じじぃの「科学・地球_477_量子的世界像・無次元数137とは何ですか」

A Reason for 137 the Fine Structure Constant

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=A5ZOjO8X5aY

微細構造定数 α


マジックナンバーの謎~微細構造定数と単位

2022-03-22 ひろじの物理ブログ
●微細構造定数は自然単位の組み合わせによる無次元量
量子電磁力学に登場する水素の微細構造定数αは、量子電磁力学の自然単位の組み合わせでつくられる重要な無次元量でもあります。
無次元量は、単位のない量のことです。
量子電磁力学は電磁気理論と量子力学を連結することに成功した理論です。
https://ameblo.jp/hamgon1971/entry-12732949251.html

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

XV 量子物理学に残された謎 より

無次元数137

わたしたちが扱うほとんどの量は単位とセットになっている。6フィート、3マイル、2日、5ポンド、40ワット。単位を変えれば数字も変わる。6フィートは2ヤード、3マイルは4.83キロメートル、2日は48時間……。だが、数のなかには「純粋」な数字、単位のつかない数字もあって、そのような数を無次元であるという。たとえばサイコロの面の数は6で、サイコロの大きさや重さをどんな単位で測ったときでも、つねに変わらず6である。あるいは同じ単位の2つの量の比も、やはり無次元だ。あなたのおばあさんの家まで14マイル、あなたのお気に入りのレストランまで2マイルあったとすれは、その2つの距離の比は7だ。距離を測る単位はいくつもある。メートルで測ってもフィートで測ってもヤードで測っても尺で測ってもいい。ただ、どれで測っても比は7だ。
量子世界で使われるほとんどの量も、やはり単位とセットになっている。原子質量単位、電子ボルト、ナノメートル、ピコ秒……。だが、いくつかの重要な数は無次元だ。たとえばミュー粒子の質量は、電子の質量の206.769倍で、質量を測るのにどんな単位を使ってもつねに同じである。そして、このような無次元となる量の組み合わせで、とりわけ興味深いものがある。まず、プランク定数を2πで割る(つまりħ「エイチ・バー」だ)。それに光速(c)を掛け、電子の電荷(e)の2乗で割る。その結果のħc/e2は、137.036に等しい無次元数である。ħとcとeにどんな単位を使っても、結果はつねに同じとなる。これら3つの量の値がまだあまり正確にわかっていなかった1920年代には、何人かの物理学が、この数はきっかり137なのではないかと考えたことがある。だが、そう都合よくいかなかった。

137.036が興味深いのはわかるとしても、なぜそれが重要なのか?

なぜなら、この逆数、つまりe2/ħc=1/137.036、およそ0.007が、電磁相互作用の強さのものさしであるからだ。これがいわゆる「結合定数」で、量子世界での電磁エネルギーの担い手である光子に荷電粒子を結びつけている。この数が小さいために、結合はかなり弱く、したがって物理学者は光の放出と吸収の仮定を比較的容易に計算できる。
この逆数1/137.036は、「微細構造定数」とも呼ばれる。相対論的な効果のために、原子内のエネルギー準位は、スピンと軌道角運動という2つのベクトル量の相対的な向きによって「分裂」する。この分裂は、最初にニールス・ボーアが理論的に示したエネルギー準位の分裂よりも小さいため、「微細構造」と呼ばれ、微細構造定数の大きさに依存する。
もし微細構造定数がもっと大きかったら、エネルギー準位はもっと大きく分裂したふだろう。もし微細構造定数が1になっていたら、もはや微細構造はなく、原子内のエネルギー準位は1本のままだったろう(それ以外にも多くのことが変わってくるから、おそらくわたしたちも、ここでこんなことを論じていられなかっただろう)。
それは、なぜ数値が137なのか? その答えは誰も知らない。これは物理学者が、いつか答えが出ることを祈っている疑問なのだ。この無次元数に魅惑された人間のひとりが、これまでにも何度も出てきた、ジョン・ホイーラーである。
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わたしたちの知るかぎり、粒子はすべて、電荷を持っているかいないかのどちらかである。したがって、すべての粒子は電磁場(光子)に弱く結び結びつくか、まったく結びつかないかのどちらかである。だが、第3のカテゴリーに属する粒子も理論的に考えられる。それは、NからSかの磁荷(「極強度」)を持っている粒子である。「磁気単極子」と呼ばれるそれは、1931年にイギリスのポール・デイラックが研究していたものだ。もし存在していれば、磁気単極子は磁気の直接的な源であるだろう。対照的に、荷電粒子は磁気の間接的な源である。荷電粒子は運動することによって磁気効果を生み出すが、「そこにいるだけ」で生み出せるわけではない。デイラックの驚くべき発見は、もし磁気単極子が存在していた場合、それは陽子や電子よりもずっと強く光子と結びつくということだ。磁気結合定数は1/137ではなく、137になるだろう。磁気単極子を探す実験は前々からいろいろと行なわれてきているが、まだ1個も見つかっていない。
相互作用の強い磁気単極子じは、古典物理学では理論的に何の問題もない。それはただ、たまたま電子の2万倍近くの力で互いを押したり引いたりする粒子であるというだけだ。しかし、これが量子物理学では問題となる。量子物理学の理解では、相互作用が強いときには新しいことがいろいろと起こるのである。相互作用がどれだけ弱くなりうるかに、わかっているかぎり、下限はない。しかし、どれだけ強くなりうるかには、何らかの上限を課すことができる。わたしたちは長らく、いつかどこかの理論家が、そうした上限を磁気相互作用にも見つけてくれて、137という数字の正当な「理由」を教えてくれるのではないかと期待を抱いてきた。おそらく1/137.036という電気結合定数がそんなにも弱いのは、137.036という磁気結合定数がこんなにも強いからなのかもしれない。