じじぃの「歴史・思想_619_宮本弘曉・日本の未来・AIに取って代わられる職業」

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「49%の日本人が機械にとって代わられる」10年後に自動化される職業、生き残る職業10選 技術革新で日本の女性が仕事を失う

2022/02/11 PRESIDENT Online
図表1は、日本で自動化される可能性が高い職業と低い職業を示したものです。
自動化の可能性が高い仕事は、コンピュータが比較的得意としている情報管理や処理に関連する作業が多いものとなっているのに対して、自動化の可能性が低い仕事は、創造的作業を伴っていたり、複雑な社会的交流が必要とされる作業を必要とするものとなっています。
https://president.jp/articles/-/54502?page=2

101のデータで読む日本の未来

宮本弘曉(著) PHP新書
「日本人は世界経済の大きな潮流を理解していない」。
国債通貨基金IMF)を経て、現在は東京都立大学教授を務める著者は、その結果が日本経済の停滞を招いたと語る。
そこで本書では、世界と日本を激変させる3つのメガトレンド――①人口構造の変化、②地球温暖化対策によるグリーン化、③テクノロジーの進歩について、その影響を各種データとファクトから徹底的に検証。日本人が勘違いしている「世界経済の変化の本質」を理解した上で、日本社会の現在、そして未来に迫る。

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『101のデータで読む日本の未来』

宮本弘曉/著 PHP新書 2022年発行

第4章 日本再生の鍵を握る「労働の未来」 より

メガトレンドの変化が労働に与える影響

労働を必要とする経済主体は企業です。企業の第1の目的は人々を雇用することではなく、財やサービスを消費者に販売し利益を得ることです。そのために、企業は労働者を雇ったり、設備投資などを通じて、財やサービスの生産を行なうのです。
つまり、企業が労働者を雇うのは生産活動を行うためです。これは、生産活動がなければ雇用も生まれないことを意味します。それゆえ、雇用は生産な派生需要と言われます。
雇用が生産の派生需要であれば、労働は企業の生産活動に左右されることになります。つまり、労働市場を取り巻く経済・社会環境が変化すれば、それに伴って雇用のあり方、そして、労働市場は変化せざるを得ないということです。
今、日本の雇用、働き方が変わりつつあります。いや、変わらなくてはいけません。それは日本経済を取り巻く環境が変わっているからです。つまり、メガトレンドが変化しているからです。
しかしながら、日本の雇用はこれまでメガトレンドの変化するように変革がなされてきませんでした。その結果、現在、労働に関わる問題が数多く発生しています。
また、今後は、高齢化を伴う人口減少、テクノロジーの進歩や経済のグリーン化がますます進みます。労働市場を取り巻く環境が大きく変わる中、日本人の労働、働き方はどうなるにでしょうか? ここでは、日本の雇用が現在、抱える課題とその未来をメガトレンドの変化に注目しながら考えていくことにしましょう。

テクノロジーの進歩は働き方をどう変えるか

まず、テクノロジーの進歩が労働に与える影響を考えてみましょう。技術革新により、人間がこれまで携わってきた作業が軽減されたり、置き換えられたりしています。
技術革新と雇用の問題は、1810年代、織物工業の労働者が機械を破壊するなどした「ラッダイト運動」に遡ります。これは産業革命による機械の普及が、人々の仕事を奪うのではないかという懸念から発生したものです。1930年代に経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、新技術は人々から雇用を奪い、技術的失業が増えると警告しました。
その後の技術進歩も目覚ましく、人々の働き方を変えてきました。例えば、1970年代以降は、銀行窓口の仕事がATM(現金自動支払機)に置き換えられたり、空港のカウンター係の仕事が自動チェックイン機に置き換えられなど、人手を要した仕事が自動化によって機械に代替されてきました。
このように過去を振り返ってみると、たしかに新しい技術は人々から特定の職を奪ってきました。しかしながら、経済全体でみると、技術革新は雇用を減らし、技術的失業を増やしてはいません。
しかし、最近では雇用へのマイナスの影響が懸念されています。イギリスのオックスフォード大学のカール・フレイ博士とマイケル・オズボーン准教授は、今後10~20年間に、技術進歩により、アメリカ国内の労働者の47%が仕事を機械にとって代わられるリスクが高いとし、雇用の未来について世界で研究ブームが発生しました。
日本を分析対象としたものとしては、野村総合研究所による研究があります。野村総合研究所は2015年に前述のフレイ博士とオズボーン准教授の研究と同じ手法で、国内601種類の職業について、それぞれAIやロボット等に代替される確率を試算しています。
分析結果は、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業が機械によって代替される可能性が高いとしています。

図表(画像参照)は、日本で、自動化される可能性が高い職業と低い職業を示したものです。

自動化の可能性が高い仕事は、コンピュータが比較的得意としている情報管理や処理に関連する作業が多いものとなっているのに対して、自動化の可能性が低い仕事は、創造的作業を伴っていたり、複雑な社会的交流が必要とされる作業を必要とするものとなっています。
これに対して、OECDは2016年の研究報告で、機械に置き換えられる可能性が高い仕事の割合はアメリカで9%、OECD平均で9%、日本では7%としています。
仕事が機械によって将来どの程度置き換えられるか、という予想は、このように研究ごとに差があり、割り引いてみる必要があります。なぜなら、こうした予測は試算方法によって数字が大きく変わるからです。
また、自動化されるリスクが実際にAIやロボットに置き換えられるという保証はありません。さらに、技術革新は、生産性の向上やコストダウンを通じて、企業の利益を高め、その結果、労働需要を引き上げる可能性があります。現時点では想像しえない仕事が技術革新によって生み出される可能性もあります。
技術革新が雇用全体に与える影響を分析した実証研究では、長期的に生産性の成長率(技術革新の尺度)と失業(雇用の尺度)に正の関係、つまり、「技術革新が進めば失業が増える」という関係を見出すことは難しく、むしろ、技術革新は失業を低下させる可能性が高いとしています。実際、図に示したように、アメリカでは生産性成長率と失業率の間にはマイナスの関係があることがわかります。
もっとも短期的には、機械に置き換えられた業務にそれまで備わっていた労働者が余剰となり、退職をせざるを得ない場合には、雇用にマイナスの影響を与える可能性は否定できません。