じじぃの「カオス・地球_57_習近平独裁新時代・序に代えて・歴史の分岐点」

習近平は独裁者”バイデン大統領発言に中国強く反発「外交礼儀に著しく背く」 対話の機運高まる中で|TBS NEWS DIG

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2F9v8ZNp3Ic


習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン

【目次】

序に代えて――歴史の分岐点となった第20回党大会

第1章 江沢民の死と白紙革命
第2章 習近平「平和外交」の正体
第3章 コロナ政策転換でも光が見えない「新時代」経済政策
第4章 全人代から始まる新たな粛清
最終章 習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウンのボタン

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習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』

福島香織/著 かや書房 2023年発行

序に代えて――歴史の分岐点となった第20回党大会 より

中国共産党の第20回党大会が2022年10月16日に開幕し、22日に閉幕した。この党大会を経て習近平政権の第3期目という異例の独裁新時代が始まった。

これは習近平が鄧小平以降、確立されていた党内ルール、共産党指導者の地位は2期を超えないという掟を破ったもので、鄧小平および鄧小平指名の江沢民胡錦濤政権を含む時代を「鄧小平王朝」と呼ぶとしたら、鄧小平王朝の終焉であり、そして習近平王朝の確立を宣言するものであろう。鄧小平王朝時代を官僚集団による集団指導体制時代とすると、習近平新王朝は毛沢東回帰的な個人独裁であり、恐怖と暴力による専制時代の始まりだと考える。

文化大革命の終了で毛沢東独裁時代が終了し、毛沢東時代に疲弊した中国を鄧小平が集団指導体制と改革開放政策で立て直そうとした。このとき、米国や日本を含む西側社会の支援を得て、国際社会の仲間入りをしようとしてきた中国は、その路線を引き継ぐ江沢民胡錦濤時代を経て、夏季五輪を成功させ世界第2位の経済大国になり、国際社会において大国の責任を求められるようになった。
だが、習近平政権が2012年に始まると、この路線が徐々に転換を見せ始めた。改革開放ではなく、一帯一路構想による中国経済圏の確立をめざし、「中華民族の偉大なる復興」というスローガンを掲げ、中国が主導する国際社会の枠組み構想を打ち出し始めた。既存の西側民主主義国家が主役にいた国際社会に対し、中国式現代化モデルを提示し、途上国、新興国に対し、現代化=民主化ではないと訴え、中国のような専制国家によるグローバル統治が現代化や発展の選択肢としてありうると言い始めた。習近平「独裁新時代」の始まりは、つまり中国国内の独裁強化だけでなく、国際社会の独裁化に向けた動きの始まりと言える。

ただ、習近平「独裁新時代」は決して盤石ではない。たとえば党大会で読み上げた政治活動報告は5年前の第19回党大会よりも4ページも長く72ページもあったが、30ページ分を端折られて全文は読み上げられなかった。第19回党大会のときは4時間もかけて全文を読み上げたのだが、第20回党大会は1時間45分ほどの読み上げ時間だった。

なぜ端折ったのか。1つには習近平は4時間も原稿を読み上げる体力がなかったのではないか、と言われた。習近平は脳動脈瘤などの持病を抱えており、歩く時も時折ふらつきを見せている。手術が必要と言われているが、まだしていないとも言われている。本人が臆病であることに加え、権力基盤固めの厳しい闘争によって入院、静養する時間がなかったからだという。
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新華社ツイッターの英文公式アカウント」を通じて、胡錦濤の退席は健康上の問題で、別室で休息をとっていると報じた。だが、この一連の動きに世界が異様なものを感じたからこそ、世界の各メディアがいろいろと憶測を報じた。

その憶測とは、胡錦濤は中央委員名簿に李克強、汪洋が残らず、政治局名簿に胡春華が残らず、共青団派が徹底的にパージされたことをしらされておらず、閉幕式中に図らずも名簿を目にして、抗議の声を上げそうになった。中央委員名簿の採決の際に、反対に挙手する可能性があった。栗戦書が説得を試みているのを横目で見ていた習近平が、自分のボディガードに命じて胡錦濤を強制退席させたのではないか、というストーリーだ。

もう1つのストーリーがあり、こちらの方が、信ぴょう性がある。この直後に裁決される党規約改正案に胡錦濤が反対票か棄権票を入れかねないと習近平が懸念し、退席させたという話である。反対票や棄権票が1票くらい入っても、改正案が可決されることは間違いないのだが、完璧な独裁を望む習近平は、胡錦濤が党規約改正に反対票(棄権票)を入れるのが我慢ならなかった、という。

理由はともかく、この胡錦濤退場劇は、国内外メディアの目前であえて行われたということが重要だ。現総書記が前総書記を問う大会の採決前に退席させるという光景を繰り広げたことに、政治的に意味がある。
中国共産党は激しい権力闘争をずっと続けてきたが、対外的には党の一致団結の建前を崩さず、また長老に対する敬意を崩さずにきた。だが、習近平はあからさまに共青団派をパージし、共青団派長老を邪険に扱ってみせた。これは習近平新独裁は、鄧小平以来の共産党政治の伝統や建前と完全に決別し、また共青団が象徴する鄧小平路線、改革開放路線との決別をはっきり示したということだろう。

習近平「独裁新時代」とは、共産党が党内では異なる意見を合議でまとめて対外的には団結を見せる伝統的な集団指導体制から、習近平個人がすべてを差配し指導し、イエスマンの部下たちはそれについていくだけで、もし習近平が気に入らなければ、それが対外的にどう見えようと平気で粛清、パージしていく恐怖政治体制だ。

こういう体制では、おそらく中国経済は今後も低迷を続けるであろう。経済や外交や民間の文化交流などを通じて、多少なりともあった西側社会と分かり合える部分も消失していくだろう。
パンツを穿(は)けないほど貧しくなっても核兵器はつくるのだ、t対外的に威嚇し、周辺国と戦争・紛争を起こしていた時代、党内ではひっきりなしに粛清を続けていた文革時代のような混沌の国に後退していくかもしれない。

気がつけば、すでに長老も官僚も習近平への不満不服を抱え、人民の多くも習近平を独裁者、売国奴、裸の皇帝と思っていることを隠さなくなっている。これは「独裁新時代」が始まったとも言えるが、悪政を覆そうとする民衆革命が起こる条件が整ったとも言えないか。

2022年秋、習近平「独裁新時代」が始まった。だが、これは中国共産党体制の崩壊のカウントダウンが始まったとも言えないか。それを示す兆候を、これから1つずつ挙げていこう。