じじぃの「科学・地球_462_量子的世界像・ベータ崩壊とは何ですか」

奇跡が生んだ世界の標準時計 福井県水月湖

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=zK5Aaeyysok
   

【放射性炭素年代測定】歴史の”ものさし”となった福井県水月湖」の年縞

2021年11月29日 ミーム疑似科学の夢を見るか
炭素14の放射性
不安定な元素は様々な方法で安定する形に変わろうとします。
自然界に極わずかしか存在せず、宇宙線中性子との衝突によってイレギュラーに作り出された「炭素14」もまた不安定な元素であり安定した形に変わろうとします。
具体的に「炭素14」の場合には、内部で過剰に持っている「中性子」のうちのひとつを「陽子」に変えることで元の安定した形である「窒素14」に戻ろうとします。
さぁこの作業が大変なわけです。そんなことをポンポンと簡単にできるものではありません。
中性子」が「陽子」に変わるには「ベータ崩壊(ベータ壊変)」と言う現象が必要です。
https://akirako.com/meme/?p=2869

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

Ⅵ 原子核のしくみ より

放射能とは何ですか

原子核は不安定な状態にあると、自発的に(ある一定の半減期で)もっと安定した別のものに変わる。これが放射能を持つということである。原子核の存在が知られる前から、この性質は放射能と呼ばれてきた。
19世紀末、アーネスト・ラザフォードマリー・キュリーなどの科学者が、ある一部の重い元素から自発的に「放射」が発せられていることに気づく。最初はその放射の性質について詳しいことが何もわかっていなかったため、ラザフォードは最初に発見した2種類の放射線それぞれに、ギリシャアルファベットの最初の2文字をとって「アルファ線」「ベータ線」という呼び名をつけた。それからまもなく、フランス人化学者のポール・ユルリッシュ・ヴィラールが3種類目の放射線を発見した。前例にしたがって、この放射線ギリシャアルファベットの3番目の文字から、「ガンマ線」と名づけられた(訳注:命名者は、ガンマ線を初めて論文で報告したラザフォードで、発見自体もヴィラールよりラザフォードのほうが早かったという説もある)。ほどなくして、科学者はこれらの「光線」の正体をつきとめる。アルファ線はヘリウムの原子核、つまり2個の陽子と2個の中性子が結合したもので、これは現在でも「アルファ粒子」と呼ばれている。ベータ線の正体は電子で、これも場合によっては、いまも「ベータ粒子」と呼ばれている。そしてガンマ線の正体は電磁放射で、現在では、高エネルギーの光子であることがわかっている(これもやはり「ガンマ粒子」と呼ばれる)。

アルファ崩壊ベータ崩壊には「変換」がともなう。つまり崩壊の前後で元素の種類が変わるのである。一方、ガンマ崩壊では元素は変わらない。これは単に原子核内のエネルギー状態が高いほうから低いほうへと量子飛躍しているだけで、原子内電子の量子飛躍と同じような現象だ。ただし、エネルギーの変化ははるかに大きく、原子内電子の場合に比べて100万倍もの差がある。

このような放射性崩壊はなぜ起こるのだろう。それが起こるとどうなるのか。アルファ崩壊ベータ崩壊を例として順に説明していこう。
アルファ崩壊はほぼ例外なく、83番目以降の非常に重い元素だけで起こる。これはまさに原子核が陽子を放り出すための一手段であり、だから周期表で言うと、原子核内の陽子の斥力が原子核を不安定にさせるぎりぎりのあたりに位置する元素で起こるのである。
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一方、ベータ崩壊の物理過程はまったく異なり、ベータ崩壊の事例はアルファ崩壊の事例よりはるかに多い。ベータ崩壊をするとわかっている放射性元素は、水素3(三重水素)から非常に重い「超ウラン」の元素まで、つまり周期表の初めから終わりまで何百とある。ベータ崩壊弱い相互作用によって引き起こされる。電子ニュートリノだけでなく、中性子と陽子にも及ばされる弱い相互作用が誘因となって、原子核内の陽子と中性子の数がアンバランスになったときにはつねにベータ崩壊が起こる。
この「アンバランス」の意味を説明するには、具体的な例を挙げるのが一番だろう。全部で14個の核子を含んだ原子核を考えてもよう。質量数が14の最も安定した原子核は、7個の陽子と7個の中性子を含んだ窒素14である。軽い元素では典型的だが、陽子と中性子の数は等しいほうがエネルギーに有利で安定性が高い。質量数は同じだが元素として異なるものに炭素14原子核があり、こちらは6個の陽子と8個の中性子を含んでいる。この原子核では陽子と中性子の数が「アンバランス」なので、もし炭素14中性子の1個が陽子1個と置き換われば、もっと安定した原子核が形成できる。その置き換えを引き起こすのが、弱い相互作用なのである。炭素14ベータ崩壊では、1個の電子と1個の反ニュートリノが放出されて、1個の中性子が1個の陽子に変わる。この過程をあらわしたのが、つぎの反応式である。
   
  6C814 → 7N714 + e- + ν*
   
ギリシャ文字のν(ニュー)はニュートリノ(* ただし反粒子)をあらわしている。この過程の半減期は5730年で、古代(ただしあまり遠くない)遺物の放射性年代測定にうってつけのツールとなっている。大気中には炭素14が満ちているが、切り倒されたあとの樹木などからは徐々に炭素14が失われていく。そのため木製の人工物の炭素14がどれだけ減少しているかを測定すれば、その木材が生きた樹木の一部だったときからどれだけ年数が経ったているか推定できるのである。