じじぃの「科学・地球_456_量子的世界像・E=mc2は何をあらわしているのか」

図式でわかろう!E=mc^2の導出とその意味

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https://www.youtube.com/watch?v=NZFz7cdn_2o

アインシュタインの公式 E=mc2 の証明

   

アインシュタインの公式 E=mc2 の証明

この公式は極めて重要なので、アインシュタインは繰り返し証明しています。
この公式の証明は特殊相対性理論に基づいています。そのため別稿「アインシュタイン特殊相対性理論(1905年)」の知識が必要です。そちらをご理解の上でこの稿をお読み下さい。
http://fnorio.com/0161Einstein_E=mc2/Einstein_E=mc2.html

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

Ⅲ 量子世界の距離、時間、速さ より

E=mc2とは何をあらわしているのですか

1905年、アインシュタインブラウン運動を説明し、相対性理論を発表し、光量子仮説を提出したが、のちに間違いなく世界で最も有名な方程式となるE=mc2が初めて書かれたのもこの年だった。この式は、エネルギー(E)が質量(m)と等価であると言っている。だから等号でつなげられているのだ。つまり、質量はエネルギーに変換され(核分裂核融合の場合)、エネルギーは質量に変換される(加速器内で粒子が高エネルギーで衝突する場合)という意味だ。だが、それだけではない。これは質量とエネルギーが実際は同じものだという意味でもある。質量はエネルギーの塊にほかならなず、エネルギーには慣性(質量の決定的な特徴)がある。エネルギーは質量であり、質量はエネルギーなのである。

だが、そこにどうして光速の2乗(c2)が絡んでくるのだろうか。

物質の塊が質量とエネルギーを持つためには、運動する必要はないし、まして光速で動けるはずもない。アインシュタインの方程式に光速の2乗が出てくる理由を説明するために、しばし物理から脱線して、生地屋の話をさせてもらおう。もしあなたが1ヤード5ドルの生地を3ヤード買うとすると、あなたが支払う代価15ドルだ。方程式にすれば、C=NPである。あなたが支払う代価(C)は、ヤード数(N)に1ヤードあたりの値段(P)を掛けた数に等しい。代価はヤード数に比例している。もしあなたが考えを変えて、もとの2倍のヤード数の生地を買うことにしたとすれば、あなたの支払う代価も2倍になる。ここで(この例で言えば)いっこうに変わらないのがP、すなわち1ヤードあたりの値段である。Pは「比例定数」と呼ばれ、ヤード数Nを代価Cに変換する。この方程式の「本質」は、CがNに比例していることであり、この比例関数はC~Nと書かれる。比例定数のPはヤード数をドル数に変換する役割を果たしている。
同じように、アインシュタインの方程式におけるc2も比例定数である。この方程式の本質は、Eがmに比例していること、すなわちE~mであるということだ。比例定数c2は、キログラム(質量の単位)をジュール(エネルギーの単位)に変換する役割を果たしている。そしてc2は、日常的な単位で言えば、1キログラム(1kg)あたり9x1016ジュールという、とてつもなく大きな数である。1キログラムの岩が秒速10メートルで投げつけられているとすれば、この岩は50ジュールの運動エネルギーを持つ。もしあなたの頭に当たれば、大怪我になるようなエネルギーだ。しかし、この岩の内部には、その運動エネルギーの1000兆倍以上にも相当する9x1016ジュールのエネルギー、すなわち質量エネルギーが閉じ込められている。これを別の視点から見てみると、1キログラムの質量に閉じ込められているエネルギーは、広島に落とされた原子爆弾の放出したエネルギーより1500倍も大きいということになる。その爆発でエネルギーに変換されたのは1グラム以下の質量だったのである。
では、そのような質量からエネルギーへの変換は、原子核の領域でだけ起こるのだろうか。いや、そうではない。あなたがマッチに火をつけたときや、焚き火に薪を追加したときや、自動車のエンジンの回転速度を上げたときに、同じように質量からエネルギーへの変換が起こる。ただし、これらの例の場合は、質量の損失が全体できわめて小さいために測定するのが実質的に不可能なのである。現在でも、質量の保存(質量が増えも減りもしないこと)は化学の揺るぎない原理だ。しかし、つきつめて言えば、その原理は間違っている! エネルギーが(「発熱」反応によって)放出されるたびに、質量はいくらか減少している。そしてエネルギーが(「吸熱」反応によって)獲得されるたびに、質量はいくらか増加している。

c2がエネルギーと質量を結びつける比例定数であるという考えはなんとなくわかったとしても、どうして光の速さが質量とエネルギーの等価関係に関係しているのかはまだわからない――と思っている人もいるかもしれない。ごもっともである。その疑問に答えるには、まず、相対性理論では光速が空間と時間を結びつけることを知っていてもらわなくてはならない(速さとは、ある時間単位あたりの距離であることを思い出そう)。
アインシュタインは、それまでまったく別物と考えられていた空間(メートルなどで測られるもの)と時間(秒などで測られるもの)を、4次元時空という単一の概念にまとめた。もしも大昔の科学者が、この両者が同じものだと知っていたら、おそらく秒を距離の単位(約3億メートル)として採用するか、メートルを時間の単位(約3億分の1秒)として採用していただろう。しかし、そうはならなかったので、わたしたちはずっと空間と時間を別々の単位で測定している。わたしたちが空間と時間を単一の4次元構造にまとめるためのは、時間(t)に光速(c)を掛け算しなくてならない。すると、メートルで測られるctが、距離xと対等になる。
相対性理論ではこのほかに、質量とエネルギー、運動量とエネルギー、磁場と電場も同じものであることがわかっており、両者の換算には比例定数が必要で、そのいずれにも光速が含まれている。質量とエネルギーの場合、なぜ定数が光速ではなく光速の2乗なのかについては、大ざっぱに答えるなら、キログラムをジュールに変換するのはメートルの2乗と秒の2乗の組み合わせ(メートル2/秒2)が必要だからだ。
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粒子の世界では、c2を抜かして質量をエネルギー単位で測ることが普通である。したがって電子の質量は0.511MeVであり、陽子の質量938MeV、トップクォーツの質量は約172GeV(電子の質量の30万倍以上)だ。この慣習には、もっともな理由がある。質量からエネルギーへの変換も、エネルギーから質量への変換も、粒子のあいだでは普通に起こっていることだからだ。質量とエネルギーは絶えずかきまぜられている。たとえば不安定な粒子が崩壊するとき、その質量エネルギーの一部は崩壊生成物の質量となり、残りは崩壊生成物が飛散するときの運動エネルギーとなる。もともとの粒子のエネルギー」がどのように分割されるかは、粒子の種類によって大きく異なる。中性子が崩壊するときには質量の99.9パーセントが崩壊生成物の質量になるが、ミュー粒子が崩壊するときには、質量のわずか0.5パーセントだけが崩壊生成物の質量になる。加速器のなかで粒子と粒子が衝突するときも、たいてい質量とエネルギーのあいだで大きな変換がなされる。加速されている粒子が獲得する大量のエネルギーは、ほとんどの場合、新しい質量を生成するのに使われる。
ある場合には、粒子の質量の100パーセントがエネルギーに変換される。それは陽電子(反電子)が電子を出会って、ともに消滅すると同時に、両方の質量エネルギーがすべて質量ゼロの光子の運動エネルギーに変換される場合だ。「スタートレック」の宇宙船エンタープライズ号においては、対消滅した反物質が宇宙船の推進エネルギーを供給していることになっている。残念ながら、対消滅を利用する現実的な方策はないので、この動力源が実現されることはないだろう。