じじぃの「科学・地球_535_なぜ宇宙は存在するのか・ダークエネルギーの正体」

Learning Physics_The Cosmological Principle

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=eTWI40c5Js0

The Cosmological Principle

An all-sky map of the locations of objects detected by radio telescopes

The Large Scale Structure of the Universe

Diagrams like the one above of the distribution of galaxies in the Universe seem to imply that the Universe isn't homogeneous and isotropic. In other words, the galaxies in one direction are not distributed in exactly the same way as the galaxies in another direction. However, if you look at the scale on the plot, the galaxies it contains only extend to a redshift of z < 0.2, which is equivalent to a distance of about 750 Mpc. When we study the most distant objects we can find at much larger distances from Earth, the structure appears to smooth out and become more homogeneous on the largest scales.
For example, the all-sky map of the locations of objects detected by radio telescopes shown below reveals a much more uniform appearance.
These objects are mostly expected to lie at higher redshifts than the ones in the pie slice diagram above, suggesting that when we consider the largest distance scales, the Universe appears to be homogeneous and isotropic. Thus, we currently find support for the Cosmological Principle in the distribution of galaxies in the Universe.
https://www.e-education.psu.edu/astro801/content/l10_p6.html

なぜ宇宙は存在するのか――はじめての現代宇宙論

【目次】

第1章 現在の宇宙

第2章 ビッグバン宇宙1――宇宙開闢約0.1秒後「以降」
第3章 ビッグバン宇宙2――宇宙開闢約0.1秒後「以前」
第4章 インフレーション理論
第5章 私たちの住むこの宇宙が、よくできすぎているのはなぜか
第6章 無数の異なる宇宙たち――「マルチバース

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『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論

野村泰紀/著 ブルーバックス 2022年発行

第1章 現在の宇宙 より

宇宙はなぜ加速膨張するのか

1998年、ソール・パールマター(カリフォルニア大学バークレー校およびローレンス・バークレー国立研究所)、ブライアン・シュミット(オーストラリア国立大学)、アダム・リース(ジョンズホプキンス大学および宇宙望遠鏡科学研究所)らに率いられた2つのチームが、衝撃的な観測結果を発表しました。宇宙は加速膨張している、つまり膨張のスピードが速まっているというのです。
これがなぜ衝撃的なのでしょうか?
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この宇宙が加速膨張しているという事実は、私たちの宇宙には何か物質以外のものが満ちていることを意味します。この「何か」は加速膨張の源、すなわち重力のもとで実質的に斥力として働くものでなければなりません。この未知のエネルギー源(重力はエネルギーに応答する)は、その正体を特定せず集合的にダークエネルギー(日本語では暗黒エネルギー)と呼ばれています。

これはよく混乱を生む点でもあるのですが、ここでの議論でもわかるようにダークマターダークエネルギーは、その名称が少し似ているにもかかわらずまったく別のものです。ダークマターは、標準模型に含まれる粒子ではないものの、物質であることには変わりありません。一方で、ダークエネルギーは物質ですらないのです。

ダークエネルギーの正体

このダークエネルギーの正体の最も有力な候補は、「真空のエネルギー」と呼ばれるものです。これは一体何でしょうか? それを理解するために、身の周りからものを取り去っていくことを考えてみましょう。机を取り去り、ソファーを取り去り、家を取り去り、そしてあなた自身も地球も太陽もダークマターも全てのものを取り去ったとしましょう。この状態が「真空」です。

一般相対性理論によれば、この真空の状態もエネルギーを持つことができるのです。言ってみれば、全てのものを取り去った後に空間自体が持つエネルギーです。この真空のエネルギーは、正の値も負の値も取ることができます。ゼロであることも可能です。そして、もし値が正であればそれは宇宙を膨らませるように働き、負であれば縮ませるように働くのです。このことを直感的に説明するのはなかなか困難です。ここでは、アインシュタイン方程式と呼ばれる一般相対性理論の式を解くと、そのような結果が得られると理解しておきましょう。

そういうわけで、もし膨張宇宙が正の真空エネルギーを持ち、かつその影響を物質による引力の効果より大きければ、宇宙の膨張は加速していくことになります。反対に、もし真空エネルギーが負であれば、宇宙の膨張は徐々に減速していき、遂には収縮に転じることになります。そして、最終的には宇宙は一点に向けて潰れていきます。より正確には、あらゆる2点間の距離がゼロに近づいていくことになります。

この考えに立てば、パールマター、シュミット、リースらの観測は、現在の宇宙の真空のエネルギーが正であり、かつその効果が物質同士の引力を凌駕(りょうが)しているのを見つけたことになるのです。実際、膨張がどの程度加速しているかを測ることにより、真空のエネルギーの大きさ――より正確には体積あたりの真空のエネルギー、つまり真空のエネルギー密度――を求めることができます。
そしてそれによれば、真空のエネルギー密度は約6.0x10-30g/cm3であり、それは(図1-1 【宇宙の一様性とスケール】で見たときの)物質の平均エネルギー密度2.7x10-30g/cm3より2倍ほど大きいということになります。

真空のエネルギー密度という考えの良いところは、ダークエネルギーの正体として得体の知れない変なものを導入しなくてもよいというところです。真空のエネルギーは一般相対性理論に元から存在するものであり、その宇宙膨張への影響もアインシュタイン方程式を解くことにより正確に計算できます。

厳密に言えば、真空のエネルギーの効果はアインシュタインが最初に書いた式では考慮されていませんでしたが、現代的な観点から言えば真空のエネルギーは一般相対性理論の一部です。ただし第5章で触れますが、測られた真空のエネルギー密度の大きさ(物質のエネルギー密度の約2倍)は、新たな理論的謎を生むことになります。

謎だらけの宇宙の組成

現在の宇宙は、エネルギー密度で見た場合、約69%が加速膨張を引き起こすダークエネルギーで占められており、物質は残りの約31%にすぎません。

その物質も、約6分の5(エネルギー密度全体の約26%)はダークマターと呼ばれる正体不明の物質であり、私たちの知っている標準模型の粒子は全エネルギー密度の約5%を占めるにすぎません。さらには、これらの粒子も星や銀河として存在しているのはおよそ0.4%でしかなく、残りはガスの形で存在するか、宇宙を自由に飛びまわるニュートリノです。
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読者の中には、宇宙項という単語を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは、ここでいう真空のエネルギーと同じものです。文脈や歴史的経緯によってこの2つを区別して使う著者もいますが、物理的には同じものなので同一視してもらって構いません。

一方でダークエネルギーというのは、現在の宇宙の加速膨張を引き起こす要因になり得るものの総称です。真空のエネルギーはその具体的な、そして最も有望な候補です。本書ではこれ以降、科学界の本流に従いダークエネルギーは真空のエネルギー(か、それと同様なもの)と仮定して話を進めますが、他の可能性も完全に排除されたわけではないことを頭に入れておいてもよいかもしれません。