じじぃの「科学・地球_452_量子的世界像・電子の中はどうなっているのか」

Cathode Ray Tube - How It Works ? Easy Explanation . Engineering - Physics

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ijJCTeHcrkU

陰極線管

   

陰極線

わかりやすい高校物理の部屋
●電子の発見
陰極線の研究は19世紀末に盛んに行われ、イギリスの物理学者J.J.トムソンは、陰極線を構成する粒子の質量を測定し、陰極線に磁場や電場をかけたときに曲がる方向から粒子が負電荷を持つことを発見し、陰極線の正体が電子の流れであることを示しました。
陰極線の研究によって電子は発見されました。陰極線は電子線とも呼ばれます。電子の発見は、それまで物質の最小構成単位であると考えられていた原子がさらに分割可能であることを示しました。
https://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/atom/dennsi/innkyoku.html

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

I 原子より小さい世界 より

電子の大きさはどれくらいで、内部はどうなっているのですか

電子は、基本粒子のうちで最初に発見された粒子であり、その初お目見えは「陰極線管」のなかだった。1897年、ケンブリッジ大学のJ・J・トムソンの研究室での出来事である。トムソンも含めた当時の科学者は、空気をほとんど抜いたガラス管の両端に1枚ずつ金属板を入れ、片方に正の電極、もう片方に負の電荷を1枚ずつ金属板を入れ、片方に正の電荷、もう片方に負の電荷をもたせておくと、負の電荷の金属板から正の電荷の金属板に向かって、なにか「放射線」が出ていることを知っていた。こうした負の電荷の金属板は「陰極」と呼ばれていたので(正電荷の板のほうは「陽極」)、この未知の光線は「陰極線」と名づけられた。トムソンは、この放射線の性質を解明しようと、さまざまな種類の管をつくり(図.画像参照)、さまざまな気体をさまざまな圧力で封入して、例の放射線を、電場と磁場のそれぞれを使って偏向させてみた。その詳細な調査から、トムソンはいくつかの結論に達した。まず、この放射線の正体は、負の電荷を粒子であるということ。また、希薄なガスのなかを原子線(原子サイズの粒子線)と比べてはるかに長い距離を飛ぶことから、この粒子はとても小さいに違いないということ。さらに、電場と磁場によって測定可能な偏向をさせられていることから、この量子の質量た電荷比(m/e)は小さいに違いないということ。ここでいう「小さい」とは、水素イオン(すなわち陽子、と現在ではわかっているが)の質量対電荷比に比較して小さいという意味で、トムソンの計算では、約1000倍は小さいはずだった。
この最後の発見について、トムソンは慎重にこう述べている。「この質量対電荷比の小ささは、質量が小さいせいかもしれないし、電荷が大きいせいかもしれないし、あるいはその両方のせいかもしれない」。これは現在わかっているように、質量が小さいせいである。電子の電荷の大きさは陽子の電荷の大きさとまったく同じだが、電子の質量は陽子の質量の2000分の1ほどの小ささなのである。
トムソンは1個の原子の大きさを知らなかった。しかし原子の大きさがどれだけあろうと、電子はそれよりずっと小さいはずだと思われた。現在では、電子はこれ以上小さくなりようがないほど小さい、つまり正真正銘の点状粒子であると見なされている。電子には大きさがない。そして現在わかっているかぎり、電子は内部構造を持たない。電子は「基本粒子」と呼ばれているもののひとつで、「複合粒子」ではない(ちなみに陽子はこちらに属する)。

しかし、質量があるのに大きさがない、電荷があるのに大きさがない、スピンがあるのに大きさがない――そんな粒子があるのだろうか? 大きさがないのにどうやって存在していられるのか?

この質問には、こう答えるしかない。量子物理学のもとでは、数学的な点として存在するものが、さまざまな物理特性を有しているのである。電子と光子のふるまいを非常にうまく説明している「量子電磁気学」(QED)という理論にしたがえば、電子が光子と相互作用をするとき、その相互作用は空間と時間のあいだにある一点において起こる。こうした相互作用において、電子は実際に生成されたり消滅させられたりするが、それはつねにある一点で起こる出来事なのである。
電子の大きさについては、量子物理学でもう少し説明ができる。量子物理学では「仮想粒子」と呼ばれるはかない粒子が絶えず生成されては消滅しているので、電子はつねに顔ぶれの変わる仲間と一緒に移動していることになる。
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とはいえ、最も基本的なレベルでは、電子は無次元の点のように見える。ただし物理学のあらゆる結論がそうであるように、この結論は暫定的なものだ。とりあえず実験にもとずいて確実に言えるのは、もしも電子に大きさがあるとしても、それは陽子よりも何千倍も小さく、原子より何億倍も小さいということだけである。現在の理論は電子を点として扱ってうまくいっている。しかし、いまはまだ表舞台に隠れているが、まもなく堂々と表舞台に出てきそうなのが、「弦理論」である。