じじぃの「科学・地球_566_テックジャイアントと地政学・グーグルの新戦略」

Google Pixel Watchの機能をやさしく・詳しく解説します!

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=U2PMWq6pHhg

グーグル Pixel Watch、Pixel tabletの発表


Pixel Watch、Pixel tabletの発表、Google I/O 2022で見えてきたGoogleが仕掛ける次の一手

2022.07.09 @DIME
房野氏:グーグルの開発者向けイベント「Google I/O 2022」が開催されました。スマートウォッチやタブレットといった端末も多数登場しましたね。
https://dime.jp/genre/1418611/

日経プレミアシリーズ テックジャイアントと地政学

【目次】
プロローグ シリコンバレーとの往来から見えてきた日本の近未来
Part1 ChatGPTが与える衝撃
Part2 テクノロジーが変える地政学

Part3 曲がり角のテックジャイアン

Part4 メタバース&Web3、先端技術ブームの実態
Part5 日本人が知らない世界の最新常識

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テックジャイアントと地政学

山本康正/著 日経プレミアシリーズ 2023年発行

Part3 曲がり角のテックジャイアント より

グーグル開発者向けイベント 披露した「攻め」「守り」

インターネットでら0面の画像を見つけて「近くで食べられる場所はないか」と探してみる場面は多いでしょう。これまでは画像に出た店舗の名前や住所をそれぞれ調べて、地図で店舗への行き方も見るという、3つのアクションが必要でした。しかし人工知能(AI)であるディーププラーニング技術の進化によって店舗の位置情報を瞬時に表示し、もはや3つのステップは不要になりそうです。

これは米グーグルが22年5月11日から12日に開催した開発者向けイベント「Google I/O」で発表した「マルチサーチ・ニア・ミー(Multisearch near me)というマルチ検索とユーザーの位置情報を組み合わせた新機能です。

このほかにも店舗に並ぶ商品棚にカメラを向けると商品の特徴をまとめて表示する「シーン探索(scene exploration)など、文字検索が中心だった検索サービスを画像情報などの活用によって「再定義」する新技術が数多く発表されました。

毎年年始に開催する世界最大級のテクノロジー見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)は、独自の大型技術イベントを持たない大企業の新製品や製品開発ビジョンを発表する場です。これに対して毎年5月から7月にかけては、日本でGAFAと呼ばれるグーグルや米フェイスブック、米アップルなどのビッグテック企業が開発者向けの年次総会を開き、新製品や将来の技術開発ビジョンを発表します。

グーグルが強化した「攻め」の検索サービス

今回のグーグルの発表は大きく分けて2つの特徴がありました。得意な技術分野を強化するということを「攻め」と表現するならば、他社に比べて足りない機能を加えて新たなサービスを打ち出す「守り」の発表も多かったのです。

攻めが目立つ分野は、前述のような検索サービスの機能強化です。対話型AIの最新言語モデルである「LaMDA 2(ラムダ2)」や、1つの機械学習モデルで質問への応答や文書作成、ジョークの解説といった様々なタスクを処理できる「Pathways Language Model(Palm、パーム)」など、AIを活用した自然言語処理の性能向上を明らかにしました。

また、映像の解析技術によって視線や頭の動きなどを感知して「OK、グーグル」などと、言わなくてもスマートスピーカーを起動させたり、長い文章を要約したり、ドローン(無人機)を飛ばして撮影したような鮮明な3次元映像を生成する(Immersive Stream)をGoogleマップに導入するなど、ほかのビッグテック企業が追いついていない技術開発の成果を次々発表しました。

1つ1つは地味な進化ともいえますが、少しでも利用者に利便性をもたらす技術開発の積み重ねが他社よりも抜き出たサービスを生み出すきっかけになります。米メタ(旧フェイスブック)が提唱するメタバースとは対照的に、リアルの世界の良さをテクノロジーでどう活用するかという意図も見え隠れします。

グーグルが「守り」に徹したアップル後追い

グーグルはスマートフォンに免許証を取り込める新しい「Google Waller(グーグルウォレット)」の機能なども発表しました。これは21年にアップルが発表した機能と同様です。

もうひとつの守りの技術は環境保護です。アップルは自社の製品をリサイクルした素材でつくることをわかりやすく表明しています。グーグルもGoogleマップを通じて最も燃費が良くて「脱炭素」につながるルート検索の表示を22年後半から欧州でも展開すると発表しています。

そして最大の守りは、ハードウェアの拡充とリアル店舗へのてこ入れです。自社製スマホの次世代機種である「Pixel 7」の発表はもちろん、新機種のタブレット端末開発や、ウェアラブル端末を手がける米フィットビット(Fitbit)を買収した成果である自社製スマートウォッチを発表しました。イヤホンでも全方位から音が聞こえるような「空間オーディオ」を実現する高機能イヤホンも発表しており、各機器の間でスムーズに切り替えて使うことができます。

ただ、これらはほとんどアップルの製品が既に実現しているものです。グーグルは後いではあるものの、グーグルにとっては他社製品にない機能を加えたり製品間で連携できるようにしたりして消費者の購買意欲を高めることには意味があります。

また昨今の世界情勢から、半導体などを含めたハードウェアの調達先を特定の国のメーカーに依存するリスクが増大しています。こうしたリスクを避ける意味でも、これまでのようにソフトは自社で手掛けながらハードは他社に製造を任せるという経営姿勢を転換し、ハードも自社でつくっていくという方針には合理性が見込めます。

同時に自社運営の店舗も拡大することによって、アップルストアと似たような構想も見えてきています。こうした店舗戦略はメタも米マイクロソフトも同様です。