Elon Musk reveals a humanoid robot at Tesla AI Day 2022
テスラが披露したヒト型ロボットの試作機 「Optimus」
テスラのロボット「Optimus」を侮るなかれ--実際に試作機を見た記者が解説
2022年10月11日 CNET Japan
Teslaが「Tesla AI Day 2022」で人型ロボット「Optimus」を披露するのを見て、同社の壮大な計画について疑念を抱くのは、極めて妥当なことだ。
走ったり、ジャンプしたり、宙返りなどのワクワクするような動きができるBoston Dynamicsの「Atlas」に比べると、よろよろと歩くOptimusは不格好だった。
また、自社の車に完全な自動運転技術を導入するTeslaの計画は予定通りに進んでいない。
https://japan.cnet.com/article/35194198/
日経プレミアシリーズ テックジャイアントと地政学
【目次】
プロローグ シリコンバレーとの往来から見えてきた日本の近未来
Part1 ChatGPTが与える衝撃
Part2 テクノロジーが変える地政学
Part3 曲がり角のテックジャイアント
Part4 メタバース&Web3、先端技術ブームの実態 より
アップルやアマゾン、テスラに見る最新技術の打ち出し方
米国の新年度である9月に米アップルや米アマゾン・ドット・コム、テスラは立て続けに最新デバイスとサービスを発表しました。感謝祭セールの22年11月にかけてテクノロジー企業各社の動きが活発化しており、3社ともに消費者のニーズをくんだ新たな製品やサービスの展開、幅広い業界からの開発者の獲得によって、さらなる経済圏の拡大を目指す意図が明確に浮かび上がっています。
生活のほぼすべてを網羅した経済圏を狙うアマゾン
ヘルスケア分野では、アマゾン初の睡眠管理に特化した製品ともいうべき「Halo Rise(ヘイローライズ)」が発表されました。睡眠管理機能を搭載した製品は多いですが、Halo Riseは各種センサーを使ってなるべく身体に負担がない形で睡眠中の呼吸や体の動きを検知し、睡眠の質を記録することを目的にしています。
一見するとベッドサイドの照明兼クロックですが、寝ている人の動きや室内の温度や湿度などをセンサーで感知して睡眠状態を分析・記録します。そのデータをもとに、よりよい睡眠環境を提供していくことが狙いです。
人工知能(AI)音声認識サービスのAlexa(アレクサ)と連携させることで音楽再生も可能で、医療ベンチャーの米ワン・メディカルを約39億ドルで買収したアマゾンが、今後も引き続きヘルスケア分野の製品やサービスを強化していくことがうかがえます。
このほかにも、防犯もかねた家庭用ロボットアシスタント「Astro(アストロ)」のアップデートをはじめ、アレクサを搭載したおなじみのスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズからネットワーク製品、セキュリティーカメラまで、各種デバイスが人工知能も活用して進化を遂げています。
ディスプレーつきの「Echo Show(エコーショー)」のうち、2022年4月に登場した大画面の「Echo Show 15」にいたっては動画を視聴する顧客が多いとのことで、スマートテレビ機能を追加するという斬新な対応を発表しています。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアで顧客に価値を届けることの有効な例でしょう。
また子供向けのスマートスピーカーは、子供向けのオーディオブックやゲームなどが一定期間無料で含まれていたり、壊れていたり、壊れても無料で交換したりするなど、サービスの設計としても配慮がなされています。
特に米ディズニーとの提携では、単にブランディングだけではなくリストバンドを活用したサービスがテーマパークと自宅の両方で使えるということで、スマートシティを思わせるような自宅を中心にした経済圏の拡大戦略がうかがえます。
アマゾンは今後ほぼすべてのホームデバイスがアレクサと互換性を持つことによって娯楽や情報の提供から、運動を促したり、睡眠の状況を記録したりする健康面のバッグアップまで、生活のほぼすべてを網羅して経済圏を強固にしていくことが考えられます。
創業者が開発者を引き寄せるテスラ
そして台風の目なのがテスラです。交差点も半自動で曲がることのできる自動運転技術の最新版ソフトウェアの配信先を一般ユーザーに広げるなか、ヒト型ロボット「オプティマス」のデモを行いました。
テスラは世界人口が今後減ることに備えて労働力を補おうという公益にも訴える狙いを込めていますが、自動運転に活用されている画像認識の技術をロボットに転用して質の高いソフトウェアを強化しています。実際に米カリフォルニアの自社工場でも使う予定で、価格も自社の電気自動車より安い2万ドル以下で大量生産を狙うと明かしました。
ただ、デモはまだ動きが鈍いものでした。これまでのホンダのアシモや、韓国の現代自動車グループに売却されたボストン・ダイナミックが人型ロボットの実用化に悩まされた壁を越えられるのかが注目です。
その鍵を握るのは開発者です。テクノロジー企業は新年度を迎えて優秀な研究者たちの争奪戦を繰り広げています。今回のテスラの発表イベントも、米スタンフォード大学すぐ近くの場所で多くのAI研究者を招待して行われました。壇上には自社の技術者を多数登場させ、AI開発のためデータ処理能力を向上させた独自のスーパーコンピューター「Dojo(道場)」を用意して開発者が報われやすい職場であるというメッセージを発しています。
時価総額が大きく創業者が経営を続けている数少ないテクノロジー企業のうちマーク・ザッカ―バーグ氏が率いるメタは、メタバースへの期待感が薄れつつあり、大幅な株価低迷に直面しています。こうした中で自動運転だけでなく宇宙ロケットなど様々な最前線の技術を打ち出して世界一の富豪でもあるイーロン・マスク氏は技術開発者にとっては魅力を感じるでしょう。
このような様々な動きがあるなかで、日本はどうあるべきでしょうか。特にAIにおいては、の本でのブームが去ったように見る方もいます。しかし海外ではこれまでの識別に使うAIから2017年の画期的な論文の発表を契機に生成に使うAIの開発が相次いでおり自然言語から画像を生成するAIソフト「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」や、多言語AI音声認識の「Whisper(ウィスパー)」など、驚きの技術が次々と登場して注目されています。
日本では表面的な「はやり言葉」が登場したり、新技術に取り組むと定期的に宣言を出したりすることが多く見られます。それよりも強化すべきなのは、多産多死であっても着実にビジネスを前進させようと世界に通じる新製品・新サービスを実際に打ち出していくことではないでしょうか。