じじぃの「科学・地球_369_デマの影響力・ソーシャル・メディア・ハイプ・マシン」

Watch This Russian Hacker Break Into Our Computer In Minutes | CNBC

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=CV39QzFpJx4

ロシアのハッカー集団が米大統領選の候補者を標的に攻撃


ロシアや中国からサイバー攻撃、トランプ・バイデン両陣営狙う 米マイクロソフトが警告

2020年9月11日 BBCニュース
マイクロソフトによると、2016年米大統領選に向けた民主党の選挙キャンペーンに介入したとされるロシアのハッカーが、再び関与しているという。当時、民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏の陣営の電子メールがハッキングされ流出した。
マイクロソフトは「外国の活動グループが(大統領選を標的としたサイバー攻撃を)強化しているのは明らかだ」と述べた。
同社声明には、「ストロンチウム」と呼ばれるロシアのハッカー集団がこれまでに200以上の組織を標的に活動しており、その多くは米与党・共和党と野党・民主党に関連しているとある。
https://www.bbc.com/japanese/54097462

『デマの影響力――なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』

シナン・アラル/著、夏目大/訳 ダイヤモンド社 2022年発行

第1章 ニュー・ソーシャル・エイジ より

人間は昔から今にいたるまで社会的な動物である。狩猟採集生活をしていた時代から、私たち人間は他者と情報を交換し合い、他者と協力、協調してきた。しかし、現代は少し違ってきている。この10年間、私たちは遠い過去からつないできたコミュニケーションの火にハイオクガソリンを注ぎ込むようなことをしてきた。世界中で大量の情報を送り合える多機能な装置を作りあげてからだ。その装置のおかげで、遠くにいる人たちの意見や行動なども瞬時に伝えられるようになった。私が「ハイプ・マシン[Hype Machine:誇大宣伝機械というような意味]」と名づけたその装置は、世界規模の通信ネットワークで私たちをつなぎ、1日に何兆という数のメッセージを運ぶ。ハイプ・マシンは私たちに様々なことを知らせ、楽しませ、考え方に影響を与えて行動を探る。そういうアルゴリズムによって動いている装置である。

――ハイプ・マシン

今、地球上では毎日、一時も休むことなく、大量のデジタル信号が行き交じっている。それは誰かが自分の近況を知らせるツイートかもしれないし、最新のニュース記事かもしれない。フェイスブックの投稿もある(フェイスブックには「ポーク」という軽い挨拶の機能や、自分の居場所を知らせる「チェックイン」という機能もある)。投稿をシェアすることもあれば、友達候補を推薦されることもある。広告や通知も無数に流れている。ソーシャル・メディアへの他人の投稿を評価することもあるし、ニュース・メディアや広告主に意見を送ることもあるだろう。ともかく多数の人たちが常に大量の情報を送受信し合っているのだ。
フェイスブック、スナップチャット、インスタグラム、ユーチューブ、ツイッターなどはモバイル・デバイスを持っていれば、いつでも利用することができる。ソーシャル・メディアはとにかく、人間どうしを効率よくつなぐようにできている。そして、人と人との情報のやりとりがさかんになるように作られているのだ。流れる情報は、それぞれの人に合ったものになるよう調整されている。そのため、誰もがますます熱心にソーシャル・メディアを利用するようになる。
ただ、問題は、情報を意図的に改変することがあまりに容易だということだ。現代のように、ソーシャル・メディアによる人々の結びうきが過剰に強くなった時代には、情報の操作によって大勢の意見を意図的に操作することや、社会の雰囲気を短期間で意図的に変えることも比較的容易にできてしまう。ソーシャル・メディアをうまく利用すれば、多くの人々の日々の意思決定、行動、関心の方向などを思いどおりに操作することもできるのだ。私は、こういう今の時代を「ニュー・ソーシャル・エイジ」と名づけた。
驚くべきことに、15年前には、現在のように大量に行き交じっているソーシャル・メディアの情報は、まだ存在すらしていなかったということである。わずか15年前、人間どうしをつなぐ手段は、電話、ファックス、eメールくらいしかなかった。今ではいくつものソーシャル・メディアが人間をつないでいるが、それがどれだけ人間を変えているかをよく知らずに生きている人がほとんどだ。フェイク・ニュースは、真実を伝えるニュースよりもはるかに速くネット上で拡散されるが、はたしてそれはなぜなのか。たった1つの嘘のツイートによって、数分のあいだに株式市場から約1400兆ドルが消失してしまったのはなぜなのだろうか。フェイスブックアルゴリズムをほんの少し変えただけで、2012年のアメリカ大統領選挙の結果に大きな影響を与えたということもあった。2016年のアメリカ大統領選挙は、ロシアのソーシャル・メディアの操作によって結果が変わったとも言われる。イタリアのヴェネツィアのランナーたちが、自分たちのランニング記録をソーシャル・メディアに投稿したら、カリフォルニアのヴェニスのランナーの記録が向上するということもあり得る。ソーシャル・メディアには破壊的な力がある。「ハイプ・マシン」がこれほどの影響力を持ち得ているのははたしてなぜなのか、それをよく考えてみる必要があるだろう。
ハイプ・マシンの発達、成長によって、人間は依然よりもはるかに相互依存を強めるようになった。
    ・
危険のない素晴らしいニュー・ソーシャル・エイジを実現するには、政治家、ソーシャル・メディア企業、一般のユーザーの三者が、新たな社会秩序をどのようなものにすべきかを慎重に考えなくてはいけないだろう。必要なものは少なくとも4つある。まず、資金だ。資金を確保するのは、人が資金をだしたtくなる動機が必要になる。ニュー・ソーシャル・エイジをより良いものにすることが金銭的利益につながるようなビジネス・モデルが必要だろう。ソーシャル・メディアが不適切な動きをしないよう制御するコードを書く必要もある。また、一般のユーザーのあいだには、ソーシャル・メディアをいかに使うべきかという規範を確立するべきだろう。そして、ソーシャル・メディアの悪用を防ぐ法律も整備しなくてはならない。プライバシーと言論の自由のあいだのバランスを取り、偽情報の蔓延を防ぐ、民主主義を守りつつ、イノベーションを進めていける、それが可能な体系的な方法を考える必要がある。困難なことであるのは間違いない。しかし、ハイプ・マシンの私たちの生活への影響の大きさを考えれば、この責任から逃げるわけにはいかない。