じじぃの「カオス・地球_13_壊れゆく世界の標・炭素税の導入へ」

環境省“2100年の天気予報” 全国140ヵ所で40度超(19/07/09)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4jrrxPrG9vY

2100年 未来の天気予報 (環境庁


「2100年 未来の天気予報」(新作版)の公開について

2019年07月08日 環境省
1.ウェブサイトでの公開について
この度、「2100年 未来の天気予報」(以下、「本動画」という。)を「COOL CHOICEウェブサイト」内で公開いたしました。

本動画は、生活に身近な天気予報という題材を活用し、地球温暖化対策による影響・被害の可能性について、一人ひとりの正しい理解を得て、地球温暖化に対する危機意識を共有し、今できることから行動いただくことを目的に制作したものです。
https://www.env.go.jp/press/107008.html

NHK出版新書 壊れゆく世界の標(しるべ)

【目次】
第1章  命を守らない国家

第2章  アメリカを覆う「被害妄想」

第3章  スローガンを叫ぶだけでは何も変わらない
第4章 変革は足元で始まっている
第5章  可能なる平和を求めて
第6章 持続可能な社会への道標
第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義

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『壊れゆく世界の標』

ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行

第2章  アメリカを覆う「被害妄想」 より

問題の根はトランプよりはるかに深い

――選挙人制度に加えて、アメリカの精度にはもうひとつ奇妙な側面があります。11月の第1火曜日に定められている選挙当日と1月20日に行われる大統領就任式のあいだに、最高権威者のいない空白期間が設けられていることです。ほぼ3ヵ月に及ぶこの期間に、何が起きてもおかしくありません。

ニューヨーク・タイムズ紙でコラムを書いているポール・クルーグマンが、ちょうど今朝の紙面で、もしもトランプが選ばれなかったとして、そしてもしも――これは大きな仮定だし、とうてい確実とは言えないが――相手の勝利を認めたとしても、何もかも破壊できる期間が3ヵ月もある、と書いている。負けた腹いせに、トランプはこの国の経済を壊滅させるかもしれない、とね。

トランプ大統領に関しては、もうひとつ念頭に置いておかねばならないことがある。ナグルとイングリングの公開状にもあったように、大統領でなくなり免責特典を失えば、トランプは深刻な刑事告発に直面する可能性がある。したがって、彼には大統領職にしがみつかねばならない個人的な理由があるのだ。

どうすれば資本家の論理から脱せるか

――先ほどご指摘のあった火急の課題である環境災害に話を戻しましょう。山火事や森林火災、ハリケーン被害、洪水、南極とグリーンランドの解氷など、環境の激変は予測よりもはるかに速いペースで進んでいます。2020年の9月は記録破りの猛暑で、デスバレー国立公園では地球上の最高気温、54℃強が記録されました。われわれは気候激変に向かって突っ走っています。

国連組織であるIPCC気候変動に関する政府間パネル)のあらゆる予測が、一部の者たちが主張する「虚偽の警報」どころか、控えめすぎたわけだね。 一流の科学者はみな、いますぐわれわれはパニックに陥るべきだと警告している。

環境災害による最悪の事態とは、すぐに起こるわけではない。大幅な海面上昇は今日か明日のうちに起こるのではなく、ゆっくりと進行する。だが、きみが言及したような環境災害の初期徴候があちこちで起こっているのは事実だし、これからさらに悪化するだろう。予測には誤差がつきものだから、どれほどひどくなるかはっきりとはわからないが、あらゆる分析が極限の危険を予測している。ひょっとすると、人間が秩序だった生活を送れる可能性はなくなるかもしれない。いますぐではない。今世紀の終わり、次の世紀の終わりにそうなる可能性がある。

だが、いま対処すれば、まだ間に合う。いまなら、その危機を克服する時間が10年か20年あり、克服する手段もある。マサチューセッツ大学の経済学者ロバート・ポーリンは、気候変動に関する詳細かつ入念なリサーチを行った。すでに一部の州や国がその研究結果を反映した政策した政策を実行に移している。GDP国内総生産)のおそらく2パーセントないし3パーセントを投資すれば、いま挙げたような危機の全てを制御できるという有力な証拠も発表されているね。コロンビア大学教授のジェフリー・サゥクスといlった分析家たちも。ポーリンとは多少異なるモデルを使ってだが、同じような推定を導きだしている。すぐに着手できる適切な手段を講じれば、破滅への驀進(ばくしん)を止められるばかりか、いまよりもはるかによい世界――よりよい仕事、人生、住環境、機関を持つ世界を作ることができるのだ。

おのすべてが手の届く範囲にある。ただ、つかむためには手を伸ばさなければならない。
さらに4年、トランプの呪縛に囚われることになれば、手遅れになるかもしれない。転換点を過ぎてしまうか、そのすぐ手前に達してしまうかもしれない。そこまでいかなくとも、残された短い時間内に環境災害に対処できるチャンスが大幅に減ることは間違いない。

――ロバート・ポーリンといえば、彼と『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』(那須里山舎)という新しい本を出されていますね。そのなかで、「古きものは死にゆき、若きものは生まれ得ぬ。この空白期間には多くの恐ろしい事象が現れる」というアントニオ・グラムシの有名な考察を引用し、そのあとでしかし、そうした恐ろしい事象は、台頭する積極的行動主義により相殺される……若きものはまだ生まれ得ぬが、多くの息吹がそこここに感じられる。そうした息吹がどんな形をとるかはまるで予測がつかない」と述べています。

まさにいま必要とされる積極的な関与、および行動の緊急性と民衆関与の観点からすると、どうすれば、あなたの言う「資本家の論理」から脱却できるのでしょうか?

完全に脱却することはできないが、改善することはできる。一般的に知られていることだが、資本主義と呼ばれるのは、実際は一種の国家資本主義だ。どんな国も資本家にはなりえない。資本合のみの社会は、あっという間に自滅してしまう。ビジネスが成り立たなくからね。したがって、あらゆる既存社会は何らかの形の国家資本主義だ。この国家資本主義は、国民を搾取するものにも、また国民に寛容なものにもなりうる。

近い将来、これからおよそ20年以内に資本主義制度をひっくり返すのは不可能だが、大きく変えることはできる。間違いなく可能だ。たとえば、炭素税を導入すればいい。これまで提案されたようなわずかな炭素税ではなく、もっとも本格的な、税収入のおよそ75パーセントを労働者とそれを必要とする人々に還元する再分配炭素税を導入する。

そうすれば、2018年からフランスで断続的に行なわれて黄色いベスト(ジレ・ジョーヌ)運動のような抗議運動は避けられるだろう。

エマニュエル・マクロン大統領は燃料税を上げようとして、労働者の猛反対に遭った。労働者たちは、「途方もなく不釣り合いな税を払うのは貧しい私たちだ。私たちは税金をもっと払うのではなく、むしろ税を軽減されるべき存在だ」と訴えた。これは、まったくもって正当な主張だ。だから、そういう炭素税ではなく、実行可能であり公平な炭素税を課せばいい。そうすれば、環境を破壊している資本家の利益が減り、その分が労働者に再分配される。
必要なのは、意識の変革だ。
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個人でできること、州や地域、連邦政府でできること、国際的な規模でできること。国際的な規模でできること。その気になれば、できることはいくらでもある。温暖化に国境はないのだから、国際的な取り組みも不可欠だ。

将来の排ガスのほぼ半分は、いわゆる開発途上にある国家、より貧しい社会から来ることを忘れてはならない。そうした社会は、はるかに効率のよい、安価で、有益なサステナブル・エネルギーに移行するのに助けを必要とする。少なくとも最初の段階では、助けが必要だ。パリ協定の取り決めには、サステナブル・エネルギーへの移行に向けて開発途上国に支援の手を差し伸べる可能性も含まれている。とても十分とは言えないが、少なくとも何もしないよりはましだ。だが、共和党の大半は協定に反対し、トランプはあっさり離脱してしまった。とんでもない、われわれは国民も世界の人々も、誰ひとり助けるつもりはない、とね。

この種の悪を打ち倒さなければならない。