じじぃの「カオス・地球_76_デンジャー・ゾーン・軍備増強と経済力」

The History of the Great Wall of China for Kids - FreeSchool

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9dIyk65vR-g

Great Wall of China


The Great Wall of China

BBC Select
The Great Wall of China is one of the wonders of the world. And you can enjoy its splendor without even leaving your armchair!
Without commentary and using authentic location sound, take a slow-TV spectacular aerial journey along the entire 1,500 miles of the planet’s longest man-made monument.
This epic adventure explores the structure’s highlights, with breathtaking sights and rarely seen delights.
https://www.bbcselect.com/watch/a-slow-odyssey-the-great-wall-of-china/

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢
第2章 ピークを迎えた中国
第3章 閉じつつある包囲網
第4章 衰退する国の危険性

第5章 迫る嵐

第6章 前の冷戦が教えること
第7章 デンジャー・ゾーンへ
第8章 その後の状況

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『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第5章 迫る嵐 より

計算された強圧と拡張

中国のH-6K爆撃機が、大陸本土の飛行場から離陸した。
2機の最新鋭戦闘機にエスコートさせながら台湾とフィリピンの間を東方向に飛行し、開けた太平洋に向かった。攻撃標的の射程内に入ると、精密誘導ミサイルを発射してグアムのアンダーセン空軍基地を攻撃し、大爆発を引き起こして、西太平洋におけるアメリカ空軍の拠点を破壊してしまった。この攻撃は、長年懸念されていた米中戦争における破壊的な口火を切ることになった。

幸運なことに、この1件は2009年9月に人民解放軍空軍が、その技術や能力の向上を誇示するために公開したシミュレーション動画の一幕に過ぎなかった。中国の知的財産権窃盗の最たる伝統として、同空軍はこの動画にハリウッド映画『トランスフォーマ―』や『ザ・ロック』のシーンを挿入していた。しかしこの『戦狼的な映像術』とでも呼べる動画は、中国の戦略における最新の恐ろしい変化を警告するものだった。
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習近平は2012年に政権に就いて以来、中国がダークサイドに向かうことを合図してきた。国家安全保障に関する習近平の内部向けの演説では、一貫して2つのテーマが強調されてきた。

第1に、中国は悪化する脅威に直面している。
第2に、中国共産党はそのような脅威を、自分たちの支配が破壊されて将来への壮大な計画が頓挫する前に、先制して粉砕しなければならないということだ。習近平が主に懸念しているのは、これまで本書が述べてきたような経済成長の鈍化と外敵の脅威であり、それに対して彼が提唱する対処法は、過去のピークを迎えた大国たちと同じように、重商主義、鍛圧、そして報復のために失地回復主義の復活なのだ。

それはどのようなものとなりそうか。中国はおそらく、あらゆる方面に狂気の沙汰のように拡大・進出したり、北朝鮮のように国民を厳しく管理することはないだろう。習近平とその部下たちはあまりにも賢いので、そのようなことはしないはずだ。彼らはドイツと日本がユーラシア大陸で主導権を握ろうとしたとき何が起こったかをよく知っているし、硬直した全体主義と独裁主義がソ連をいかに破滅されたかをつぶさに見てきたはずだ。

だが中国の指導者たちは、低成長という「新常態」と戦略的包囲網に身を委(ゆだ)ねれば、外国に捕食され国内が政情不安にさらされることも知っている。そこで、中国共産党はライバルを抑えて「中国の夢」を維持するために、計算された強圧と拡張を行うはずだ。習近平はすでにこの戦略の主要な要素のいくつかを実行に移しはじめており、それらは決して「美しい光景」ではない。

まず手始めに、中国はユーラシアとアフリカで経済的な帝国を築き上げる努力を惜しまない。国内の余剰生産力と外国の保護主義の高まりに直面する中国は、自国企業が市場や天然資源への特権的アクセスを享受できる「排他的経済圏」を切り開くため、大規模なキャンペーンをを強化している。

それと同時に、中国は技術的優位を確保しつつ、そのデジタル面での影響力を世界中に広めようとしている。これらの努力は、習近平の言葉を借りれば中国を「無敵」にすることであり、これは北京が敵や属国を支配する影響力を得ることを意味する。全体的に見れば、中国の行動は世界経済を分断し、新たな冷戦を引き起こす恐れがあるのだ。

不安になった中国は、自由世界との境界線をさらに押し戻そうと努力するだろう。中国共産党は[ソビエトのような]特定の「中国モデル」を輸出しないかもしれないが、独裁主義と民主主義の間のグローバルなバランスを変化させることによって、その政権を守ろうとするかもしれない。

北京は急速に、強力な反民主主義勢力になっている。しかもそれは毛沢東が想像したこともないような高度な監視と処罰の手段を備えつつあるのだ。そして民主主義の国々が1930年代以来最大の危機に見舞われているとき、中国は世界の独裁者を支え、自由主義社会を不安定化させようと懸命に動いている。

さらに、中国は戦争に向けた準備を進めている。現在進行中の軍備増強は、第二次世界大戦以降では他に類を見ないペースで進んでいる。中国の近隣諸国やアメリカも、遅ればせながら軍備を増強しているが、多くの新兵器システムは実際に運用されるまでまだ時間がかかる。その間に、中国は東アジアの係争地を係争地を占領し、その海沿いの横腹を脅かすアメリカと同盟国のネットワークを断ち切るチャンスを得ることになる。

いずれのケースでも、中国は短期的な「チャンスの窓」が閉じられ、長期的な「脆弱性の窓」が開いてしまう前に突破を試みているのである。中国はまさにそのプロセスの中で、野心、絶望、そして侵略という、おなじみの道を歩んでいる。

もちろん台頭する中国には多少の反対意見を許容し、拡大のチャンスを放棄し、危機のエスカレートを防ぐこともできるはずだ。なぜなら富と力と立場が上昇しつつあるからだ。ところがピークを迎えた中国は、地政学的な勝利を得るためにさらに必死になり、軽蔑や挫折に過剰に反応するようになるだろう。

軍備増強と強力な経済的影響力の手段の獲得のために数十年をかけてきた中国は、まだチャンスがある今のうちにその力を活用しようと考えているように見える。だがその結果は世界にとって悲惨なものになるかもしれないのだ。