じじぃの「日本製半導体の復活・JX金属・高品質・高純度99.9999999%!週刊新潮」

トヨタ・NTTも出資 、次世代半導体の新会社「ラピダス」を解説

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次世代半導体の国内生産を目指す新会社「Rapidus(ラピダス)」が11日、設立会見を開きました。
トヨタ自動車やNTTなど日本企業8社が出資します。米IBMなどと連携して、次世代の半導体の製造技術を開発。5年後に、ほかの企業から半導体の生産を受託する事業を目指すことも明らかにしました。次世代半導体は、どういう技術なのでしょうか。最先端の半導体を巡る動き、安定したサプライチェーンの構築や経済安全保障に欠かせなくなった半導体について解説します。
https://www.youtube.com/watch?v=N0FvIlXbJC4



微細化実現の鍵は“開発型”鉱山・製錬業の高純度化技術を生かした先端素材で社会貢献

●JX金属――半導体産業を支える世界シェアNo.1のハイテク素材
創業1905年。日産コンツェルンの源流企業でもあり、銅の採掘と製錬で歴史を作ってきたJX金属は、日進月歩の半導体産業を支える。省力化、微細化する半導体製造に不可欠なスパッタリングターゲットで世界シェア60%を誇り、ファーストサプライヤーとして世界の半導体メーカーのニーズに応える「素材の力」に迫った。

様々な素材のスパッタリングターゲットを使ってナノレベルの膜を重ね、後から不要な部分を除去することで、半導体ウェハーの表面に複雑な配線パターンを構築する。半導体の集積度は年々上がり、配線パターンの微細化も顕著だ。スパッタリングターゲットに不純物や異物が含まれると半導体の歩留まりに影響するため、求められる純度や均質性も上がっている。技術的なハードルは高まる一方だ。
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ONB/21/nmm0927/

週刊新潮』2022年11月17日号

佐藤優の頂上対決 太田泰彦(日本経済新聞編集委員

我々はどう生き残るか――日本の半導体産業を復活させるには何が必要か より

国家の安全保障を左右する戦略物資としてますます重みを増す半導体。このサプライチェーンをめぐって各国で激しい駆け引きが行われている。かつて日本は半導体大国だった。それがなぜこうまで凋落してしまったのか。そして今後、復活の可能性はあるのか。半導体産業を知悉するジャーナリストの提言。

佐藤 ここ数年、半導体は常に経済ニュースの主役です。コロナや米中デカップリング(分業)でサプライチェーンが分断され、深刻な半導体不足が生じて家電製品や自動車の生産ラインが止まりました。ただ、この物資の実態は極めてわかりにくい。その全体像を理解するのに、太田さんの『2030半導体地政学』は格好のテキストでした。
太田 ありがとうございます。おっしゃる通りで、半導体はあらゆる電気製品に組み込まれており、サプライチェーンはグローバルに広がって複雑です。その上、いまや国家の安全保障を左右する戦略物資となり、半導体を制する者が世界を制すという状況になっています。
佐藤 まずはこの半導体がどこでどう作られているのか、そこからお話しいただきたいと思います。
太田 半導体チップが製品として世に送り出されるまでには、1000近くの工程があります。大雑把にまとめると、半導体にどのように仕事をさせるかを考える人、設計する人、実際に作る人がいます。それらが別々の地域、会社で行われています。
佐藤 国を跨いでもいる。
太田 はい。最上流にいるのが、電子回路の基本パターンやデジタル信号を処理する仕様を考え、ライセンスの形で供与する会社です。「IPベンダー」とも呼ばれますが、一番有名なのはイギリスのアームです。
佐藤 2016年に孫正義さんのソフトバンクが買収した会社ですね。
太田 そうです。次に基本設計を買って組み合わせて自社のチップの図面を描く人たちがいます。アメリカならクアルコム、エヌビディアなどの会社で、中国ならファームウェア傘下のハイシリコンがそうです。またアメリカのインテルAMDのようにアームとは異なる自前の仕様を採っている会社もあります。
佐藤 はっきり分けられない会社もある。
太田 ただ、これらの企業の多くはファブ(工場)を持たず、「ファブレス」と呼ばれています。
佐藤 つまり頭脳ですね。工場ではなく、オフィスで仕事をしている。
太田 製造を請け負うのは、「ファウンドリ―」と呼ばれる企業です。アメリカのグローバルファウンドリーズや韓国のサムスン電子などがありますが、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)の1人勝ちです。技術力も規模も圧倒的で、世界の60%近いシェアを占めています。
佐藤 世界中でTSMCの工場を誘致していますね。アメリカではアリゾナ州に工場を作ることになりましたが、日本も国を挙げて誘致し、熊本に作ることが決まりました。
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エンジニアに敬意を

佐藤 私は小学校の頃、部品のジャンクショップで真空管コンデンサを買いラジオを組み立てていました。
太田 私もやりました。真空管は、1球、2球と呼び、トランジスタになると1石、2石となる。
佐藤 あれは楽しかった。ワクワクしながら作っていました。
太田 私もそうです。モノ作りに熱量があったんですね。同じものを華強北には感じました。でもいまの日本にはそれがない。
佐藤 私もそう感じます。
太田 だからいま必要なのは、モノを作る人、エンジニアがいろいろなことを、生き生きと面白がってやれるようにすることだと思うのです。それにはエンジニアに対する社会の敬意が必要です。
佐藤 日本では「理系」と十把一絡げにして、狭い世界に閉じ込めてしまうところがありますからね。
   

太田 同時にエンジニアの方々には、もっと自分の経済価値に目覚めてほしいんですよ。先日、日本の素材サプライやーを訪ねたんです。世界中でこの会社しかできない金属加工技術を持っていて、インテルTSMCサムスンが毎日のように「こっちに回せ」と言ってくる。そんなに需要があれば値段が上がるはずなのですが、むしろ値切られている。

佐藤 どうしてですか。
太田 商慣習だそうです。お客さんを大切にするとおっしゃっていましたが、どうにも腑に落ちない。なぜだろうと考えていて「あっ」と気がついたんです、彼らは幸せなのだと。すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない、とも思いました。