じじぃの「科学・地球_191_宇宙の終わりとは・ビッグリップ・ファントムエネルギー」

Phantom Energy and The Total Death of The Universe

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=PdXKTUaLaeI

What is dark energy?

07/07/15 symmetry magazine
●Filling the void
Dark energy is an additional “thing” in the universe besides regular and dark matter. Two leading theories describe what it might be: a cosmological constant or something called quintessence.
This model has subsets that differently predict how exactly dark energy changes. One example is called phantom dark energy, where not only is expansion accelerating, but the acceleration is also increasing over time. This leads to a scenario called the Big Rip, where expansion becomes infinitely fast, tearing galaxies, atoms and the fabric of space-time itself apart.
https://www.symmetrymagazine.org/article/june-2015/what-is-dark-energy

ファントムエネルギー

ウィキペディアWikipedia) より
ファントムエネルギーは、宇宙の膨張の加速を宇宙定数よりも強力なダークエネルギーの仮想上の一形式(ファントムエネルギーは ω< -1 の状態方程式を満足する)。
存在するとすれば、宇宙の膨張を速やかに加速し、ビッグリップとして知られる宇宙進化シナリオの要因となる。これが正しいとすれば、宇宙の拡大は有限な時間内に無限程度に達し、際限なく加速する拡大の要因となる。この加速は光速を凌駕し(これは宇宙そのものの拡大を意味し、内部を移動する粒子のことではない)、観測可能な宇宙の縮小の要因となる。それは遠い星から放出された光や情報は拡大に”追い付く”ことができないからである。
観測可能な宇宙の制約により、物体は基本的な力を介して相互に干渉できなくなる。そして最後には宇宙の拡大速度の増大によって、たとえ原子間であっても相互作用を及ぼしあうことができなくなり、宇宙に存在する全ての物質は引き裂かれてしまう。これはビッグリップの特徴としての宇宙の終焉である。
2007年に、サイクリック宇宙論への説明としてファントムエネルギーが検討された。

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宇宙の終わりに何が起こるのか

ケイティ・マック (著)
この宇宙は必ず終わる。―いつ、どうやって!?「万物が究極的に破壊される」瞬間を描く5つのシナリオ。19ヵ国で翻訳!話題の最新宇宙論に待望の邦訳登場!
第1章 宇宙について大まかに
第2章 ビッグバンから現在まで
第3章 ビッグクランチ―終末シナリオその1 急激な収縮を起こし、つぶれて終わる
第4章 熱的死―終末シナリオその2 膨張の末に、あらゆる活動が停止する
第5章 ビッグリップ―終末シナリオその3 ファントムエネルギーによって急膨張し、ズタズタに引き裂かれる
第6章 真空崩壊―終末シナリオその4 「真空の泡」に包まれて完全消滅する突然死
第7章 ビッグバウンス―終末シナリオその5 「特異点」で跳ね返り、収縮と膨張を何度も繰り返す
第8 未来の未来
第9章 エピローグ

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『宇宙の終わりに何が起こるのか』

ケイティ・マック/著、吉田三知世/訳 講談社 2021年発行

第5章 ビッグリップ―終末シナリオその3 ファントムエネルギーによって急膨張し、ズタズタに引き裂かれる より

「孤立化させる力」としての宇宙定数

ダークエネルギーは、宇宙を膨張させる宇宙定数だと見なされることが多い。おのずと膨張していく傾向を宇宙に与え、宇宙の膨張を加速させているのだと、と巨視的な尺度においては、これはよい説明だ。
しかし、銀河や恒星系の内部、あるいは、一般に組織化された物質のごく近傍においては、宇宙定数はなんの影響を及ぼさない。宇宙定数はむしろ、「孤立化させる力」と考えたほうが正しいだろう──2つの銀河が、すでに遠く離れているなら、それらをいっそう遠く離れさせ、個々の銀河や銀河群、あるいは銀河団を、時が経過するにつれていっそう孤立させるのが宇宙定数の仕事だ。宇宙定数は、どんな意味においてであれ、すでにまとまった構造をもっているものをバラバラにすることはできない。したがって、重力がすでに結びつけたものは、宇宙定数に引き離せないのだ。
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そうとわかれば安心だ。あなたがたまたま宇宙に存在する物質の集合体であって、しかも、重力で結びついた安定な銀河を形成したいと思っていたとすると、何かをつくるのに十分な量の物質をいったん集めてしまえば、ダークエネルギーによってその勢力が水の泡になったりすることはないと、安心していい。
ただし、ダークエネルギーが宇宙定数よりももっと強力なものでないかぎりにおいて、だが。前章で論じたように、宇宙定数は、ダークエネルギーの正体である可能性をもつものの一候補にすぎない。ダークエネルギーについてほんとうにわかっているのは、それが宇宙の膨張を加速させるということだけだ。あるいは、より正確にいえば、負の圧力をもっていることだけである。
負の圧力とは奇妙な概念だ。なにしろ、圧力といえばふつう、何か「外に向かって押すもの」を思い浮かべるのだから。しかし、アインシュタイン一般相対性理論の立場から宇宙を考えると、圧力は、質量や放射と同じように、また別種のエネルギーにすぎない。したがってそれは、先にも登場した「エネルギーは質量は等価である」という関係から、重力による引力をもっているわけだ。そして一般相対性理論では、重力による引力は「空間のゆがみ」の結果にすぎない。

果たしてダークエネルギーは宇宙定数か

では、負の圧力をもつものにとって、これは何を意味するのだろう。
ある奇妙な物質の圧力を負になりうるとすると、その物質は、少なくとも時空の湾曲への影響に関しては、自身の質量を事実上、打ち消すことができるのである。宇宙定数のかたちのダークエネルギーについて、その圧力と密度を適切な単位で書き出すと、圧力は密度に負号をつけたものにぴったりと一致する。
ある物質の密度と圧力の関係は通常、「状態方程式パラメータ」とよばれる。ωと表記されるものを使って表す。このωは、圧力をエネルギー密度で割ったものに等しい。その際に用いる単位は、圧力とエネルギー密度の比較が意味をなすようなものを選ぶ。
ここで私たちが興味をもっているのは、ダークエネルギー状態方程式であり、十分長い時間を経過すると、それは宇宙全体の状態方程式になるはずである。というのも、他のすべてが希薄になっていく膨張宇宙の中では、ダークエネルギーはその重要性をどんどん増していくからだ。
測定値が厳密にω=-1なら、圧力と密度は絶対値が同じで符号が逆となり、ダークエネルギーは宇宙定数だということになる。宇宙定数のエネルギー密度はつねに正なので、それは一見、物質のようにふるまって重力を高め、宇宙の膨張するはずだ、と思えてしまう。しかし、負の圧力は、方程式の中でより大きな重みづけがされるので(訳注:一般相対性理論による宇宙膨張の式では、密度の係数が1であるのに対し、圧力の係数は3となっている)、宇宙定数は結局、宇宙の膨張の加速にしか貢献しないのだ。
少なくとも、その貢献は予測可能なかたちである。ω=-1の宇宙定数の場合、総エネルギー密度は、宇宙がつづけるあいだはつねに厳密に一定であり、増加も減少もしない。それ以外のω値をもつダークエネルギーの場合は、これはもはやあてはまらない。したがってここでは、ダークエネルギーとは、ほんとうのところ何なのかをはっきりさせることが肝要だ。
ダークエネルギーが初めて発見された直後の数年のうちに、何かが宇宙の膨張を加速させており、したがって、負の圧力をもつ何かが宇宙に存在していなければならないということが明らかになった。ωが-1/3 以下の値であるものはなんでも、負の圧力と加速膨張をもたらすこともわかった。
しかし、ωの値がわかれば、ダークエネルギーは負の宇宙定数(つねにω=-1)なのか、あるいは、なんらかの動的なダークエネルギーで、時間が経過するにつれて宇宙に及ぼす影響が変化するようなものなのかがはっきりする。そのため、天文学者たちはωの値を正確に特定する方法を探しにかかった。もしもダークエネルギーが宇宙定数ではないことが明らかになったなら、私たちは宇宙でははたらいている新しい種類の物理学を発見するのみならず、それは何か、アインシュタインが予測していなかったものだというボーナスまで手にすることになるだろう(彼にしたって、何かは間違っているはずだ)。

隘路を打開した「シンプルな問いかけ」

理論物理学者のロバート・コールドウェルとその同僚たちが投げかけたのは、こんな単純な疑問だった。
「もしもωの値が-1より小さかったらどうだろう? たとえば、-1.5とか-2だったら?」
そのときまでは、そのような可能性はあまりに突拍子もないので考慮に値しないと考えられていた。論文に記載されている、データに基づいて特定したωの許される領域を示したグラフは、-1でぷっつりと終っているのが通例だった。グラフの軸は-1から0、あるいは、-1から0.5までと、大きい側には多少の違いが見られたが、小さい側の-1は堅牢な壁のように固定されていた。ちょうど人間の身長のグラフで、0が絶対値な下端の値となるように。
しかし、コールドウェルがこの問題について検討した際、ωの観測値はすべて-1、もしくは、それにきわめて近い値を指し示していた。だとすれば、誰かがチェックすれば、-1よりも小さな値を許すようなデータがあるかもしれないということではないか。このように-1より小さい仮説上のダークエネルギーを、コールドウェルは「ファントムエネルギー(ファントムとは[幽霊]を意味する)」と名付けた。
だがこれは、先ほど述べた、誰も破りたくない「物理学の重要な原理」とは真っ向から矛盾する──具体的には、「優勢エネルギー条件」と矛盾するのだ。
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ここで少し立ち止まって、申し上げておきたいことがある。この「ファントムエネルギー:ω< -1のダークエネルギーは宇宙の終焉をもたらす」と題された論文は、物理学のなかで、私が大好きな論文の1つなのだ。現在の見解に、ごくわずかにしか見えない変更を加え、1つのパラメータをほんの少しずらしただけなのに、それが「すべての宇宙を破壊する」ような事態をもたらすと気づく、などといったことはめったにない。
それだけではない。この論文は、宇宙がいかに破壊されるか、そしてそれはいつのことで、そのとき、すべてが滅びゆくときにどのような様相を呈するかを、厳密に計算する方法も提供しているのだ。

「いつでも起こりうる」危機

両陣営(ハッブル定数測定値をめぐる解釈)による「相手方が何か間違ったのだ」という憶測は、まだ完全に消えていないものの、両者とともに自分たちの手法を改良しており、知られている測定バイアスの源をすべて排除しているのもかかわらず、ますます精度を上げていくハッブル定数の測定値が依然として一致しないという事実によって、いっそうまずい状況になっている。
最終的に何がこの問題を解決するのかは、現時点ではよくわからない。データの系統的な誤差、あるいは測定そのものに関するなんらかの問題化もしれない。見かけ上はそんなことはなさそうに思えるが、統計的な偶然かもしれない。
最も魅力的な説明は、ごくふつうの宇宙定数ではなく、もっと禍々(まがまが)しい何か──ビッグリップにつながりそうな──、すなわちダークエネルギーを使ったのもだ。2つの測定方法の不一致の解消に向かう、理に適った道を進みそうな仮説が1つある。ファントムエネルギーが徐々に強まっているという仮説だ。
ここはまだ、パニックになるべき段階ではないと思う。先に触れたように、データそのものがそれほどはっきりしていない。状態方程式パラメータであるωの測定の大半で、-1と完全に一貫性のある値が得られているし、-1より小さな値のほうが、ほんの少し可能性が高いと示唆されることが確かにあるにしても、それは統計的に有意なほどの差ではないからだ。
ハッブル定数の不一致に関しては、すべての測定が正しかったとしても、宇宙の終焉につながらない説明──ダークマターの一風変わった新しいモデルや、初期宇宙の条件として従来と違うものを仮定するなど──が、非常に有力な候補として登場している。じつのところ、ダークエネルギーをいろいろ調整しても問題を完全に解決できないようなら、解決策は別のところにあると考えるのは理不尽ではない。そして、最近の宇宙史においてダークエネルギーの影響が急上昇しており、ファントムエネルギーのようなものを示唆しているとしても、ビッグリップが起こるまでには時間はたっぷり残されている。