じじぃの「科学夜話・アイスランド・ラキ火山大噴火!歴史を変えた自然災害」

Iceland volcano: eruption under way on mountain near Reykjavik

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HlLQeHvO-B8

Iceland Laki Volcano


Laki Volcano: The Terrifying Eruptions

Oct 25, 2019 Cars Iceland
There's nothing quite so terrifying as an Iceland volcano.
These sleeping giants can lay dormant for decades or even centuries and then suddenly we feel their wrath. The island experienced one of its worst natural disasters when Laki volcano erupted in the 18th century. The Laki eruption devastated the island and changed the shape of both the landscape and the nation for decades to come. Let's learn more about this cataclysmic event that started in the summer of 1783.
https://www.carsiceland.com/post/laki-volcano

『歴史を変えた自然災害』

ルーシー・ジョーンズ/著、大槻敦子/訳 原書房 2021年発行

第3章 最大の惨事――アイスランド、1783年 より

自然災害全体のなかで、甚大な物理的被害をもたらした可能性がもっとも高いのは火山の噴火である。1783年から1784年にアイスランドで噴火したラキ山ほど、それがはっきりと表れれた事象はない。

専門家によれば、その噴火は人類史上もっとも多くの死者を出した自然災害である。

総死者数は数百万人、破壊は地球全体におよんだ。多くの人にとって幸いなことに、火山はいくつかの特定の場所にしか存在しない。にもかかわらず、なぜ、北大西洋の隅にあり、平均して3~5年に一度噴火が起きる、人口わずか5万人の島国で起きた火山の噴火が、それほど多くのしや破壊を招いたのだろう。
答えを理解するためには、この惑星の絶え間なく変化し続ける地形における火山の役割と、プレートの動きについて振り返らなければならない。火山は3つの異なるプレート環境で形成される。ひとつ目は海底にあり、「中央海嶺」として知られるものを形作っている。それらは大きなプレートがたがいに離れていく場所で、地球奥深くのマントルから熱いマグマが出てきてプレート間のすきまを埋めている。マントルのマグマは濃く、そこで生じる(玄武岩)は重い。よって、岩はなかば溶けている地球表面のマントルに若干沈み込む。その結果、海底という地球でもっとも低い場所には重い岩石、陸地という高い場所には軽い鉱石が見つかる(なぜこうした火山が海のなかの嶺なのかもそれで説明がつく)。
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1783年6月8日、五旬節の朝、ヨン牧師が聖霊降臨の説教を用意して馬で教会へ向かっていたとき、北の方角に巨大な雲が立ち上がるのが見えた。数分も経たないうちに、辺りは闇に覆われ、火山灰が降り始めた。ヨンは思った。いつものように神の忍耐が切れたのだ。苦難の時間がやってきた。
ヨン・ステイングリムソンはアイスランドの英雄であり、その物語は学校で教えられている。アイスランド人を絶滅ぎりぎりまで追い込んだ災害を前に、彼は勇気と冷静さの手本となった。彼はまた、迷信を好むアイスランド人の姿と、ゴジのスノッリがほぼ800年前に示したのと同じ懐疑的な態度の両方を併せ待っていた。残された詳細な日誌には、未来の不吉な前兆とおぼしき夢についての記述がある。ラキ火山の噴火は、アイスランド人の罪に対する神の罰だと彼は考えていた。その一方で、日誌には噴火やその他の火山現象の詳細も記録されており、現代の火山学者にとって貴重な一次資料となっている。
災害時の対応と復旧に関心がある人ならされでもその日誌を読むべきだろう。それより前のリスボン地震の記録同様、災害は自然現象から始まるということがそこに示されている。その事象が起きている最中は、被害が発生し、ヒトの命が奪われ、犠牲者を助ける英雄が生まれる。しかし、いっそう困難な時期はその事象が過ぎ去ってからやってくる。それは勇気と根気と指導力が求められる復旧と再建だ。ヨンはどちらの時期にもすぐれた能力を発揮し、災害時に何が求められるのか、ひとりの人間の力でどれほど状況が変わるのかを身をもって示した。
聖霊降臨祭の朝に始まった噴火は8ヵ月もの長いあいだ続いた。噴火した厚さ15メートルほどの溶岩が1500平方キロメートルを超える広さを覆い尽くした。その面積はロードアイランド州の半分以上にあたり、アイスランドの総面積の6分の1を占めた。ほとんどの溶岩は最初の45日間に噴き出し、春の洪水のような速さで流れたと記されている。10ヵ所の割れ目で連続して噴火を置き、それぞれがみな次のようなパターンをたどった。まず、数日から数週間にわたって地震が繰り返し発生する。それから割れ目ができて、地中に自然に存在する水路を通って溶岩が上昇する。次に、その溶岩と水が反応して爆発的な噴火を起こす。そして、それぞれの割れ目で噴火が進むうちに、やがて地下水が蒸発してしまい、溶岩地表を流れるようになる。
結果として、爆発と溶岩の流出が繰り返し交互に発生した。その後8ヵ月で、ラキ火山は、過去30年噴火が続いているハワイのキラウェア山の3倍の溶岩を吐き出した。
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噴火の多くは局地的である。水中で噴火する中央海嶺の火山は大気には何ら影響をおよぼさない。ハワイで30年以上も続いているキラウェア山のような爆発しない噴火では、放出されるガスは地表付近にとどまる。また、たとえ爆発するような噴火が起きても影響は限定的だ。
ほとんどの噴火で量的にもっとも一般的なふたつのガスは、すでに地球の大気中にふくまれているありふれた水蒸気と二酸化炭素である。また、たとえ爆発的な噴火であっても、成層圏まで大量の物質を運ぶほど勢いがあることはめったにない。その点、アイスランドの火山は有利である。大気圏底層域の大気の厚みは赤道付近でもっとも大きく、極地は小さい。ピナツボ山が成層圏まで物質を届かせるためには高さ約19キロまで吹き上げなければならないが、アイスランドでは約13キロで成層圏に到達する。したがって、アイスランドの火山は世界中に影響を与え続ける可能性が高い。