じじぃの「カオス・地球_15_壊れゆく世界の標・老いたモグラ(マルクス)」

Noam Chomsky on the Consequences of Capitalism

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=y8UciV-Frr8

Marx’s Old Mole is Right Beneath the Surface


Old Mole

From Wikipedia
Old Mole was a radical New Left oriented underground newspaper published in Cambridge, Massachusetts from September 1968 to September 1970.
Old Mole was continued by a second volume titled The Mole, which published five issues from November 1970 to April 1971. Printed biweekly in a 16-page tabloid format, Old Mole was based for most of its existence in a storefront and basement office on Brookline Street in Central Square. Selling for 15 cents (later raised to a quarter), 47 issues were published in all, with press runs averaging 8000 to 10,000 copies. Subscriptions were free to prisoners and soldiers.

The paper's name came from a quotation from Karl Marx which appeared in the masthead: "We recognize our old friend, our old mole, who knows so well how to work underground, suddenly to appear: the revolution."

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NHK出版新書 壊れゆく世界の標(しるべ)

【目次】
第1章  命を守らない国家
第2章  アメリカを覆う「被害妄想」
第3章  スローガンを叫ぶだけでは何も変わらない

第4章 変革は足元で始まっている

第5章  可能なる平和を求めて
第6章 持続可能な社会への道標
第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義

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『壊れゆく世界の標』

ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行

第4章 変革は足元で始まっている より

気候危機を生き延びるには

――2月の初めにヒマラヤ山脈の氷河が解けてことにより、インドのウッタラカンド州で大洪水が起こり、ダムが崩壊し、多数の犠牲者と大きな被害が出ました。2月の終わりには、南極のブラント棚氷の巨大氷山が分離しました。1270平方キロメートルもの氷山です。ニューヨーク・シティはおよそ780平方キロメートルですから、それよりも大きいことになります。

科学誌を読むものなら誰でも、将来の惨事を暗示する発見を定期的に目にしている。気候変動による影響はすでに起こりつつあるのだ。われわれは、脅威を軽減し、問題を克服するために手を打てるか、と自分たちに問いかけるべきだ。この答えは、イエスだよ。

いまさら、その氷山の分離を止めようとしても無駄だ。原則はすでに大気中にある二酸化炭素だからね。大気中の100万あたりの粒子数は着々と上昇を続け、現在きわめて危険な領域に達しつつある。そして、これまで散々大気を汚してきたせいで、この上昇はしばらく続くだろう。それは仕方がない。

グリーンランドがすでに、海面を上昇させる融解段階に入る転換点に達してしまった可能性はある。しかし、重要な問いはすぐ目の前にある。われわれに何ができるのか? その答えは――たくさんのことができる、だ。
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今日同じ間違いをおかせば、当時の二の舞だ。世論がどうあれ、バイデンは民主党の保守派セクターと、クリントンを支持するリベラルなウォールストリート重視セクターから圧力を受けることになる。これらのセクターが進歩的な政網を食い止めようとすることは間違いない。そうなると、国にとって悪影響が出るだけでなく、気候変動問題にとっても取り返しのつかない事態になる。

「老いたモグラ」が顔を出すとき

――ご著書『ConSequences of Capitalism』では、社会変革に関する章をカール・マルクスの「老いたモグラ」で締めくくられていますね。

カール・マルクスは、いまにも起こりそうな革命を、表面下に潜む老いたモグラと表現した。

先ほどのディヴィッド・ヒュームの話に戻るが、権力とは合意をもとに成り立っている。しかし、その合意のもとには、それを望んではいない、支配者の言いなりになるのはいやだ、と主張する人々がいる。それが表面に現れるのは時間の問題であり、それが現れたとき、社会を前進させるような大きな変化を起こすことができる。

つまり、われわれの社会の下には老いたモグラが潜んでいるのだよ。そして、このモグラは様々な方向に進みうる。

マルクスの老いたモグラは表面のすぐ下まで迫っていると思う。われわれが革命について考える機会を得て、支配者に服従せずにすむ可能性に気づけば、自分の人生を自分でコントロールできるし、企業も自分で運営できる。そのチャンスが、すぐ表面下まで何度も浮上してきているのではないかな。私が子どもの頃、世界恐慌の真っただ中に座り込みのストライキがあった。あれは、上司など必要ない、自分たちで仕事場を管理し、運営できる、という最初の意思表示だった。そして、まさにそのとおりのことが可能なのだよ。

あのストライキで人々の考え方が変化し、大衆のあいだでニューディール政策への支持が高まった。そして最高裁判所ニューディール政策を阻止するのをやめた。あれは、政府が、様々なセクターが台頭しつつある変化を受け入れなければ大変なことになると気づいた瞬間だった。

これからも、そういう動きが表面に出てくると思う。先ほど触れたネクスト・システム・プロジェクトは、自分たちの企業を自分たちで運営できるという方向に動きだしている。企業を中国に移すことを決断するのがニューヨークの銀行家である必要はない。自分たちで運営の仕方を決められるのだ、とね。

自分たちの暮らしだけでなく中国やメキシコの労働者の生活を改善すちために、彼らと連携して物事を決めていくこともできる。同じ労働者どうし、共通の利益があるのだから。

多くの組合が名称に「国際」と付けているが、それ自体にはほとんど意味はない。しかし、それに意味を加えることはできるし、それを前面に押し出すことはできる。

いま、こうした動きが顕著にうかがえる。国際主義が最前面に押しだされている時代だね。パンデミック地球温暖化――すべてが国際的な課題だ。各国が力を合わせて取り組み必要がある。ひとつの場所で対処しても意味がない。欧米諸国だけで地球温暖化は止められない。パンデミックに国境はない。労働者の権利にも国境はない。中国やメキシコで起こっている労働者の弾圧は、アメリカの労働者にも害を与える。

われわれは力を合わせて様々な問題に対処することができる。これからはその方針で物事を進めていくべきだ。