じじぃの「カオス・地球_71_デンジャー・ゾーン・ピークを迎えた中国」

【中国激怒】「習近平主席は独裁者」に中国激怒 バイデン大統領発言の本心と波紋<後編>2023/6/22放送

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=nOnLFCjdXIo

中国の習近平国家主席が米国のブリンケン国務長官に面会


プライムニュース 2023年6月22日(木)

『習主席は“独裁者だ” バイデン発言の余波は 米中会談の成果と課題』

【キャスター】長野美郷、反町理
【ゲスト】佐藤正久(元外務副大臣 自由民主党参議院議員)、古森義久産経新聞ワシトン駐在客員特派員 麗澤大学特別教授)、興梠一郎(神田外語大学教授)、朱建榮(東洋学園大学客員教授

2月の気球撃墜事件以来、途絶えていた米中対話が再始動した。しかし、中国に乗り込んだブリンケン長官を迎えたのは、習主席や外交担当者との「笑顔なき対話」だった。
その一方、ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏など米産業界の重鎮が相次いで訪中し、習主席との交流を深めている。
政治上で深まる対立と経済関係回復の動き。その裏側に潜む本音と思惑と、日本が取るべき対中姿勢について、徹底議論する。

●米国の失策?中国の罠? ”異例”の対話へ意識の真相は?

反町理、「習主席が中央に座って、ブリンケン国務長官に対し教えるような姿勢はどんな意図があるのか」

興梠一郎、「中国の序列は座席で決まる。習主席が中央にいるのは説教するということを意味している」
朱建榮、「今回のは会談というのではなく、習主席が面会してやったということ」

古森義久、「あまりにも、子供っぽい。いかにも俺のほうが偉いのだ、と見せている」

朱建榮、「米国は何も抗議していないじゃないですか」
古森義久、「子供が見ても分かる。これを見て中国人民が満足するという構図だ」
佐藤正久、「米中が最悪と言われているなかで、会ってやったんだという演出だ」

●「デカップリング」から「デリスキング」欧米の流れに日本はどう対応?
ブリンケン国務長官「米中経済を切り離す『デカップリング』は追及せず中国経済依存のリスクを低減する『デリスキング』を進める」。
イエレン財務長官「米中の経済が完全に分離することは両国にとって悲惨だ」。

【提言】 日本は中国とどう向き合うべきか

佐藤正久 「戦略的な官民連携」
古森義久 「中国との対話の危険に注意」
朱建榮 「他力本願ではなく、長期的均衡外交」
興梠一郎 「冷眼」

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デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢

第2章 ピークを迎えた中国

第3章 閉じつつある包囲網
第4章 衰退する国の危険性
第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること
第7章 デンジャー・ゾーンへ
第8章 その後の状況

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『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第2章 ピークを迎えた中国 より

幸運の逆転

中国には、大国として飛躍するための資金、環境、人材、政策のすべてが正しく備わっていた。だが一過性の成功は、永遠には続かない。過去10年のうちに、中国の躍進を可能にした条件は悪化した。国を上昇させてきた資産の多くは急速に負債となり、中国を苦しめ始めたからだ。

(1) 人口大災害

はじめに、中国には経済成長の原動力となる、健康な労働生産年齢にある人口が不足している。つい最近まで前例のない人口ボーナスの恩恵を受けてきた中国は、いまや史上最悪の平時の人口危機に見舞われようとしている。

これはまさに「一人っ子政策」のせいである。中国が初めてこの政策を実施した頃は、これは強力な経済刺激となった、上昇志向が強く、比較的自由な、親となる世代を生むことになったからだ。しかしそのツケが回ってきた。この親たちの代わりとなる子どもたちがいなくなってしまったからだ。
 (略)

(2) 枯渇する資源

中国で不足しているのは人材だけではない。資源も枯渇しつつある。中国の目覚ましい経済成長はまさに「持続不可能な成長」なのだが、その過程で環境を破壊してしまったからだ。その結果、北京は基本的な資源に割増料金を支払わなければならなくなり、経済成長に非常に高いコストがかかるようになった。

「資本産出比率」とは、1ドルの生産物を生み出すために必要となる支出額を示すもので、原材料が安価な国はこの比率が低く、投入資源が高価な国は比率が高くなる傾向がある。中国の資本産出比率は、2007年以降に3倍となり、これは同じ額の経済生産物を生み出すために3倍の経済投資が必要になったことを意味する。
 (略)

(3) 制度機関の衰退

コンピュータが強力で効率的なオペレーティングシステムを必要とするのと同じように、国家も有能で説明責任のある制度機関を必要とする。良い政府とは権威と説明責任の間でバランスをとっているものだ。つまり法律を執行し、物事を成し遂げるのに十分強力でありながら、社会に対して透明性を保ち、政治的なコネではなく市民権に基づいて人々を平等に扱う。

中国が1970年代以降に繁栄したのは、おそらく良い統治体制ではなかったにせよ、より良い統治を行える制度改革があったからだ。しかし、秩序があって透明性があり、しかも独裁的であるシステムを無期限に維持することは難しい。習近平率いる中国は、いまや「新全体主義」へと後退しており、これが経済成長を損(そこ)なっている。

過去10年の間に、中国は明らかに家父長制的で抑圧的になっている。2012年に政権に就いて以来、習近平は自らを「万物の主席」に任命し、すべての重要な委員会の指揮を執り、集団統治の形跡を一切排除してきた。

2017年の党大会では「毛沢東思想」を意識した習近平思想」が国の指導思想の一部とされ、あらゆる教育レベル、日常生活のほぼすべての場面で教化が浸透した。この偉大な指導者に逆らう者は、たとえ財界の大物や映画スターであっても、世間から姿を消してしまうことになったのだ。

勢いに乗る習近平は、政府の最高レベルに息のかかった人物を送り込み、主席の任期制制限を廃止した。事実上、彼は毛沢東以後の個人支配に対する安全策を、組織的に取り除いていった。いまや中国は、終身独裁者によって支配される、硬直した寡頭制国家となったのである。

このようなことは、もし習近平が賢明な経済改革派であるならばそれほど悪いことではないかもしれない。ところが習近平は、一貫して経済効率よりも政治支配を優先している。

例えば、これまでは民間企業が中国の富のほとんどを生み出していたが、習近平政権下では政治的コネのある国有企業が、中国の銀行が提供する融資と補助金の80%を受け取るようになった。つまり国営のゾンビ企業が支援される一方で、民間企業は資本を奪われ、生き残りのために共産党員を買収することを余儀なくされてきた。
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習近平政権下の中国共産党は、異論を潰(つぶ)し、社会のほぼすべての面で支配を強めた。2021年、習政権は「5ヵ年計画」を発表し、インタビューやテクノロジー関連のあらゆる部門に厳しい規制を課した。それには医療、教育、交通、食料配達、ゲーム、保険など、一見すると「非戦略的」な業界のものも含まれていた。企業はデータを国家に引き渡さなければならず、北京の承認と指導がなければ、融資を受けたり、海外に上場したり、合併したり、データの安全性や消費者情報のプライバシーに関連するいかなる動きもできなくなった。

2021年の秋までに、国内最大のテック企業は、これらの規制の結果として既に1兆ドル以上の時価総額を失った。厳しい政治支配の実現は、同時に経済停滞を生み出すことになっている。

(4) 厳しさを増す地政学的環境

運命の逆転の実例として最後につけ加えるのは、中国以外の国々が容易に経済成長できなくなっていることだ。冷戦時代の国際政治の状況のおかげで、中国の経済面での奇跡は可能になった。絶え間ない軍拡からの束の間の解放をもたらしてくれたからだ。ところが北京はいまや全くちがった状況に直面している。

転機になったのは、2008年から2009年にかけての金融危機だった。アメリカはじめ多くの西側の民主国家は、この金融危機で中国の台頭をより強く意識するようになった。『中国が世界を支配するとき』『中国の不満の対象になること』『中国による死』といったタイトルの本がベストセラーになり、欧米の情報機関は中国がアメリカを抜き、世界最大の経済大国になると予測した。こうした不安は、中国が貿易大国として台頭することへの懸念に拍車をかけた。
 (略)

(5) 中国経済の泥沼化

中国の脅威的な経済パフォーマンスは、決して永続的に続くものではなかった。発展の果実を得てしまえば経済成長は鈍化するものだからだ。低賃金で莫大な労働力を持つ国が経済大国になる経済の方程式は、成熟した情報化経済への移行を可能にする方程式とは違う。逆風が常に避けられないものとわかっていても、実際にそれに直面すると、それがいかに猛烈か、常に驚かされることになる。長年蓄積された問題のおかげで、中国経済毛沢東時代以来の持続的な減速期に入り、しかもその終わりは見通せないのだ。

1つの示唆に富む統計を見てもらいたい。中国の公式な国内総生産GDP)成長率は2007年には15%あったが、2019年には6%に落ちた。おれは30年ぶりの低成長であり、これに新型コロナウイルスパンデミックが追い打ちをかけて、中国経済は赤字に転落している。

もちろんこの「6%」という成長率はまだ目を見張るものだが、それも「もしその数字が真実であれば」という条件付きの話だ。電力使用量、建設、税収、鉄道の貨物量のように、客観的に観察可能なデータに基づく厳密な調査によると、中国の実際の成長率は公式発表のおよそ半分であり、中国経済は報告よりも20%小さいことが分かっている。中国国家統計局の前局長や現首相などの政府高官たちは、政府が財政帳簿をごまかしているのを認めている。