じじぃの「科学・地球_459_量子的世界像・原子核内の運動はどうなっているのか」

Natural Fermion Hierarchies from Random Yukawa Couplings - Gero von Gersdorff

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=nAOxkk8XLwo

Feynman diagrams and Yukawa coupling


Our Mathematical Universe: My Quest for the Ultimate Nature of Reality

Max Tegmark, like the Illuminati, asserts that reality is 100% mathematical. However, where Illuminism concerns a single mathematical universe, Tegmark has proposed a mathematical multiverse [labelled “Level IV”], under which are three other levels of scientific multiverse(!).
https://books.google.co.jp/books?id=NZo7AAAAQBAJ&pg=PT203&dq=Mathematical+Universe+yukawa&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwieh_HlkovkAhUUat4KHWPvAOYQ6AEILDAA#v=onepage&q=Mathematical%20Universe%20yukawa&f=false

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

Ⅴ 原子と原子核 より

原子核の内部で、陽子と中性子はどんな運動をしているのですか

原子核物理学はアーネスト・ラザフォードによって創始されたと言っていい。1911年にラザフォードが指揮した実験で、原子の内部に正の電荷を持った非常に小さな中心核があることを明らかにしたのがそもそもの始まりである。この原子核の内部に何があるのかは、以後40年、ずっと謎のままだった。1932年に中性子が発見されるころまでには、原子核のだいたいの大きさはわかっていたし、原子核どうしが反応して別の原子核を生じさせることがわかっていた。原子核は正の電荷を持っているので、そのなかに陽子があることは推察された。さらには、原子核の全質量(中性子の分もすべて陽子によるものと考えられた)と全電荷(陽子のみが電荷を持つ)とが釣り合わないことから、原子核の内部に電子も含まれているはずだと――確証はまるでなかったとはいえ――考えられていた。
しかし項目8(原子核の大きさはどれくらいで、内部はどうなっているのですか)で説明したように、ジェームズ・チャドウイックによる中性子の発見で、原子核に電子を含まなくてもよいことが一挙に明らかになった。原子核は陽子と中性子の集まりとして理解することができる。物理学者は安堵のため息とともに原子核から電子を取り払ったが、そうすると別の疑問が残った。陽子と中性子(総称して「核子」)は、どんなように原子核の内部が収まっているのだろうか。核子たちの状態は固体に近いのか、それとも液体、あるいは気体に近いのだろうか。項目8でも述べたように、10年ほどは液滴模型でうまく説明がついていた。とりわけ、この模型を使えば核分裂をとてもうまく説明することができた。核分裂は1938年の末に発見され、1939年には理論的な説明が与えられた。
第二次世界大戦後、液滴模型はしだいに欠点をあらわしていった。科学者の目の前に、原子核内の陽子と中性子が――ちょうど原子内の電子のように――殻に順番に入っていくという証拠が出てきたのである。そうだとすると、核子原子核内でそれほど(固体のように)束縛されてはおらず、かなり自由に(気体のように)運動していると考えるしかなかった。
陽子と中性子の数がある特別な値になると、その原子核はずば抜けた安定性を示した。その様子は、電子の数がある特別な値になると、原子が化学的に安定になるのと似ていた。原子の場合、殻にいっぱいに電子が詰まっている原子の番号は、2、10、18、36、54、86である。これらの数字は、いわゆる「希ガス」原子――順番にヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン――のなかの電子の数だ。これらの原子はどれも殻いっぱいに電子がが詰まっているので、その殻にはもう別の電子の入る余地がない。一方、原子核内の殻がいっぱいになる核子数は、電子の場合と同じではなく、それが当初の混乱を招いた。こちらは、2、8、20、28、50、82、126である。
実際、この原子核の殻がいっぱいになる核子数は、最初のうちは「マジックナンバー(魔法数)」と呼ばれていた。なぜこれがこのような数字になるのかを物理学者は説明できなかったからである。その説明を独立して与えたのが、アメリカのマリア・ゲッバード・メイヤーとドイツのヨハネ・ハンス・イェンゼンの率いるチームだった。2人はこの洞察により、1963年のノーベル物理学賞を受賞した(同年の受賞者にはハンガリーアメリカ人物理学者のユージン・ウイグナーもいるが、こちらは無関係の原子物理学研究の功績による)。メイヤーとイェンゼンは、原子の場合と同じように、やはり排他原理が原子核の殻模型の基本的な理由になると気づいた。ただし原子核の場合には、スピンと軌道角運動量を組み合わせる規則が少しばかり異なっていたのだった。
マジックナンバー」(殻をいっぱいにする核子の数)は陽子と中性子のそれぞれに適用されるので、原子核が「二重マジック」となることがありえる。つまり、陽子と中性子がどちらも殻を埋めている原子核がありえるということだ。最も軽い二重マジックの原子核は、2個の陽子と2個の中性子からなるヘリウム4の原子核である。この原子核はきわめて束縛のきつい構造になっているので、放射性崩壊を起こした原子核からそのまま――すなわちアルファ粒子として――放出される。そして同じ理由から、ヘリウムは宇宙に広く分布している。一方、最も重い二重マジックの原子核は、82個の陽子と126個の中性子からなる鉛208だ。この同位体は天然粒子のうちで最も重い安定粒子である。
このように、原子核が液滴のように見えながら、同時に自由に飛びまわる核子気体のようにふるまうのはどういうわけなのだろう。その答えは、核力の性質にある(つきつめれば、クォーク間でグルーオンが交換されることで生じる力にあるということだ)。この核力によって、陽子や中性子原子核内では、かなりすんなり動きまわることができる。しかし、核子が仲間の核子の集まりからはぐれようとすれば、その核子はすぐに集団に引き戻される。この原子核のふちで働く強い力が、液体の表面張力のようなものを生み出す。したがって原子核は全体として液滴のように振動する。しかし原子核の内部の個々の粒子は、むしろ気体分子のように動いているというわけだ。この原子核の二重性についての理論は「集団運動模型」と呼ばれている。ニールス・ボーアの息子オ-ゲ(デンマーク語では「オーウ」と発音する)は、この集団運動模型の研究によって、アメリカ人の同僚ベン・モッテルソンとともに1975年のノーベル物理学賞を受賞した。