イラン核施設に破壊工作か(2021年4月12日)
米国によるイラン核開発システムへのサイバー攻撃
国家間サイバー戦争の幕開け イラン核施設を攻撃したマルウェア「Stuxnet」(2009~10年)
2016.3.8 サイバーセキュリティ情報局
2009~10年、特定の標的を狙う巧妙なワーム「スタクスネット」がイランの核開発を妨害するために使用され、実被害も発生した。
インターネットに接続していない産業用制御システムがUSBメモリーを介して感染・発症。この攻撃がきっかけで国家間サイバー戦争が幕を開けた。
2010年5月11日 イランのウランプログラムの大黒柱の一つ、IR-1ウラン濃縮用遠心分離機の大手開発元Kalaye Electric Coが攻撃される。
https://eset-info.canon-its.jp/malware_info/trend/detail/160308.html
『壊れゆく世界の標』
ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行
第5章 可能なる平和を求めて より
サイバー戦争という国際課題
――アメリカとロシアの関係について、またそれがどう進化しているかについて、お話をお聞かせください。
リベラル派がなぜ「ロシア嫌悪症」から身を引いたのかについて、ニューヨーク・タイムズ紙に、保守派の政治アナリスト、ロス・ドゥザットによる面白い記事が載った。トランプはオバマとまったく同じように、ロシアに対してかなり挑発的な態度をとっていた。バイデン政権では、この傾向がいっそう加速しているようだ。
一般的に見てバイデンの外交政策チームは、トランプのチームよりさらに攻撃的な姿勢をとっている。まあ、すべてにおいてというわけではない。バイデンは、2月に期限が切れる新START(注:START1に続く米露間の核軍縮条約)を救済するのにちょうどいいタイミングで就任した。トランプはこれを延長しようというロシアの申し出をはねつけたが、バイデンは受け入れた。これはいいステップだったが、バイデンはそれ以外のすべての政策で各国との緊張を高めている。深刻な意見の相違があるエリアは多々あるが、必要なのは外交、交渉をを通じた平和的な問題解決への取り組みであり、挑発行為をエスカレートさせることではない。後者は間違いであるばかりか、基本的に自殺行為だ。多々ある問題のうちのひとつでも紛争に発展すれば、大変なことになる。その国とアメリカだけでなく、世界もおしまいだ。
――新たな国際課題が、サイバー戦争です。イランが攻撃され、反撃しました。ロシアが攻撃し、アメリカが反撃しています。深刻な事態に発展する可能性があります。
国防総省(ペンタゴン)によると、サイバー戦争は軍事攻撃に匹敵する――だから、軍事的対抗策を正当化できるそうだ。これまでのところ、サイバー攻撃が功を奏した例がひとつあるね。オバマ政権化で行なったイラン核開発システムへのサイバー攻撃と、原子力開発施設における機器の破壊だ。
アメリカは大規模なサイバー攻撃によってこうした機器の破壊に成功し、それを誇りにしている。これは秘密でもなんでもない。アメリカでは偉大な達成だとみなされている。
いま言ったように、ペンタゴンの基準によると、イランはこれに対して軍事攻撃を仕掛ける権利がある。言うまでもないが、アメリカはそんな権利を絶対に認めない。価値ある被害者と価値のない被害者の理論と似たようなもので、どれほど破壊的な行為であってもアメリカが実行するかぎりは称賛に値するが、ほかの国がアメリカに対して行なえばその限りではない。しかも、アメリカはそう思っていることを隠そうともしていない。
しかし、これは危険だ。ほかの国々もわれわれと同じようにサイバー攻撃を用いる可能性があるのだから。現在、アメリカにはサイバー軍が設置され、サイバー攻撃を防ぐ方法を研究している。他国も同様の研究に励んでいるのは間違いない。サイバー攻撃も、条約の同意によって世界中の人々を守ることができる領域だ。ハッカーなどを阻止することはできないが、少なくとも国の活動を制御することはできる。そうした条約が大きな違いをもたらすだろう。しかし、明らかにそれはバイデン政権のアジェンダ(計画表)にはない。この政権のアジェンダにあるのは、対立をエスカレートさせることばかりだ。