じじぃの「カオス・地球_21_壊れゆく世界の標・中国の脅威は存在そのもの」

習近平の「中国夢」の二つの危険性

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【都市伝説】中国か描く2050年の世界地図...これは怖い

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中国の最終目標 (ニューズウィーク日本版)


NHK出版新書 壊れゆく世界の標(しるべ)

【目次】
第1章  命を守らない国家
第2章  アメリカを覆う「被害妄想」
第3章  スローガンを叫ぶだけでは何も変わらない
第4章 変革は足元で始まっている

第5章  可能なる平和を求めて

第6章 持続可能な社会への道標

第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義

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『壊れゆく世界の標』

ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行

第5章  可能なる平和を求めて より

中国とどう渡り合うべきか

――中国の国内課題に一部について伺います。中国北西部におけるイスラム少数民族ウイグルへの弾圧やチベット問題、香港の問題、労働者の蜂起などが起こっています。それと同時に中国では、超富裕層階級が爆発的に増加していますね。

糾弾されるべき弾圧や人権侵害は、各地で起こっている。
中国の資本主義は、おそらくアメリカのものよりさらに不公平だと言えるだろうね――このふたつがよく似ているのは間違いない。非常に不公平な社会だ。

チベット問題はかなり昔から存在するが、近年、新しい動きはないと思う。香港ではより強硬な手段で圧政が敷かれ、民主主義が制限されている。もっとも、香港に民主制が敷かれたのは、まだそれほど昔ではない。イギリスは中国に対して大規模な戦いを仕掛け、香港を奪って植民地にしたときだからね。

第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義 より

中国の脅威とは「中国の存在そのもの」

――タッカー・カールソンだけでなく、主要なメディアの多くが中国の脅威に関する報道で溢れかえっています。あなたは最近、パキスタンの「ダーニッシュTV」に出演されました。そこで、中国は「アメリカには従属しない。アメリカに威嚇されることはありえない。ヨーロッパとは違って、威嚇されること自体を容認できない国なのだ。世界的に優勢な覇権国、たとえば言えばマフィアのドンである国には、成功した反攻など容認できない」と発言されていました。中国はヨーロッパとは違う、というと、ヨーロッパなら脅かして従わせることができるということですか?

われわれは絶えずそれを目にしているよ。「成功した反攻」というのは、実は1964年に国務省の政策企画評議会が用いた表現だ。アメリカに対するキューバの脅威に関する議論のなかで、彼らはこの脅威が150年前のアメリカの政策に対するキューバの「成功した反攻」だ、と発言した。つまり1820年代にモンロー主義の対象となったのと同じ脅威だったわけだ。アメリカ政府は当時、モンロー主義と銘打って、アメリカ政府が北半球を支配する意図を表明した。

モンロー主義は、当時はたんなる言葉でしかなかった。アメリカが北半球を支配するには、イギリスの力が強すぎたからね。しかし、北半球の支配が目標だったことはたしかだ。そしてキューバは現在と同じように、1960年代から一貫してこの目標に巧みに逆らってきた。もちろんその頃には、アメリカもついに目的を達成し、北半球最大の大国となったわけだが。
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1983年、レーガンは勇気と男気を誇示してグレナダに侵攻し、「アメリカは果敢に対抗する」と誇らしく宣言した。そして、わずか40人のキューバ人建設労働者の抵抗を、6000人の米兵で打ち倒した。軍事侵攻が始まる前にグレナダ側は米兵に入国を許可すると同意していたにもかかわらず、レーガン政権はそれを聞かなかったふりをして兵士を送りこんだ。軍事力を誇示するためだよ。そして6000人の兵士に対し、彼らの大いなる勇気に報いる8000個の勲章が授与され、レーガンアメリカが再び偉大になったことを示すため、輝かしい英雄を演じた。

この侵攻はおそらく、レバノンで米軍基地が攻撃され、何百人もの海兵隊員が犠牲となった事実が新聞の一面を飾るのを防ぐために行なわれたにちがいない。「米軍基地の兵士が何百人も殺されたなどと第一面に載ってはまずい。グレナダに侵攻し、米軍がいかに強く男らしいかを証明しよう」とね。おそらくそれがグレナダ侵攻の真実だ。成功した犯行は、ひとつとして容認できないからね。

しかし、中国にこれと同じ手は使えない。中国は威嚇など歯牙にもかけず、自分たちの計画を続行するからだ。きみが先ほど引き合いに出したインタビューで私が中国の脅威について話していたとき、実を言うと、オーストラリアの元首相ポール・キーティングの言葉を借りたのだよ。キーティングは中国の脅威を分析した記事のなかで、中国の脅威とされているものをひとつひとつ検証し、それらを脅威と呼ぶのは誤りだと述べている。この検証自体はとくに難しいことではないが、とにかく、キーティングはこの誤りを指摘し、中国の脅威は中国が存在することだと結論している。中国は存在し、中国は威嚇されない。しかも実に危険な計画を実行している。たとえば、つい最近、中国は東南アジアやアフリカに、職業訓練学校を1000校ほど作る計画を立てた。そこでは、学生に中国の技術を教える。つまり、東南アジアやアフリカの国々は将来、中国の先進技術を用いることになるのだ。

アメリカは必死に中国の技術開発を阻止し、ほかの国々が中国の技術を使うのを止めようとしている。だが、中国はそれを巧みに回避し、東南アジアやアフリカ諸国に職業訓練校を作る計画を着々と進めている。そこで国の開発に役立つ先進技術を若者に学ばせて、東南アジア、アフリカ諸国に貸しを作る。いったいどうすれば、国家がそこまで非文化的な行為に及ぶことができるのか? そんな計画はなんとしても阻止せねばならない――アメリカはそう考える。その対策として考えういた案は爆弾を使うことらしいが、爆弾は効果的な武器とは思えないね。とにかく、アメリカはこれが中国の脅威だと考えている。

中国の行なっていることの多くはきわめて間違っており、なかには忌まわしい活動や厳罰に処すべき行為もある。国際法違反の行為すらあるが、そのどれも脅威ではない。アメリカは、ほかの場所ではるかにひどい行為を容認しているのだよ。中国の脅威は、ポール・キーティングの言葉どおり、中国の存在そのものなのだ。この存在はわれわれには動かせない岩であり、誰が何を言おうと自国の政策をひたすら続行する。

中央アジア全体に自国の計画を拡張し、自国が支配するシステム内にその地域を取りこむつもりだ。中国を本拠地にした上海協力機構には、豊かな資源に恵まれ強力な軍隊を要するロシアも含まれている。インドとパキスタンも含まれている。いまではイランも、中央アジアのすべての国も加入している。アフガニスタンも遠からず加わる可能性が高い。そうなると中国は、アフガン経済をこれまでアメリカの支配下にあった麻薬産業から、豊かな鉱物資源を利用した鉱物の輸出へと移行させる可能性もある。中国はこれを成功させるかもしれないし、うまくいかないかもしれない。

中国は間違いなく、破綻しかけているトルコに目をつけている。おそらく、トルコに対してすでに持っているかなりの影響力をさらに拡大し、東欧と中欧に食いこもうとするだろう。また、アフリカ開発計画も実行中で、アメリカの縄張りであるはずの南米にまで進出している。アメリカはこれまでのところ、中国の拡張をまったく阻止できずにいる。努力はしたにせよ、実際のところ、中国近海で頻繁に挑発行動をとっているだけだ。まあ、中国が近海で行なっている軍事演習は完全に不適切ではあるが、それについてはウクライナの場合と同じように、外交と交渉で対処できるはずだ。しかし、バイデン政権のタカ派の国家安全保障問題担当顧問たちには、どうやら外交と交渉という選択肢はないようだね。これも変える必要のあることのひとつだ――それも早急に。