じじぃの「科学夜話・第5講・奇跡的な宇宙・宇宙定数・ダークエネルギーとは?宇宙の雑学」

【気づいたんや】宇宙が存在し生命が偶然生まれるとは都合良すぎでは?【ゆっくり解説】

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https://www.youtube.com/watch?v=KWHhbZBsXhw

ダークエネルギーの量は変化していた?


ダークエネルギーの量は変化していた? 膨張する宇宙の謎に一石投じる発見か NASA

2019年2月1日 ライブドアニュース
米航空宇宙局(NASA)は1月30日、運営するチャンドラX線観測衛星から取得したデータを分析し、宇宙の膨張を加速させる仮想上の「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」が時間とともに変化していることを明らかにした。
今回の発見が膨張する宇宙の謎に一石を投じることが期待される。
https://news.livedoor.com/article/detail/15960858/

『宇宙とは何か』

松原隆彦/著 SB新書 2024年発行

第5講 微調整問題と人間原理 より

奇跡的な宇宙

我々の宇宙だけでなく、たくさんの宇宙がある、それも無数にあるという「マルチバース論」が出てくるのには、必然性があると言える背景があります。

単純に言うと、この宇宙があまりにも奇跡的な存在だということです。生命や人間が存在する宇宙は、ものすごく大変な条件を重ねなければできません。

それなのに、現実にこの宇宙が存在するのはなぜかと考えたとき、マルチバースは1つの解決策になります。無数に宇宙があれば、その中に1つくらい奇跡の宇宙があってもおかしくありません。ある意味では、この奇跡的な宇宙への疑問を、安易に解決する方法がマルチバースなのです。

ではどのくらい奇跡的なんでしょうか。今回はその話をします。

測定してはじめて決まる「パラメータ」

自然界には、測定によってはじめて決まる定数がいくつもあります。物理の法則には、こうした物理定数が必ず含まれています。

たとえば、電気力は電子の電荷がどのくらいかによって決まります。電荷とは粒子や物体が帯びている電気の量のことです。電気量を測ると、最小単位の整数倍になっており、その最小単位を電気素量と言います。電気素量はどこで測っても同じです。一定の値が見つかるわけですが、なぜその値なのかという理由は見つかりません。理論上は、その値である必然性がなく、どんな値であってもいいはずです。

重力定数もそうです。
ニュートンが見つけた「万有引力の法則」は、万有引力は2つの物体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例するというものです。この関係における比例定数は重力定数と呼ばれます。重力定数は、測定によって決まったものであって、この値でなければならない理由がありません。
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どうも自然界のパラメータは、この宇宙に生命が誕生するように微調整されているふうに感じます。なぜか我々にとって都合のいい値になっているんです。まるで神様がパラメータを自由に変えることのできる機械を持っていて、生命を誕生させようと細かく調整しているかのようです。パラメータの値には必然性が見つからないため、いまの物理学では説明ができないのです。

これを「宇宙の微調整問題」と呼びます。
宇宙には、測定してはじめてわあるパラメータが、現状見つかっているもので40個あります。そのすべてが、この宇宙を成り立たせるのに微妙な値をなっています。
いくつかのパラメータを見ていきましょう。

トリプル・アルファ反応

生命にとって、もっとも重要な元素の1つが炭素です。炭素が無ければ、今の生命は確実に存在していません。

炭素原子核は、星の中でヘリウムヘリウム原子核が3つ集まることで作られます。
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トリプル・アルファ反応によって炭素が作られることを見出したのはイギリスの天文学者フレッド・ホイルなのですが、この反応を起こすためには、炭素がある特定の値のエネルギー順位(具体的には7654.2keV)を持たないと成り立たないことがわかりました。

人間原理の成功例

ホイルの考え方は典型的な「人間原理」です。

前回も紹介した人間原理です。あらためて、人間原理とは、「この宇宙が人間に適しているのは、そうでない人間が宇宙を観測できないから」という論理を使って宇宙や物理を説明する考え方です。要するに、「人間が存在するんだから、宇宙はこうなっていなさい」ということです。

人間原理には大きく分けて「弱い人間原理」と「強い人間原理」があります。

「弱い人間原理」は、現在の宇宙の年齢や太陽系の位置関係などは、偶然に決まったものではなく、それを観測している人間がいるという前提のもとに定まっているという考え方です。
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対して「強い人間原理」は、宇宙の法則や定数は人間が生まれるようなものでなくてはならないという考え方です。人間の存在を理由に「だからこうなっている」と説明するので、順番が逆になっているんです。

ホイルの予言(炭素の元素合成過程を説明するために理論的に存在を予言した)は「強い人間原理」の典型例です。それまで、この論理で予言をした人はいなかったので、みんな半信半疑でした。というより疑っていました。ところが、実験してみたら本当にそうだったので驚いたんです。

俄然「強い人間原理」に期待が持てそうな感じがしますが、そうでもありませんでした。同じ考え方でうまくいった例は他にないのです。ホイルの予言が唯一の成功例です。

とてつもない精度で調整されている宇宙定数

いろいろとお話ししてきましたが、最大級の微調整問題、つまり、すごい精度で調整されているとしか思えないのが、「宇宙定数」と呼ばれるパラメータです。

宇宙定数とは、もともとアインシュタイン一般相対性理論を最初に応用したときに導入した定数です。

アインシュタインは、宇宙は、膨張も収縮もしない、静的なものだと想定していました。
ただ、アインシュタインが提案した一般相対性理論の基本方程式をそのまま宇宙に当てはめても、静的な宇宙になってくれません。放っておけば自分自身の重力で自然い収縮していってしまうからです。そこで1つの項を付け加えてつじつまを合わせたんです。それが「宇宙項」と呼ばれるものです。宇宙定数は、この宇宙項にかかっている係数のことです。

宇宙定数は正の値を持つと、宇宙空間が膨脹することになります。それに対して、物質は宇宙空間を収縮させる働きをします。2つの力が釣り合って、宇宙は静的な状態に保たれるとアインシュタインは考えていました。

しかし、現実の宇宙はアインシュタインが考えていたような静的なものではありませんでした。すでにみなさんも御存じの通り、宇宙は膨脹していることがわかって、アインシュタインは宇宙項を捨ててしまいました。のちに「わが生涯で最大の過ち」と語ったとすら言われています。

アインシュタインは捨ててしまったのですが、宇宙項は理論的には存在可能です。膨脹する宇宙の中に宇宙項があっても矛盾はありません。いや、やはり宇宙項があったほうがいいのではないか。そういう議論が長いことあったんです。そして宇宙が加速膨脹していることがわかると、やっぱり宇宙項、宇宙定数がないと困る、という流れになってきました。宇宙の膨脹のあまりに急激な加速は、宇宙項がないと説明できない、ということです。

宇宙の膨脹は加速している……そう、第2講でお話ししたダークエネルギーです。
ダークエネルギーは、宇宙全体に広がっている未知のエネルギーのことでしたね。

観測はできていないのですが、宇宙全体にごく薄いエネルギーが満ちあふれていることが必要です。宇宙の膨脹が加速していることは観測事実です。膨脹が加速するためには、宇宙に薄いエネルギーがなくてはなりません。そうでなければ宇宙の膨張は遅くなる一方です。

ダークエネルギーが存在すると仮定して計算すると、観測とピッタリ合うのです。
そんな取ってつけたようなものは気に食わないと言っていた人たちも、結局これ以外に加速膨脹を説明できないので、受け入れざるをえない状況です。

しかし、ダークエネルギーとはいったい何なのか。
ダークエネルギーを理論的に解明することは、現代の物理学の大きな課題の1つです。
宇宙定数はダークエネルギーの有力候補と言えます。ただ、その値があまりにも小さいのがどうにも不自然なんです。
観測から見積もられた宇宙定数の値は1.109 X 10-34m-2という小ささです。

宇宙定数のエネルギーは、真空の空間がもっているエネルギーだと解釈できるのですが、量子論から予言される真空のエネルギーは、宇宙定数のエネルギー量より123桁大きくなるんです。
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この宇宙定数は、非常に問題視されています。想像を絶する微調整が働いている宇宙定数を方程式に勝手に付け加えて、それで宇宙の性質を説明したことになるのでしょうか。

本当は、もっと深い理由とメカニズムがあるのかもしれません。宇宙項を入れて計算することは簡単なのですが、その物理的根拠ははっきりしません。ダークエネルギーの正体も謎に包まれたままです。

この微調整の問題を本当の意味で解決することが、ダークエネルギーの正体を暴くことにつながるでしょう。

なお、宇宙定数の微調整問題をマルチバースによって解決しようとするなら、少なくとも10の123乗個以上の宇宙が必要です。同時に他の微調整問題も解決するためには、もっと多くの宇宙が必要になるでしょう。

もちろん微調整問題の解決方はマルチバースだけというわけではありません。我々がまだ知らない仕組みがこれから発見されるかもしれませんね。

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じじぃの日記。

松原隆彦著『宇宙とは何か』という本に、「とてつもない精度で調整されている宇宙定数」というのがあった。

約20年前、超新星爆発を起こした天体までの距離を計測する際に、宇宙の膨張が加速することが判明した。

この宇宙の加速膨張を説明するために、宇宙定数を一般化した仮想上のエネルギー「ダークエネルギー」が宇宙全体に浸透するという説が提唱された。

ダークエネルギーが存在すると仮定して計算すると、観測とピッタリ合うのです。そんな取ってつけたようなものは気に食わないと言っていた人たちも、結局これ以外に加速膨脹を説明できないので、受け入れざるをえない状況です」

なぜ宇宙は膨張しているのか?宇宙物理学者が語るダークエネルギーの謎と、過去、現在、未来の宇宙

2024/3/14 Yahoo!ニュース
松原:観測事実として、宇宙が加速膨張していることは確かです。でも、ダークエネルギーは、理論的な仮説に過ぎないんですよ。存在が証明されているわけでもありません。

アインシュタイン一般相対性理論では、時空がゆがんでいることや、時空が膨張あるいは収縮することを示しています。一般相対性理論によって、恒星の振る舞いを計算すると、観測データと一致します。

ただ、一般相対性理論を宇宙全体に適用させようとすると、ダークエネルギーがないとできないんです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c9d9f6cc83ccc271d7f3d68f8aaf98166110290?page=3

だそうです。

何となく宇宙の膨張は、水が相転移するように、ダークエネルギーの値も変化しているような気がします。