解説:党人事・経済・台湾情勢、独裁国家となった中国の行方【山川龍雄のニュースの疑問】(2022年10月28日)
『夕刊フジ』2022年10月28日発行
中国 共産党大会 胡錦濤 排除の真相 独裁体制 誕生の瞬間 より
【執筆者】峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員、青山学院大学客員教授)
習近平のだまし討ち
中国で「異例の3期目」となる習近平指導部が発足した。第20回共産党大会を受け、党の最高指導部メンバーである政治局常務委員7人(チャイナ・セブン)は、習総書記(69、国家主席)の側近や子飼いで固められた。党中央軍事委員会の人事も、習氏への忠誠度に加え、台湾を担当する地域での経験を重視した「台湾シフト」が目立った。22日の党大会閉会式では、胡錦濤前総書記(79)が途中で退場させられる衝撃的な映像が全世界に流れた。歴代トップにも人事名簿を事実上隠す「だまし討ち」が行われたという報道もある。一体、北京で何が起こったのか。キヤノングローバル戦略研究所主任研究員で、青山学院大学客員教授の峯村健司氏が「胡錦濤の乱」の真相に迫った。
習総書記の左隣に座っていた胡前総書記が途中で退席した。外国メディアはその一部始終を報じ、さまざまな憶測を呼んだ。
去り際に胡氏は興奮気味に習氏に語り掛けたが、表情を変えず軽くうなずくだけだった。
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このファイルには、何が書かれていたのだろうか。前出の党関係者が解説する。
「ファイルには、この日の朝に選出された中央委員の名簿が入っていた。名簿には胡氏が推薦したメンバーがほとんど入っていなかった。これを見た胡氏は、自らの意に反する最高指導部人事になることを察し、異議を唱えようとしたのだ」
中央委員は約9500万人の共産党員の中から選ばれた205人だ。中国の重要政策について話し合うほか、政治局員と政治局常務委員を選ぶ権限を持っている。つまり、中央委員のメンバーの顔触れが、最高指導部の人事の動向のカギを握るのだ。
胡氏が意中の後継者として推薦していたのが、胡春華・副首相(59)だった。2人は同じ共産党のエリート集団「共産主義青年団(共青団)」出身だ。今回政治局員から常務委員になるのは確実視されていたが、中央委員に降格させられたのだ。
代わりに抜擢(ばってき)されたのが、過去に習氏と勤務したことのある人物ばかりだった。