じじぃの「科学・地球_467_量子的世界像・散乱とは何ですか」

Fundamental Particles

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tTDHS64wJkk

図26

1個の光子のやりとりをともなう電子と電子の散乱。

   

図28

電子と陽電子対消滅をあらわしたファインマン図。

   

図34

ニュートリノ(おそらく太陽ニュートリノ)が中性子と相互作用して電子と陽子を生む。

TikZ-Feynman : how to do a feynman diagram of a beta decay?

LaTeX Stack Exchange
https://tex.stackexchange.com/questions/617907/tikz-feynman-how-to-do-a-feynman-diagram-of-a-beta-decay

アップクォーク

ウィキペディアWikipedia) より
アップクォークは、+2/3e の電荷を持つ最も軽いクォークであり、ダウンクォークとともに核子を作るクォークとなっている。

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『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

Ⅸ 相互作用 より

散乱とは何ですか

崩壊は1個の粒子の見に起こることが可能だし、たしかに普通はそうなっている。だが、たとえその粒子がほかの何物とも相互作用していないように見えても、じつはなんらかの相互作用――たいていは弱い相互作用が電磁相互作用が――を引き起こしているのだ。
散乱は崩壊とは区別される。2個の粒子が衝突すると、それらは互いに跳ね返ることもあれば、ともに消滅して別の粒子が生成されることもある。このような過程は、相互作用の結果であることが崩壊よりも明らかであり、最終生成物が最初の粒子と同じであろうとなかろうと関係なく、「散乱」と呼ばれる。厳密に言えば、散乱の結果として生じる粒子は、たとえ同じであっても必ず別の粒子である。
たとえば、図26を見直してほしい。2個の電子がぶつかって、2個の電子が飛び散っている。だが、交点A(左側線のくびれた点)で起こっていることは、量子論の数字にしたがえば、1個の電子が消滅して1個の電子が生成されているということだ。ここで消滅する粒子が出現する粒子と同じだと言うのは無意味だが、別の電子だと断言するのもやはり無意味だ。言えるのは、どちらも電子だということだけで、結局のところ電子はすべて同じなのである。頭がくらくらしてくるが、これをどう考えたらいいのだろう。数学に最も合致した考え方は、新しく生成された電子が、消滅した電子とは区別されると見ることである。
さきほど述べた散乱の定義にしたがえば、図28もやはり散乱過程を描いている。この図では、電子と陽電子が衝突して対消滅すると同時に、2個の光子が生成されている。もうひとつの散乱の例は、図34に示されているクォークがらみの散乱だ。電子ニュートリノ中性子と衝突して、電子と陽子が生まれている。反応式では、つぎのようになる。
   
  νe + n → e- + p
   
これはカナダのサドベリー・ニュートリノ観測所(SNO)で観測された過程である(項目41を参照。ニュートリノには質量があるのですか。ニュートリノ振動とは何ですか)。入射ニュートリノは、太陽からやってきたニュートリノだ。ターゲットの中性子は、重陽子のなかに収まって――ゆえに安定して――いる(実験室で単独の中性子がぶらぶらしていることはない。すぐに崩壊してしまうから)。したがって、ここで実際に起こっているのは、ニュートリノ重陽子に衝突して1個の電子と2個の陽子を生んでいるということだ。しかし陽子の1個は「傍観者」なので、この図からは外してある。図34に示されているように、この過程ではW+粒子が力を伝える媒介者として働いている。W+粒子がA点(3本線右側線のくびれた点)で生成されたところで、ニュートリノが消滅して電子が生成される。そしてW+粒子がB点(右側の電子線上くびれた点)で消滅すると、そこでダウンクォークアップクォークに変わる(置き換えられる、と言ってもいい)。