じじぃの「科学・地球_457_量子的世界像・電荷とは何ですか」

What is Electric Charge

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=p-NrPnUqQYA

What is an ion?

An ion is an atom that has done one of two things:
・Lost one or more electrons and therefore now has a net positive charge - this is called a cation
Or
・Gained one or more electrons and therefore now has a net negative charge - this is called an anion
   

Electric Charge

●What is electric charge?
In simple terms, electric charge is a physical property of matter - it causes matter to experience a force when it is in an electromagnetic field. There are two types of electric charges:
https://alevelchemistry.co.uk/definition/electric-charge/

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

Ⅲ 量子世界の距離、時間、速さ より

電荷とは何ですか

あるひとりの人物を描き出せと言われれば、いくらでもその人の特徴を挙げることができるたろう。もしあなたに文才があれば、誰かを描写するだけで1冊の本が書けるかもしれない。しかし、そんなあなたが電子について描写した本を書き始めることになったなら、おそらく1ページか2ページ書いたところで、もう何も書くことがなくなってしまうのではないだろうか。
電子は質量(および、その質量にともなうエネルギー)を持っている。スピンも持っている。これらは電子の力学的な特徴だ。加えて、電子は2種類の荷(チャージ)をもっている。一方は電荷で、これが電子の電磁相互作用の強さを決定する。もう一方は、電子の弱い相互作用の強さを決定する(ちなみに荷ももう1種類、「カラー(色)荷」と呼ばれるものがあり、強い相互作用をする粒子はこれを持っているが、電子は持っていない)。ここで注目するのは電荷(エレクトリック・チャージ)のほうで、多くの場合、「チャージ」と言えば電荷のことを指す。
電荷には、非常に重要な2つの特徴がある「量子化」されている(塊になってあらわれる)ことと、「保存」される(総量が決して変わらない)ことだ。単位電荷は記号eであらわされ、その大きさは陽子1個が持っている電荷の総量に等しい。
通常、大きなスケールの世界では、電荷はクーロンという単位で測られる。この単位名は、電荷を持った物体どうしの間に働く引力と筋力の法則を測定した18世紀後期の科学者、シャルル=オーギュスタン・ド・クーロンの名をとってつけられたものだ。しかし電荷の量子単位は、クーロンに比べて、控えめに言っても非常に小さい。e=1.6x10-19Cである(逆に言えば、1クーロンは電子600京個の電荷に等しい)。量子世界では、通常、このeが単位として用いられる。この単位であらわせば、電子の電荷は-1、アルファ粒子の電荷は+2、ウラン原子核電荷は+92だ。前に述べたように、観測されたことのない単独のクォークは、この単位で言うと-1/3、+2/3という分数の電荷を持っている(反クォーク電荷は+1/3、-2/3である)。
電荷の保存はクーロンによって測定されたが、それよりずっと前に、この保存則を初めて提唱したのがベンジャミン・フランクリンだった。電荷の保存とは、どんな変化過程においても電荷の総量は変わらず、変化の前でも同じだということである。これは、現在わかっているかぎりでは絶対的な保存則で、どんな状況においても覆されない。この保存則のいくつかの帰結については項目53(粒子が崩壊するとはどういうことですか)と57(量子世界でも大きなスケールでも成り立つ四大保存則)で説明しよう。
電荷スカラー量である。つまり、方向は持たずに大きさだけを持っている量ということだ。したがって複合粒子の電荷は単純に、その構成要素の電荷の数値合計になる。たとえば水素原子の電荷なら、+1と-1でゼロになる。ウラン原子から2個の電子を引き剥がせば、92個の陽子と90個の電子が残るので、正味電荷は+92-90=+2である。+2/3の電荷を持ったクオーク1個が、+1/3の電荷を持った反クォーク1個と結びつけば、結果として+1の電荷を持ったパイ中間子ができる。実際に電荷の保存がなされる例をひとつ挙げよう。電荷-1の電子と、その反粒子である電荷+1の陽電子が出会った対消滅すると、電荷のない光子2個が生成される。この変化過程の前でも後でも、正味の電荷は変わらずゼロだ。

しかし、そもそも電荷とは何なのだろうか。この問いに対しては、「とにかく重要なもの」とか、「いわく言いがたいもの」とか、「それを持つ粒子どうしを引き寄せたり反発させたりするもの」と答えることもできよう。これがあるおかげで、電子と陽子がいっしょになって水素原子をつくるなど、めでたい結合が生まれる場合もあるし、また別の場合には、原子核に向かってまっすぐ飛んでいったアルファ粒子が原子核に当たらずに横をすりぬけてしまうなど、出会うはずのものが出会わなくなることもある。

しかし電荷に関して何よりも重要なのは、粒子がこれを持っているおかげで、光子の放出と吸収という花火のような出来事に参加できるということである。これが電荷というものの本質だ。電荷は、それを持っている粒子を光子と「結びつける」のだ。電荷は物質と放射をつないでいるのである。