じじぃの「科学・地球_460_量子的世界像・周期表にはなぜ終りがあるのですか」

【検証】カズレーザーは元素全部言えるの?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HhpnbBAs_SI

日本発113番元素は「ニホニウム

   

【速報】新元素4つの名称が発表:日本発113番元素は「ニホニウム」!

2016/6/9 Chem-Station
かねてより全世界が待ち望んでいた新元素の命名。特に今回は日本発・113番元素が檜舞台に上がるということで、国内でもかつてない注目を集めていました。
実は今回は113番のみならず、115番・117番・118番も加えた計4つの新元素名が発表される手はずになっていました。このことはご存じでしたか?
https://www.chem-station.com/chemistenews/2016/06/Nihonium.html

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

Ⅵ 原子核のしくみ より

周期表にはなぜ終りがあるのですか

周期表に終わりがあるのは(現在わかっている元素で言えばZが118のところ、安定した元素で言えばZが82のところ)、電子とは何の関係もなく、原子核だけの事情による。
具体的には、陽子間の電気的斥力のためである。強い核力は、陽子と陽子、中性子中性子中性子と陽子のあいだで、いずれも引力として作用する。要するに、この力はすべての核子をひとまとまりに結合させる働きをしているわけだ。この力は遠いところまでは及ばず、それどころか、大きな原子核のサイズはどの到達距離さえない。強い核力が働くのは核子どうしが接近したときだけなのだ。この場合、陽子間の電気的斥力は核力より弱いが、到達距離は長い。そのため重い原子核の内部では、すべての陽子がほかのすべての陽子からの電気的斥力を感じるのである。
陽子と陽子のあいだ、および中性子中性子のあいだでは排他原理が働くが、陽子と中性子のあいだでは排他原理が働かない。そのため、原子核の内部で2個の陽子が同じ運動状態を占めることはできないし、2個の中性子についても同様だが、陽子と中性子にはそのような制限がなく、同じ運動状態でいることができる。したがって、もし電気力が邪魔をしなければ、最も安定した原子核はすべて、中性子と陽子を同数持つだろう。中性子と陽子はそれぞれ排他原理にしたがって殻に積み重なるが、互いに自由に混ざりあう。たとえば鉄なら、安定した原子核には26個の陽子と26個の中性子が含まれるだろう。ウランの安定した原子核には92個の陽子と92個の中性子が含まれているはずだ。中性子と陽子は再現なく積み重なって、つぎつぎと大きな原子核を作る。548番目の元素の原子核には548個の陽子と548個の中性子が含まれ、元素に名前をつける国際機関は大忙しになることだろう。
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中性子数Nを横軸に、陽子数Zを縦軸にしてグラフを描いてみると、安定した原子核をあらわす線が引ける。陽子が互いに反発しあわない仮想の世界では、この「安定曲線」が、45度の角度で伸びる直線になる。なぜならその場合、最も安定した原子核では中性子と陽子の数が等しくなる(N=Z)からだ。これが図に示されている破線である。しかし現実の世界では。陽子間の反発によって安定曲線が屈曲し、あるところで終点を迎える。これが図に示されている実線である。この線がなぜ屈曲するかといえば、陽子数Zに比例して中性子数Nの増分が大きくなるからだ。この線がなぜ終るかといえば、ある点に達したところで、もうそれ以上は――中性子の助けがあっても――原子核に陽子を詰め込みようがないからである。
中性子原子核内部のまとまりをよくし、安定曲線を伸ばす働きをしているわけだが、中性子の役割はそれだけではない。中性子はある意味で、原子核の存在そのものを支えているのだ。もし中性子がなかったら、ヘリウムは存在せず、それより重い元素もいっさい存在しない。宇宙が水素だけでできていたとしたら、惑星も人間も存在していなかっただろう。なぜなら2個の陽子は、それだけでは結合して原子核を作ることができないからだ。ヘリウム2(陽子が2個で中性子がゼロ)などという原子核は存在しないのである。電気的斥力は、比較的弱い力だとはいえ、2個の陽子がそれだけで結合するのを阻止できるだけの強さはある。1個か2個の中性子が加わるからこそ、陽子は結合していられるのだ。だからヘリウム3(2個の陽子と1個の中性子)や、ヘリウム4(2個の陽子と2個の中性子)の原子核は安定している。そしてこれらの原子核はある意味で、それより重い原子核すべてを成り立たせるために土台なのである。
考えてみれば不思議なもので、わずかばかりのシンプルな原理と事実から、この世界のすべてが生まれている。もし中性子がなかったら、水素以外の元素は存在していない。もし排他原理と角運動量の合成規則がなかったら、不活性な陽子ばかりの冴えない世界ができあがっていただろう。そこに周期表はなく、生命も色彩もない。そして陽子の電荷がなかったら、電子が寄り集まって原子を形成することもなく、原子核が何の使いようもないままに果てしなく種類を増やすだけになっていただろう。