DNA修復 ミトコンドリア (rakuten.ne.jpより)
DNA修復
●核とミトコンドリアにおけるDNA損傷の違い
ヒトおよび真核生物においては一般に、DNAは細胞内において核とミトコンドリアの二つの領域に存在する。核内に存在するDNA(核DNA:nDNA)は、ヒストンと呼ばれるビーズ状の蛋白質に巻き付き、染色体として知られる大規模な団粒構造を形成し、保護された状態で存在している。
ヒトのmtDNAは13種のタンパク質に関する遺伝情報をもっているが、これらの遺伝情報が破壊され、機能不全を起こしたミトコンドリアはアポトーシスを活性化することがある。
ATP(アデノシン酸リン酸)とはエネルギーを貯蔵できる物質」です。
筋肉や骨の萎縮は特に高齢者では顕著で、そこから生じる骨粗鬆症や寝たきりなどの問題は、実はミトコンドリアと大いに関係あります。
https://www.rakuten.ne.jp/gold/royal-3000/dna-repair.html
人類、宇宙に住む 実現への3つのステップ
ミチオ・カク(著)
地球がいずれ壊滅的なダメージを受けることは避けがたく、人類は生き延びるために宇宙に移住する必要がある。
本書は世界的に高名な物理学者が、1)月や火星への移住、2)太陽系外への進出、3)人体の改造や強化、の3段階で宇宙の進出の方途を示す。NASAやイーロン・マスク、ジェフ・ベゾスらの宇宙開発への挑戦を追いながら人類の未来を見通す、最高にエキサイティングな一冊!
第Ⅰ部 地球を離れる
第1章 打ち上げを前にして
第2章 宇宙旅行の新たな黄金時代
第3章 宇宙で採掘する
第4章 絶対に火星へ!
第5章 火星──エデンの惑星
第6章 巨大ガス惑星、彗星、さらにその先
第Ⅱ部 星々への旅
第7章 宇宙のロボット
第8章 スターシップを作る
第9章 ケプラーと惑星の世界
第Ⅲ部 宇宙の生命
第10章 不死
第11章 トランスヒューマニズムとテクノロジー
第12章 地球外生命探査
第13章 先進文明
第14章 宇宙を出る
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『人類、宇宙に住む 実現への3つのステップ』
ミチオ・カク/著、斉藤隆央/訳 NHK出版 2019年発行
第Ⅲ部 宇宙の生命
第10章 不死 より
世代間宇宙船
地球にそっくりの惑星が、宇宙に見つかったとしよう。そこには、酸素と窒素を主成分とする大気、液体の氷、岩石質のコアがあり、サイズはほぼ地球とほぼ等しい。人類の移住先として理想的な候補のようだ。ところがこの惑星は、地球から100光年離れている。つまり、核融合や反物質で推進するスターシップでも、そこへ行くのは200年かかるのだ。
1世代がおよそ20年だとしたら、これは、10世代の人間がスターシップで生まれ、それ以外の故郷を知らずに生きることを意味する。
気が遠くなるような話かもしれないが、中世の偉大な建築家が、死ぬまでに自分の作品の完成を見られないと知りつつ大聖堂を設計していたのを思い出してほしい。聖堂の完成を祝うのは孫たちかもしれないと彼らにはわかっていた。
あるいは、人類が新たな住みかを求めて7万5000年ほど前にアフリカを出たとき、彼らはその旅を終えるのに何世代もかかりそうなことに気づいていたはずだ。
だから、何世代にもわたって旅をするという考えは、ことさら新しいものではない。
不死を求めて
近年、科学者たちは、老化にかんするとりわけ深い謎をいくつか解明した。何世紀も出だしでつまずいていたが、いまや信頼の置ける検証可能な理論がいくつかあり、見込みがありそうに思える。たとえば、カロリー制限、テロメラーゼ、老化遺伝子がかかわる理論だ。
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近年、レスベラトロールという有望な化学物質が取り出された。赤ワインから見つかったレスベラトロールは、サーチュイン分子の活性化を助けている。この分子は、老化の主な現象である酸化のプロセスを遅らせることがわかっており、そのため加齢に伴う分子の損傷から体を守るのに役立つ可能性がある。
かつて、こうした化学物質と老化のプロセスとの結びつきをいち早く示したひとり、MITの研究者レナード・P・ガレンテにインタビューしたことがある。彼は、若さの泉とばかりにそれに飛びつくフード・ファディスト[食物が健康に与える影響を過大に信じてしまう人]の多さの驚いていた。ガレンテ自身は、そこまでの効果には疑念を抱いていたが、老化の真の治療法が見つかるとしたら、レスベラトロールなどの化学物質がなんらかの役割を果たすかもしれないという可能性は否定しなかった。彼はその可能性を探るべく、エリシウミ・ヘルスという会社を共同で興しまでしている。
老化の原因につながるもうひとつの手がかりは、テロメラーゼだろう。これは、われわれの生体時計の調節にひと役買っている。細胞が分裂するたびに、テロメアという染色体末端が短くなる。やがて、50~60回ほど分裂を繰り返すと、テロメアは短くなりすぎて消え、染色体が壊れだす。すると細胞は老齢の状態に入り、正常に機能しなくなる。このように、細胞が分裂できる回数には限界があり、これをヘイフリック限界という(以前、その発見者であるレナード・ヘイフリック博士にインタビューしたことがある。ヘイフリック限界をどうにかしてなくし、死の治療法を手に入れることはできるのかと私が訊くと、彼は声を上げて笑った。きわめて懐疑的なゆだった。彼には、この生物学的な限界のプロセスの根本にあることはわかっていたが、その絵お経についてはまだ研究中である。また老化はさまざまな経路がかかわる複雑な生物学的プロセスなので、われわれが人間を対象としてその限界を変えられるようになるのはずっと先のことなのだ)。
ノーベル賞受賞者のエルザベス・ブラックバーンはもっと楽観的で、こう言っている。「遺伝現象を含むとの徴候も[テロメアと]老化とともに起こる不愉快なこととのあいだに、なんらかの因果関係があることを示しています」。彼女は、テロメアの短縮とある種の病気とのあいだに直接的なつながりがあることを指摘しいぇいる。たとえば、あなたのテロメアが短かったら──長さの点で入口の下から3分の1に相当していたら──あなたが心疾患にかかるリスクは40パーセント高くなる。「テロメアの短縮は、その人の命を奪う病気のリスクをもたらすように見えます。……心臓病、糖尿病、がん、さらにはアルツハイマー病」とブラックバーンは結んでいる。
近年科学者は、ブラックバーンらが発見した、テロメアの短縮を防ぐテロメラーゼという酵素で実験をおこなっている。それはある意味で「時計を止める」ことができる。テロメラーゼに浸した皮膚細胞は、ヘイフリック限界をはるかに超えていくらでも分裂できるのだ。私はかつて、ジェロン社にいたマイケル・D・ウエスト博士にインタビューしたが、彼はテロメラーゼで実験をしており、皮膚細胞を実験で「不老死」させ、無限に生きられるようにすることができると主張している(これによって「不老死」という新たな言葉ができた)。彼の研究室にある皮膚細胞は50~60回どころか、何百回も分裂できる。
老化の遺伝的要因
老化が少なくとも一部は遺伝子の影響を受けているとしたら、老化を制御する遺伝子を特定することが重要となる。それにはいくつかのアプローチがある。
ひとつの有望なアプローチは、若者の遺伝子を分析し、老人の遺伝子と比較することだ。コンピュータで両者を比べれば、老化による遺伝子損傷の大半が生じている場所をすばやく特定できる。
たとえば車の老化は、主に酸化と摩擦によるダメージが最も激しいエンジンで起こる。細胞の「エンジン」はミトコンドリアであり、そこで糖を酸化してエネルギーを取り出す。
ミトコンドリアのDNAを丹念に調べると、エラーが確かにここに集中していることがわかる。
いつか科学者が、細胞自体の修復機能を用いてミトコンドリアでのエラーの蓄積を解消し、細胞の耐用年数を延ばしてくれることを期待したい。
ボストン大学のトマス・パールズは、一部の人が遺伝的に長寿の傾向にあるとの仮定のもとで100歳以上の人の遺伝子を解析し、老化を遅らせて、なぜか病気になりにくくもしているように見える281個の遺伝子マーカー(標識)を特定した。
老化のメカニズムは徐々に明らかにされており、多くの科学者は、この先数十年以内にそれを制御できるようになるかもしれない、と慎重に構えながらも楽観視している。彼らの研究は、老化がどうやら、われわれのDNAや細胞へのエラーの蓄積にほかならないらしいことを明らかにしている。ひょっとしたら、いつかはこうした損傷を防いだり、さらには元の状態に戻したりすることもできるかもしれない(じっさい、ハーヴァード大学の教授のなかには、自身の研究の結果を楽観視するあまり、ラボでおこなっている最先端の老化研究でひと儲けしようと会社を立ち上げた人までいる)。
したがって、われわれがどれだけ長く生きるかという点において、遺伝子が重要な役割を果たしている事実は疑う余地がない。すると課題は、環境の影響を切り離して、老化のプロセスは関与している遺伝子を突き止め、その遺伝子を改変することとなる。