を悩ます、飽くなき不安感に根ざしたものだ。

中国が世界を再編しようとする動きは習近平以前からあったが、ここ数年の間に劇的に加速している。今日の中国共産党の幹部たちは「台頭する中国は衰退するアメリカを凌駕(りょうが)する」と自信満々に発言している。ところが内心では「中国の夢」が本当に「夢」で終わってしまうのではないかと懸念し始めているのだ。

中国の「アメリカ問題」

北京とワシントンが友好的に見えた時期でさえ、中国の指導者たちはアメリカの力について、極めて偏った見方をしてきた。たとえば鄧小平は、自らの経済改革がアメリカの市場と技術に依存していたにもかかわらず、アメリカは中国共産党を打倒するために、「煙の出ない第三次世界大戦」を仕掛けていると主張していた。

2014年には西側の2人の著名な政治家たちが、北京では一般的に「アメリカの中国政策は”5つの方針”を中心に展開されている」と信じられている旨を報告した。それは「中国を孤立させること」「中国を封じ込めること」「中国を衰退させること」「中国を内部分裂させること」、そして「中国の主導権を妨害すること」である。

こうした認識は「中国の夢の実現のために、最終的に国力が試されることになる」との信念につながる。2019年に習近平は、中国共産党アメリカとの関係で「新たな長征」に直面していると述べた。これはつまり、覇権と生存のための危険な闘争であるという認識だ。

習近平の言う通り、両国は衝突する方向に向かいつつある。中国共産党大戦略は「東アジアと西太平洋を支配しようとする敵対勢力の台頭阻止」というアメリカが長年宣言してきた権益を脅かすものだ。この戦略は「ユーラシア大陸で優位に立つライバルが、世界規模でアメリカに挑戦してくる」というアメリカが長年抱えてきた恐怖を刺激するものだ。