じじぃの「科学・地球_190_宇宙の終わりとは・熱的死・加速膨張する宇宙」

The Big Bang: The Shape of the Universe

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=zhfT77KhhTw

Geometry of the Universe

What shape is the Universe, really?

The Universe is flat, according to modern research. But what does that mean?
https://www.zmescience.com/space/astrophysics-space/shape-universe-really/

宇宙定数

天文学辞典 より
一般相対性理論を創り出したアインシュタイン(A. Einstein)によって、静止宇宙モデルを構成するために考えられた時空の座標系に依存しない定数。ギリシャ文字Λがよく用いられる。
アインシュタインが最初に提案した一相対性理論の基本方程式であるアインシュタイン方程式に基づいて一様で等方的な宇宙モデルを表す解をつくってみると、その解は必ず膨張、あるいは収縮してしまう。宇宙は無限の過去から無限の未来まで変わらず存在すると考えていたアインシュタインは、1917 年、自分の方程式に反発力を表す項を付け加えて時間的に変化しない有限な体積をもつ宇宙モデル(アインシュタインの静止宇宙)をつくった。この項を宇宙項と呼び、この項に現れる座標系に依存しないスカラー量を宇宙定数と呼ぶ。なおアインシュタインの静的宇宙は安定ではなくわずかな揺らぎで膨張、あるいは収縮してしまう不安定な存在である。
宇宙項は空間に付属するエネルギー密度ともみなすことができ、しばしば真空のエネルギーとも呼ばれる。数学的にはこの真空のエネルギーは正でも負でもよく、正の真空エネルギーだけを持つ宇宙をド・ジッター宇宙、負の真空エネルギーを持った宇宙を反ド・ジッター時空と呼ぶ。

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宇宙の終わりに何が起こるのか

ケイティ・マック (著)
この宇宙は必ず終わる。―いつ、どうやって!?「万物が究極的に破壊される」瞬間を描く5つのシナリオ。19ヵ国で翻訳!話題の最新宇宙論に待望の邦訳登場!
第1章 宇宙について大まかに
第2章 ビッグバンから現在まで
第3章 ビッグクランチ―終末シナリオその1 急激な収縮を起こし、つぶれて終わる
第4章 熱的死―終末シナリオその2 膨張の末に、あらゆる活動が停止する
第5章 ビッグリップ―終末シナリオその3 ファントムエネルギーによって急膨張し、ズタズタに引き裂かれる
第6章 真空崩壊―終末シナリオその4 「真空の泡」に包まれて完全消滅する突然死
第7章 ビッグバウンス―終末シナリオその5 「特異点」で跳ね返り、収縮と膨張を何度も繰り返す
第8 未来の未来
第9章 エピローグ

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『宇宙の終わりに何が起こるのか』

ケイティ・マック/著、吉田三知世/訳 講談社 2021年発行

第4章 熱的死―終末シナリオその2 膨張の末に、あらゆる活動が停止する より

宇宙が取りうる「3つのかたち」

ビッグクランチに終わる運命の宇宙は、「閉じた宇宙」とよばれている。なぜなら、この宇宙の中では、2本の平行な巨大レーザービームがやがては交わるからだ。地球の経線と同じように。閉じた宇宙の場合は、あまりに多くの物質が内部に存在するため、宇宙全体が内向きに湾曲している。
一方、均衡が完璧に撮れている宇宙は「平坦な宇宙」とよばれる。平坦な紙の上に引いた2本の平行線がいつまでも平行なままであるのと同様に、この宇宙の中では、平行なレーザービームは永遠に平行なままだ。
3つ目の、膨張が重力よりも優勢な宇宙は「開いた宇宙」とよばれ、その内部では、もうおわかりだと思うが、2本のレーザービームは互いにどんどん離れていく。この宇宙を2次元の面で比喩的に表すと、鞍(くら)型である。鞍の上に平行線が引いてみると(鞍が手近になれば、1枚のプリングルズ[訳注:鞍型に成型されたポテトチップ]でもいい)、伸ばせば伸ばすほど2本の線は離れていくだろう。
これら3種のかたちが表しているのは、宇宙の「曲率」である。曲率は、内部に存在する物質がエネルギーによって、宇宙が全体としてどれくらいゆがめられているか(あるいは、ゆがめられていないか)を示す数値だ。
この3つのありうる宇宙のかたちに共通することの1つめは、どれも物理学として合理的だということ、つまり、アインシュタインの重力方程式と矛盾しないということである。2つめは、どのかたちの宇宙も、現在の膨張は減速しているということだ。
20世紀の終盤、超新星を使って距離が測定された当時は、宇宙の膨張を加速させる理に適った物理的なメカニズムは存在しなかった。宇宙の膨張が加速しているなんて、ボールを空に投げ上げると、少し減速したあと、突然どういうわけか、猛スピードで宇宙へ飛んで行ってしまったというぐらい、奇妙なことだと思われた。まさにそれくらい奇妙なことで、しかもそれが、宇宙全体にわたって起こっているのだった。
観測結果がチェックされ、再チェックもおこなわれたが、物理学者たちは同じ結論を出さざるを得なかった。緊張は、加速していた。
切羽詰まった彼らは、窮余の一策に頼るしかなかった。実際、あまりに切羽詰まっていたために、天文学者たちは、宇宙全体に広がるエネルギー場が存在するという説を持ち出した。そのエネルギー場のおかげで、何もない真空の空間そのものが、あらゆる方向に外向きに広がろうとする性質をそもそも備えているというのだ。時空にそんな性質があるとは、それまで観測されていなかったが、それがほんとうなら、決して枯渇することのない永遠に存在するエネルギー源を使って、宇宙はおのずと永遠に膨張することになる。
真空のエネルギー源、すなわち、「宇宙定数」のお出ましである。

ダークエネルギーの登場

この「宇宙定数問題」の解決策として提案されたものの1つが、宇宙定数は私たちの観測可能な宇宙では小さいが、ずっと遠方ではさまざまに違った値である可能性があり、私たちがどこにいるかは偶然による、という仮説である(あるいは、宇宙定数の値が大幅に違っていたら、たとえば宇宙の膨張が速すぎて銀河が形成されなくなるなど、なんらかのかたちで生物と知性の進化に適さないのだとしたら、偶然ではなく必然による)。
もう1つ、それは宇宙定数などではなく、宇宙に存在するなんらかの新しい「宇宙定数もどきのエネルギー場」だという可能性もある。これは、時間とともに変化するのかもしれないエネルギー場で、その場合、現在の値へと進化したのは、何か別の理由があるという可能性が出てくる。
それがほんとうに宇宙定数かどうかはわからないので、宇宙の膨張を加速させられる仮説上の現象は、すべてひっくるめて「ダークエネルギー」と総称する。少し専門用語を使って、どんなダークエネルギーが検討されているかを説明すると、進化する(すなわち、定常的でない)ダークエネルギーは「クインテッセンス」とよばれることが多い。この名称は、摩訶不思議な得体の知れない「第5の元素」という、古代ギリシャに生まれ、中世の哲学でさかんに議論されたものにちなむ。
その定義は、今日にいたっても、正確さの点ではあまり向上していない。クインテッセンス仮説の長所は、時間が始まったときに起こった宇宙のインフレーションとかなり共通性のある理論をもたらしうるという点だ。
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いずれにせよ、現在の観測に基づいていえば、ダークエネルギーは宇宙定数である可能性がかなり高そうだ。宇宙定数は、時空がもつ不変の性質ではあるのだが、最近になって(すなわち、ここ数十億年のあいだに)ようやく宇宙の進化の支配的な要素となった。初期には、宇宙はいまよりはるかに小さく、宇宙定数(空っぽの空間がもつ性質)が活躍するための十分な空間がなかったので、当時の膨張は減速していた。

だが50億年ほど前通常の宇宙膨張によって物質が非常にまばらになったため、空間が本来もっている「伸展しやすさ」が現れはじめたのである。

いまでは、きわめて遠方の、すなわち宇宙膨張が加速する前に起こった、超新星爆発の運動を観測することができる。したがって、宇宙の膨張が減速していた時代がいつごろだったかを判別できるし、さらに、減速から加速へと転じた時期も、かなり正確に特定できるのである。
ダークエネルギーが何か新しいダイナミックな場である可能性はまだ残されているが、これまで得られているデータには、宇宙定数がぴったりあてはまっている。
このシナリオを未来にく買ってたどっていくと、その結末は実際のところいささか皮肉なものである。なぜなら、アインシュタインが宇宙を救うために使った項が、その破滅をもたらすのだから──。

エントロピーと時間の矢

宇宙定数に支配された宇宙は、暗闇と空虚の状態へと否応なしに進んでいく宇宙である。膨張が加速するにつれて、何も存在しない空っぽの空間が増大し、それによってダークエネルギーも増加して、膨張がいっそう進むという循環を無限に繰り返す。
やがて恒星が燃え尽き、粒子が崩壊し、すべてのブラックホールが蒸発すると、宇宙は基本的には、宇宙定数だけが存在して指数関数敵に膨張をつづける空っぽの空間になってしまう。これを「ド・ジッター宇宙」(訳注:オランダの数理物理学者で、天文学者でもあったウィレム・ド・ジッターが解いたアインシュタイン方程式の解のうちの1つで、宇宙に物質が含まれない真空宇宙となる)とよぶが、それはインフレーション期の極初期宇宙が経たと考えられているのを同様に進化する。ただし、インフレーションはやがて終ったのだが、もしもダークエネルギーがほんとうに宇宙定数なら、終末期の宇宙の膨張は停止することなく、宇宙は永遠に指数関数的に膨張しつづけるだろう。
では、このようにいつまでも膨張する宇宙は、真の意味で終焉するのだろうか?これに答えるためには、エントロピーと時間の矢について、もっと深く掘り下げたところまで理解しなければならない。
恒星が燃え尽きたり、粒子が崩壊したり、あるいはブラックホールが蒸発したりするとき、いくらかの物質が自由な放射に変換され、純粋に無秩序なエネルギーである熱のかたちで宇宙に広がる。何かを熱エネルギーに変えることは、そのエントロピーを最大にまで上げることである。なぜなら、熱になればもはやエネルギーの流れにいっさい制約はなくなるからだ。宇宙が一段と空虚になると、この放射は薄まるので、総エントロピーは温度とともに低下するだろうと思われるかもしれない。だが、そうはならないのである。
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私には、次の事実をもう一度述べるしかない。時間の矢と熱力学第2法則は宇宙のはたらきにとって絶対に不可欠なので、エントロピーがもはや上昇しないなら、何も起こりえない。どんな組織構造も存在できず、どんな進化も、どんな種類の意味のあるプロセスも起こりえない。
それがなんであれ、実際に起こっていることにとって絶対に必要なのは、エネルギーがある場所から別の場所へと移動することである。エントロピーが上昇することができないなら、エネルギーはある場所から別の場所へと流れることはできない。流れようとしても、瞬時に元の場所へと逆戻りし、運よく起こるかに見えたものはすべて、消し去られれしまうだろう。
エネルギーの勾配は生命の礎だが、それはまた、他のどんな種類の仕事のための、どんな構造や機械にとっても基盤をなしている。エネルギーの勾配は、1つの巨大な(しかし冷たい)風呂桶になってしまった宇宙の中には存在できない。そこでは、熱が使いものにならない。すなわち、熱は死を意味するのである。

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