じじぃの「歴史・思想_579_トッド・第三次世界大戦の始まり・対ロシア制裁の解除へ」

【動画】ロシア 天然ガスを使った“揺さぶり”

動画 YouTube
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220722/k10013730991000.html

日本のLNG輸入国(2017年)


石油から再エネまで、あまり知らないロシアと日本のエネルギー協力

2018-05-31 資源エネルギー庁
●石油・ガス分野
ロシアと日本が昔から協力してきたエネルギー分野が、石油とガスです。
日本は、輸入原油のうち約6%を、輸入天然ガスのうち約9%をロシアから輸入しています。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/russia.html

第三次世界大戦はもう始まっている』

エマニュエル・トッド/著、大野舞/訳 文春新書 2022年発行

1章 第三次世界大戦はもう始まっている より

「核共有」も「核の傘」も幻想にすぎない

いま日本では「核シェアリング」が議論されていると聞いています。しかし、「核共有」という概念は完全にナンセンスです。
核の傘」も幻想です。使用すれば自国も核攻撃を受けるリスクのある核兵器は、原理的に他国のためには使えないからです。中国や北朝鮮アメリカ本土を核攻撃できる能力があれば、アメリカが自国の核を使って日本を守ることは絶対にあり得ません。自国で核を保有するのか、しないのか。それ以外に選択肢はないのです。
ヒロシマナガサキは、世界でアメリカだけが核保有国であった時期に起きた悲劇です。核の不均衡は、それ自体が不安定要因となります。中国に加えて北朝鮮も実質的に核保有国になるなかで、日本の穀保有は、むしろ地域の安定化につながるでしょう。

米国に対する怒り

ヨーロッパで壊滅的な政策を進めているアメリカは、果たしてロシアと戦争をしているのか、あるいはドイツに戦争を仕掛けているのかわからないようなカオスに陥っています。
つまり、日本が抱えるジレンマは、日本だけのものではなく、ヨーロッパに対しても問いかけるべき問題なのです。
私は今、怒っています。今回、アメリカは、私の住むヨーロッパで戦争を始めたからです。これによって、私のアメリカに対する敵意は絶対的なものになりました。
しかもそのアメリカが、イギリスの支援を受けていたという点も、個人的にショックな出来事でした。「イギリスは常にバランスがとれて合理的に振る舞う国である」というのが、私が長年抱いてきた信念でしたが、そんな考えはもう捨てようと思います。

西洋は「世界」の一部でしかない

ここで日本は何をしようとしているのでしょうか。ヨーロッパで起きている戦争のために日本がロシアに制裁を科すというのは、少し考えてみると滑稽なことです。
西洋が「世界」を代表していると西洋自身は自惚(うぬぼ)れていますが、それは、対ロシア制裁に参加している広義の「西洋」、すなわちアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本と韓国にすぎません。西洋は「世界」の一部でしかないのです。
国連総会での対ロシア決議やG20での議論を見ても、世界の大半の国は、むしろロシアの勝利を望んでいるようにも見えます。彼らは、「西洋の傲慢さ」にうんざりしているのです。今回の戦争において、西洋が勝利する可能性もありますが、同じだけ敗北する可能性もあるのです。

長期的に見て国益はどこにあるか

現在、日本も対ロシア制裁に加わっていますが、この危機が去った後も、中国とロシアは同じ場所に存在し続けます。台頭する中国と均衡をとるためには、日本はロシアを必要とする、という地政学的条件に変わりはありません。
西側に追い込まれたロシアが中国と接近し、中国に軍事技術を提供することこそ、日本にとっての悪夢です。

ロシアの行動が「許せない」ものだとしても、アメリカを喜ばせるために多少の制裁を加えるにしても、ロシアと良好な関係を維持することは、あらゆる面で、日本の国益に適います。

感情的にならざるを得ない状況のなかでも、決して見失ってはならないのは、「長期的に見て国益はどこにあるか」です。