じじぃの「カオス・地球_19_壊れゆく世界の標・米国の党派対立」

トランプ大統領がまさかのコメント「地球温暖化が必要だ!寒すぎる!」『不都合な真実2:放置された地球』特報

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0fTZaSr2jy4

トランプ政権がもたらした「ねじれ構図」とその反動、大統領選のゆくえ


アメリカの気候変動政策はどこに向かうのか? トランプ政権がもたらした「ねじれ構図」とその反動、大統領選のゆくえ

2020年07月11日 EnergyShift
これがなぜ、そしてどのように世界の気候変動、再生可能エネルギーの今後を左右するのだろうか。
それを見抜くカギは、トランプが米国大統領であったこの3年半余りに起こった、世界的な気候変動への動きを振り返ると浮かび上がってくる。そのひとつが「ねじれの構図の発生」だ。
https://energy-shift.com/news/9abb47bc-65c1-40c3-9929-e0adc43b9fcc

NHK出版新書 壊れゆく世界の標(しるべ)

【目次】
第1章  命を守らない国家
第2章  アメリカを覆う「被害妄想」
第3章  スローガンを叫ぶだけでは何も変わらない
第4章 変革は足元で始まっている
第5章  可能なる平和を求めて

第6章 持続可能な社会への道標

第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義

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『壊れゆく世界の標』

ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行

第6章 持続可能な社会への道標 より

――「チョムスキー民主党の擁護者になったらしい」と批評家たちが言う声が聞えてきますが、そうではありませんよね。

とんでもない。民主党の政策はひどすぎる。それに私の書くもののほとんどは民主党の批判だよ。私は聞かれたことに答えているだけだ。何が起きているかと訊かれるから、これが現状だと答える。

民主党の言動と、私が実際に書き、話してきたことを比べてみようか。8月9日から始めよう。この日、IPCC気候変動に関する政府間パネル)による最新の報告書が公表された――実に恐ろしい内容だった。報告書には、われわれが重大な局面にいることが、これまでよりもはるかに明確に記され、ただちに化石燃料排出を大幅に減らしはじめ、今世紀の半ばまでに完全に脱却しなければならないと提言されていた。それが8月9日だ。8月11日に何が起こったか? ジョー・バイデンが、実質的には石油カルテルであるOPEC石油輸出国機構)に生産量を増やすよう訴えた。国内のガソリン価格を抑えるためだ。そうすれば中間選挙で票を増やせるからね。そういう政党が称賛に価するだろうか?

民主党を非難する材料はたっぷりある。民主党は山ほど間違ったことをしている政党だが、国民のごく一部の超富裕層を優遇し、自分たちの言動で国と世界にどれほど害をなそうと意に介さない政党ではない。一方、権力のために事実をねじ曲げる、ならずもの組織が、もはや政党と呼べるものか。共和党はネオナチに起源をもつヨーロッパの極右政党となんら変わらない。とんでもなく異常な政党だ。

――IPCCは、200名以上の科学者による3000ページに及ぶ報告者で、地球が直面している危険を警告しています。彼らの推定によれば、地球の平均気温は2040年には、おそらく1.5℃上昇するそうです。アントニオ・グレーテス国連事務総長はこの報告書を「人類にとってのコードレッド(非常事態)である」として、「私たちがいま力を結集すれば、気候変動による破局を回避できる。しかし今日の報告書がはっきり示したように、対応を遅らせる余裕も、言い訳をしている余裕もない」と述べました。

気候変動が危険な状態に達している証拠は山ほどあります。懐疑論者でさえ耳を傾けるべき事態だと思いますが、たとえばわれわれと国境を接する隣国カナダを例にとってみましょう。カナダの主要企業エンブリッジは、アルバータ州のオイルサンド(注:きわめて粘性の高い鉱物油分を含む砂岩。タールサンドとも)からウィスコンシン州へのパイプライン建設を計画しています。オイルサンドは地球で産出されるなかで最も汚染度が高いと言われています。環境保護主義者や先住民グループが長年反対してきたにもかかわらず、パイプライン計画が進んでいますね。

カナダもひどいし、ほかの国々もそれほど努力をしているとは言えないが、アメリカは言葉に尽くせぬほどひどい。

業界紙、とくに石油関係の定期刊行物を見れば、それがよくわかる。石油メジャーはそれこそ笑いがとまらないほど莫大な利益をあげているうえ、有望な掘削場所も新たに見つかっている。さらに、アメリカ政府は化石燃料に資金援助を続けている。共和党がそれ以外の状況を頑として受け入れようとしないからだ。

いま自分たちを共和党と呼んでいるかつて政治組織だったこの集団は、破滅への疾走をさらに加速すること、地球に最大限のダメージを与えることに専念している。共和党を支持している州を見てみたまえ。共和党の議員たちはこの事実を隠そうとさえしていない。われわれは、エネルギー企業に最大限の利益を与えるために、この世が終わるまで、ひたすら破滅に向かって疾走せねばならないのだ。

それが衰退の一途をたどる民主主義国家アメリカの片翼だ。まだ機能しているもう片方の翼、民主党はどうか? 民主党は大きく二極化しているが、少なくともこの分裂によってチャンスが生まれた。危機を軽減させるだけでなく、よりよい世界に近づくための政策を推し進めるチャンスだ。いまのわれわれは、この選択肢を話し合う機会を手にしているのだよ。
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ここしばらく下院で続いている「交渉」を見てごらん。共和党は、富裕層と民間企業への増税はしないという、越えてはならない一線を確立した。そして、トランプが成し遂げた唯一の偉業である富裕層の私腹を肥やすための法案――労働者や中流階級を含めたアメリカ国民への背信行為であり税金詐欺に等しいこの法案――だけは、頑として死守するつもりなのだ。

さらに、何兆ドルも盗む術(すべ)をひねりだす顧問弁護士を大勢抱えた富裕層や大企業、脱税者を取り締まる資金を内国歳入庁(IRS)に与えないことも、越えてはならない一線だ。富裕層を調査する予算をIRSに与えるなど、もってのほかというわけだ。

それが少し前まで共和党と呼ばれていた、急進的なサディスト集団だよ。率直に言って、それが彼らの実体なのだ。

では、民主党はどうか。民主党は分裂している。党を牛耳っているのはクリントン派ーオバマ・タイプ、つまりウォールストリート重視でネオリベラル派の議員らりだが、彼らは気候変動問題への積極的な対処を渋っている。右派の、「穏健派」などと間違ったレッテルを貼られたジョー・マンチンやクリステン・シネマら皮肉屋は、企業の金で懐を膨らませるから、最小限の取り組みにすら尻込みしている。たとえばシネマは、財政調整措置のどの部分に同意するのかさえ口にしない。質問されても、「申し訳ないけど言えない」の一点張りだ。

一方、民主党内には、気候変動やパンデミック、全般的な社会の崩壊からこの国を救おうと努力を続ける進歩派のグループがいる。大半が若い議員からなるグループだ。いわゆる財政調整措置は、40年に及ぶネオリベラル攻撃にさらされた国民に多少なりとも休息をもたらそうとしている――これが可決されれば、パンデミックによって経済的に困窮する一般国民の必要に多少とも応えることができるだろう。こうした法案に積極的なグループは「急進左派」と呼ばれるが、いま挙げた政策に急進的な要素は何ひとつない。

いまのアメリカはあまりに右に偏りすぎて、世界の大半の国々にとってごく普通の政策ですら、急進的だとみなされてしまう。

事実、フィナンシャル・タイムズ紙の編集者が、「バーニー・サンダースがドイツにいたら、保守政党であるキリスト教民主同盟の後任候補になれる」と冗談半分に発言したが、実際、そのとおりだ。