じじぃの「カオス・地球_20_壊れゆく世界の標・環境破壊・汚染物質」

【ゆっくり解説】世界の汚染された地域3選

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Sr9L5aZfrJk


アメリカのリベラル派が見たトランプを支える最貧州の現実

2019/4/11 BOOKウォッチ
読み終えると静かな感動と行き場のない怒りがこみあげてくる。『壁の向こうの住人たち』(岩波書店)は読者をそうした気持ちにさせる本だ。
著者はカリフォルニア大バークレー校名誉教授の女性社会学者。バークレーノーベル賞学者を輩出するアメリカ西海岸の名門大学、リベラル派の拠点としても知られている。ヒッピー文化発祥の地で、70年代にはベトナム反戦運動が盛んだった。
本書はリベラル派の社会学者が、それとは正反対の保守派の牙城アメリカ南部のルイジアナ州南西部を訪れて2011年から5年間にわたって調査し、その研究成果をノンフィクションとして書き上げた労作だ。
https://books.j-cast.com/2019/04/11008892.html

NHK出版新書 壊れゆく世界の標(しるべ)

【目次】
第1章  命を守らない国家

第2章  アメリカを覆う「被害妄想」

第3章  スローガンを叫ぶだけでは何も変わらない
第4章 変革は足元で始まっている
第5章  可能なる平和を求めて

第6章 持続可能な社会への道標

第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義

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『壊れゆく世界の標』

ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行

第2章  アメリカを覆う「被害妄想」 より

どうすれば資本家の論理から脱せるか

――先ほどご指摘のあった火急の課題である環境災害に話を戻しましょう。山火事や森林火災、ハリケーン被害、洪水、南極とグリーンランドの解氷など、環境の激変は予測よりもはるかに速いペースで進んでいます。2020年の9月は記録破りの猛暑で、デスバレー国立公園では地球上の最高気温、54℃強が記録されました。われわれは気候激変に向かって突っ走っています。

国連組織であるIPCC気候変動に関する政府間パネル)のあらゆる予測が、一部の者たちが主張する「虚偽の警報」どころか、控えめすぎたわけだね。 一流の科学者はみな、いますぐわれわれはパニックに陥るべきだと警告している。

環境災害による最悪の事態とは、すぐに起こるわけではない。大幅な海面上昇は今日か明日のうちに起こるのではなく、ゆっくりと進行する。だが、きみが言及したような環境災害の初期徴候があちこちで起こっているのは事実だし、これからさらに悪化するだろう。予測には誤差がつきものだから、どれほどひどくなるかはっきりとはわからないが、あらゆる分析が極限の危険を予測している。ひょっとすると、人間が秩序だった生活を送れる可能性はなくなるかもしれない。いますぐではない。今世紀の終わり、次の世紀の終わりにそうなる可能性がある。

だが、いま対処すれば、まだ間に合う。いまなら、その危機を克服する時間が10年か20年あり、克服する手段もある。マサチューセッツ大学の経済学者ロバート・ポーリンは、気候変動に関する詳細かつ入念なリサーチを行った。すでに一部の州や国がその研究結果を反映した政策した政策を実行に移している。GDP国内総生産)のおそらく2パーセントないし3パーセントを投資すれば、いま挙げたような危機の全てを制御できるという有力な証拠も発表されているね。コロンビア大学教授のジェフリー・サゥクスといlった分析家たちも。ポーリンとは多少異なるモデルを使ってだが、同じような推定を導きだしている。すぐに着手できる適切な手段を講じれば、破滅への驀進(ばくしん)を止められるばかりか、いまよりもはるかによい世界――よりよい仕事、人生、住環境、機関を持つ世界を作ることができるのだ。

第6章 持続可能な社会への道標 より

――グテーレス国連事務総長はこう発言しています。「われわれは自分たちが地球で生きるために必要としているものを破壊し続けている。氷冠の氷河も解け続け、海面上昇が加速し、海は死にかけ、生物多様性は崩壊している……もう時間は残されていない。これ以上の不可逆的なダメージを防ぐために、いますぐ行動を起こさねばならない」。こうした警告では例外なく転換点に触れられていますが、転換点をいくつ越えたとき、地球規模の破滅が始まるのでしょうか?

それが「いつ」かを正確に予測することはできないが、不可逆的な変化が始まる転換点に日々近づいていることはたしかだ。1年、1ヵ月ごとに、この問題への対処はさらに難しくなる。10年前に対処していれば、今日ほど切迫した状況に陥っていなかったはずだ。様々な危機にも、もっと容易に対処できる方法があったろう。30年前なら、問題に取り組むのは、はるかにたやすかった。そして当時すでに環境汚染による深刻なダメージが将来どういう影響を及ぼすのかは、明白だったのだよ。

きみも覚えていると思うが、第一次ブュシュ政権は京都議定書に加わることさえ拒否した。アメリカは、富裕層をますます富ませ、民間企業の膨大な利益を維持するという最優先順位を守ることだけを考えている。

そして、この国や世界に何が起こるかという問題は二の次だ。民主党のほうも大した功績はあげていないな。彼らはほぼ共和党の言いなりだった。とはいえ、少なくとも民主党には、議論を投げかける。あるいは圧力をかけることが可能な政治集団が存在する。この国はいま、そこまで分裂しているのだよ。

引き返すことのできない転換点がいつ来るか、われわれにはわからない。だが、それがいつか来ることはたしかだ。実際、すでにそこに達している可能性すらある。まだだとしてえも、まもなく達するだろう。不可逆的な転換点のひとつ、あるいはいくつかに達することは間違いない。人類が明日滅びるわけではないよ。この国にはまだ生き延びる。ほかの国々もまだ生き延びる。しかし、現状を維持すれば、完全な世の終わりが来る。
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実際、いま挙げたなかには、環境問題に深い関心を持つ人々も多い。ルイジアナ州バイユー地域に関するアーリー・ホックシールドの著書『壁の向こうの住人たち』岩波書店)は、非常に興味深い。ホックシールドは、がん回廊(注:ルイジアナ州ニューオーリンズ西北150キロメートル長の工場地帯)と呼ばれる、ほぼ赤一色、つまり頑固に共和党を支持する地域で長年働いてきた。そこでは、この一帯に集中する科学工場による汚染によって多くの人々ががんになり、命を落としている。住民はこの事実に気づき、化学工場に反感を抱いている。

ホックシールドは、地域を除染すること、がん回廊に汚染物質をまき散らすさんぎょうを追い出すことに専心する環境保護者たちと一緒に活動していた。

この地域から選ばれた極右の議員はすべてを破壊しようとしているのだが、どういうわけか多くの住民が環境破壊の最先端にいるそうした議員に投票している。ホックシールドが調べると、投票者たちからは、理にかなった答えが返ってきた。環境保護を主張する民主党議員がどういう行動をとっているか見てくれ、とね。つまり、こういうことだ。ワシントンDCからスーツを着た役人がひとりやってきて、住民に「バイユーは汚染されているから、魚を釣ることはできません」と告げる。そのスーツを着た男は、汚染を垂れ流している産業に対して実際に対策を講じるのか? いや、何もしない。では、そんな男の言葉に耳を傾ける必要などない――これは不合理な答えだろうか? 私はそうはおもわない。

そうした人々も説得することができる。まるで見込みがないわけではない。そうは言っても、説得するには、彼らの状況を理解し、親身になって献身的に努力する必要がある。
たとえば、かつて共和党を率いていた「重罪犯」首脳部が、実際に何を計画しているのかを隠す必要はない。民主党にもそうした悪人は大勢いる。そうした行ないを隠してはだめだ。しかし、前に進める可能性はある。