Hot Quark Soup Produced at RHIC
The Solenoidal Tracker at RHIC (STAR)
Mapping How Big-Bang-Produced Quark-Gluon Plasma Became All Matter
Lehigh University
Quark-gluon plasma (QGP) is the name for this mysterious substance, so called because it was made up of quarks (the particles) and gluons, which physicist Rosi J. Reed describes as “what quarks use to talk to each other.”
Scientists like Reed, whose research includes experimental high-energy physics, cannot go back in time to study how the universe began. Instead, they re-create the circumstances by colliding heavy ions, such as gold, at nearly the speed of light, generating an environment that is 100,000 times hotter than the interior of the sun. The collision mimics how quark-gluon plasma became matter after the Big Bang, but in reverse: the heat melts the ions’ protons and neutrons, releasing the quarks and gluons hidden inside them.
https://www2.lehigh.edu/news/mapping-how-big-bang-produced-quark-gluon-plasma-became-all-matter
XIV さまざまなスケールでの量子物理学 より
クォーク・グルーオンプラズマとは何ですか
熱は物質を解離させる――つまり構成要素が熱のせいでばらばらになるということだ。たとえば、温度50ケルビン(絶対温度で50度)の固体窒素の塊があったとしよう。これを63ケルビンより少し上まで加熱すると、窒素は溶けはじめる。がっちりと組み合っていた窒素分子どうしが自由になって、液体になった窒素のなかを泳ぎまわれるようになる。この液体をさらに77.5ケルビンまで加熱すると、窒素は沸騰する。分子はさらに自由になって、気体のなかで互いにぶつかっては跳ね返る。この気体を構成しているのは窒素分子、N2だ。2個の窒素原子が固く結びついて1個の単純な分子になっている。
気体がさらに過熱されると、白熱状態を通り越すが、原子はまだ結びあわさってN2分子に収まっている。しかし温度が2万ケルビンあたりを上回ると(ここから先は、書かれている温度の数字はおおよそとなる)。しだいに原子がほどけはじめ、5万ケルビンに達するころには、気体の中身がほぼ完全に、窒素分子から窒素原子に変わっている。実際のところ、それは中性の原子ではなくてイオン(電荷をもった原子)である。この温度になると、熱運動の騒乱によって電子が原子から離れていくころだ。温度が上がりつづけるともに、まずは1個目の電子が、ついで2個目の電子が離れていって、しまいには7個の電子すべてが2個の原子それぞれから逃げていく。温度が500万ケルビン前後になると、かつては固い塊だった窒素が、いまやむきだしの窒素原子核と電子のプラズマになっている。(ついでながら、窒素分子という1個の「粒子」で始まったものが、いまや16個の粒子になっていることに注意しよう。2個の原子核と、14個の電子である)。
温度はさらに少しずつ上げられるが、プラズマはずっとそのままで、やがて温度が500億ケルビン前後に達する。すると、激しくぶつかりあっていた原子核同士が互いを壊しはじめ、内部から陽子と中性子が飛び出してくる。およそ200億ケルビンで、この過程はほぼ完了し、いまや最初の分子1個につき42個にまで増えた粒子が、陽子と中性子と電子のプラズマのなかで跳ねまわっている(陽子が14個、中性子が14個、電子が14個)。
これで終わりでないのは推測できる。電子は基本粒子だから、これ以上は分かれようがないはずだが、陽子と中性子は複合粒子で、クォークとグルーオンからなっている。この核子を分裂させるには、どれだけの温度が必要なのだろう。理論上の計算では、1兆ケルビンを少し超えたあたりでそうなって、「クォーク・グルーオンプラズマ」が発生する。これはクォークとグルーオンと電子のスープだ。しかし、そのような温度が実現できるのか? 比較のために、太陽の中心部の温度を考えてみよう。そこはわたしたちの知るかぎり最も熱いところだが、そこの温度さえ、このクォーク・グルーオンプラズマの温度の10万分の1ぐらいでしかない。
ところが、少なくとも一瞬だけ、その温度に達する方法がひとつだけある。1個の高エネルギーの原子核を加速器のなかでもう1個の原子核にぶつける方法だ。まさにその目的のために設計された加速器が、ニューヨーク州ロングアイランドのブルックヘブン国立研究所にある。その名称は「相対論的重イオン衝突型加速器」、略称RHIC(「リック」と発音する)である。ここでは金の原子から総数79個の電子を引きはがすことができ、その原子核を20TeVのエネルギーまで加速して、それからその高エネルギー原子核をぶつけあわせ、その火の玉のような衝突で合計40TeVのエネルギーを得る(これはCERNのLHCで陽子に与えらられるエネルギーより大きいが、それはRHICで加速される金の原子核が、LHCで加速される陽子の79倍の電荷を持っていて、ゆえに陽子の79倍も電気力を感じやすいからである)。
2000年以来、RHICではデータが蓄積されてきているが、クォーク・グルーオンプラズマの詳細な特性に関する確たる結論はまだ出ていない。これを物質の新しい状態と呼ぶのは正鵠を射ている。