じじぃの「科学・地球_472_量子的世界像・不確定性原理とは何ですか」

Werner Heisenberg Biography

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uc6Se8UXWq8

Werner Heisenberg


Explainer: Heisenberg’s Uncertainty Principle

June 13, 2012 The Conversation
●Is it a Principle?
Heisenberg’s principle is not like that - it’s actually a consequence of something more fundamental. That thing is quantum mechanics, a theory that applies to all forms of matter and energy (as far as we can tell).
https://theconversation.com/explainer-heisenbergs-uncertainty-principle-7512

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

XⅡ 波と確率 より

不確定性原理とは何ですか

不確定性原理は、1927年に、当時26歳のヴェルナー・ハイゼンベルクが提唱した考えで、そのとき彼はこの原理のことをこう説明している。「位置が精密に決定されればされるほど、その瞬間の運動量は精密にはわからなくなり、逆もまた然りである」。この原理は位置と運動量だけでなく、時間とエネルギーなど、ほかの量の組み合わせにも適用される。要するにこの原理は、一方について正確に知れば知るほど、他方については正確に知ることができないのだと言っている。これを限界まで適用すると、一方の量を完璧な正確さで精密に知っている場合、他方の量については何もわからないということになる。

不確定性原理は量子物理学の核心だとも言われるが、それは、この原理に対応するものが古典物理学に見当たらないからである。古典的な物理学では、ある粒子の位置と運動量を同時に知ることができない理由などなく、その両方を正確に測定することに限界があるとすれば、それはひとえに技術上に問題なのだ。不確定性原理は、量子世界に特有のこの不確定性(あいまいさ)について、これ以上は小さくできないという限度を与えている。それが、かのプランク定数である。ここでもまた、あの量子物理学の根本的な定数が出てくるのだ(項目10 プランク定数とは何ですか で説明したことを思い出してほしい。もしプランク定数が仮説上ゼロに引き下げられたら、量子物理学は古典物理学に取って代わられ、もしプランク定数が仮説上もっとも大きな値にされたら、量子効果はもっと顕著になる。したがってプランク定数は、量子世界のスケールを決める定数なのである)。
不確定性原理を数式であらわすと、つぎのようになる。
   
  △x△p = ħ

または
  △t△E = ħ
   
これらの式の△は、「不確定性」(あいまいさ)をあらわし、各変数xが位置を、pが運動量を、tが時間を、Eがエネルギーをあらわす。右辺では、プランク定数(ここでは2πで割ったもの)が、量子力学に基本的に付随する不確定性の大きさを定めている(ただし測定過程そのものに関連して生じるかもしれない不確定性はのぞく)。これらの式の数式を考えれば、前述したハイゼンベルクの言葉が腑に落ちるかもしれない。

2つの量の積が定数であるなら、片方の量が小さくなった場合、必然的にもう片方の量は大きくならなければならないのだ。

実際、時間とエネルギーを組み合わせた不確定性原理の形式は、物理学者にとって有用なツールとなっている。一部の粒子はきわめて寿命を短く、半減期を直接測定することもできない。寿命が短いということは、言い換えれば、粒子がこの地球に存在している時間の不確定性がきわめて小さいということなので、この場合の△tは小さい。△tが小さければ、その粒子のエネルギーの不確定性は大きい(少なくとも量子基準では大きい)。そして粒子の――静止状態での――エネルギーは、粒子の質量そのものである。したがって寿命が短ければ短いほど、その粒子の質量の不確定性は大きくなる。この粒子の質量の測定を1回だけ行えば、ある値が得られるだろう。測定を何回も繰り返せば、いくつもの異なる値が得られ、その値の範囲が質量の不確定性をあらわす。項目42(素粒子はなぜ3世代しかないのですか)で説明したように、この質量の不確定性はZ0粒子の寿命を計算するのに用いられ、こうして質量測定から導かれた寿命を、理論的予想と比較することができるのである。