じじぃの「歴史・思想_606_プーチンの正体・ネット世論操作・敵の敵は味方」

Amnesty International has 'really lost' its focus after Ukraine report: Danby

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https://www.youtube.com/watch?v=tfeD0olR3-U

プーチンロシア正教】『ロシア 中国 イスラムの共通点』

最新1/11(水)長谷川幸洋高橋洋一のNEWSチャンネル 259
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https://www.youtube.com/watch?v=WPf7-otVTd8

壁に描かれたイラン国旗。テヘランにて


イラン、窃盗犯の右手の指4本を切断 アムネスティが非難

2022年7月30日 AFPBB News
AFP】イランで27日、窃盗犯が右手の指4本を切断される刑に処された。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が29日、明らかにし、「言語に絶するほど残酷な刑罰だ」と非難した。
https://www.afpbb.com/articles/-/3416966

プーチンの正体』

黒井文太郎/著 宝島社新書 2022年発行

まえがき より

2022年2月24日、プーチンがロシア軍にウクライナ侵攻を命じ、侵略戦争が始まった。しかし、このプーチンの「狂気」は、なにも急に生まれたわけではない。彼自身が書いたり語ったりしているが、もともと彼にはウクライナ征服の願望があった。その機会を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていたのだ。
ただし、現代の世界では、あからさまな侵略は容易なことではない。国際社会の反発は当然予想されるし、戦争を勝ち抜く力も必要だ。プーチンはその機会をじっと待っていたのである。

第3章 黒い独裁者の正体 より

中央政界に進出し3年で首相に

こうしてFSB旧ソ連KGBの流れをくむ諜報機関)長官の椅子を得たことが、さらなるプーチンの政治家としての飛躍に繋がった。また、エリツィン大統領の汚職疑惑を捜査していたユーリー・スクラトフ検事総長がスキャンダルで失脚した事件でも、その失脚に手を貸している。
その功績からエリツィン大統領の信頼を獲得すると、1999年8月に首相代行、そしてすぐに首相に指名された。当時、エリツィン大統領は重度のアルコール依存症で職務がおぼつかなくなっており、事実上、政府はプーチンが采配することになった。
このあまりのスピード出世は、前述したように彼がエリツィン大統領の信頼を得たことが大きい。プーチンがモスクワに移ったのは43歳で、中央政界ではまったく無名の男が、あっという間に46歳で次期最高権力者に上り詰めたのだ。

第5章 フェイクニュースで世界を分断 より

米大統領選でのネット世論操作

プーチン政権は”情報”を武器にしている。とくにフェイク情報を拡散し、それで”西側”の世論を誘導し、分断を扇動する。
そうしたロシア情報機関の工作がクローズアップされたのが、2016年の米大統領選だった。この選挙でロシアはリベラルでロシアに批判的なヒラリー・クリントン候補を落選させるため、大規模なネット世論操作工作を実施したのだ。
クリントン候補を落選させるということは、当然ながらトランプ候補を当選させるということだが、ここでロシアが巧妙なのはトランプ候補に有利な情報ではなく、徹底してクリントン候補に不利な情報を拡散したことである。現在のSNS社会では、マイナスな情報こそが人々に大きな影響を与えるのだ。
ロシアがトランプを当選させるために不正に米大統領選に介入した疑惑、なかでもトランプ候補陣営がロシアと裏で結託していたのではないかという疑惑は、のちに「ロシア・ゲート」疑惑と呼ばれた。

ロシア、中国、イランが米国批判で連携プレー

2020年5月25日、米国ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性が首を白人警官に押さえつけられて死亡する事件が発生。それをきっかけに全米で黒人差別反対の大規模なデモが発生した。この時、米国の「仮想敵国」がここぞとばかりにネット上で米国批判を展開している。とくにロシア、中国、イランの3ヵ国だ。
中国はこの件では、米国が自国でデモを鎮圧しながら、香港問題では中国を批判するという二重基準を「偽善だ」と印象づける情報発信を主に仕掛けた。
中国はコロナ問題では、米国政府の信頼性を損なうような煽動的な情報発信を、拡散のために大量作成したボット・アカウントなども駆使してSNSで展開していることがわかっているが米国の反人種差別デモに対しては、おそらくそんな裏工作をせずとも、十分に米国社会の分断を煽れると判断しているのだろう。フェイク情報工作よりも、ストレートにデモ騒乱の情報を拡散することに、ほぼ徹していた。
イランも米国批判を繰り広げたが、ペルシャ語による発信が非常に多かった。対外的に利用しようというより、まずは国内に向けて「米国もこんなにひどい」と宣伝したかったのだと思われる。内容はほとんどが、2019年11月にイラン当局が国内デモを実弾で弾圧し、数百人を殺害したことを米国に避難されたことへの意趣返しになっていた。その点では、香港問題での自国への批判を逸らそうとした中国に傾向は似ていた。
こうした中国やイランの米国政府批判の情報発信と比べて、ロシアは独特の動きを見せた。米国のデモ賛成派と反対派の双方を扇動したのである。
たとえば『スプートニク』は2020年6月1日、米国社会が暴力と人種差別の上に成り立っており、白人至上主義者のテロはテロと呼ばれず、反人種差別主義者がテロリストと呼ばれる異常な国だと指摘し、トランプ大統領を人種差別主義者だと罵倒する記事を掲載した。
また、2016年の米大統領選での大規模なフェイク情報のSNS工作で知られる前出のネット工作機関「インターネット・リサーチ・エージェンシー」(IRA)に関連するサイト「The USA really」も同日、トランプ大統領を「デモの間、ホワイトハウスの地下壕に逃げ込んでいた臆病者」と揶揄する記事を掲載した。
ネットメディアだけではない。ロシア政府自身も米国批判に余念がない。たとえば在米ロシア大使館は2020年6月1日に公式ツイッターで、米国の警察がマスコミ記者を攻撃・抑圧したことを非難した。ロシア本国では、プーチン政権に批判的な記者の暗殺・変死が頻発しているが、そんなことは棚に上げての強い非難だ。
こうして米国政府とトランプ大統領を攻撃したかと思うと、他方では同日、もうひとつの宣伝メディアである「RT」が「暴力を扇動し、デモ騒動を民主党が有利になるよう利用している」とオバマ前大統領を非難した。全方位的に避難することで、米国社会の分断を煽るとともに、ロシア社会の優位性を印象づける作戦だろう。
さらに「RT」はとくにスペイン語版で、米国の人種差別を強調する攻撃的な記事を量産した。これは米国内のヒスパニック系住民を扇動する効果がある。

英語記事の量産で対外向けに宣伝活動

こうした政府系メディアに限らず、ロシアでは米国でのデモ騒乱に言及したネット記事が数多く書かれた。しかし、ロシアのネット媒体に対するロシア政府の監視は強力で、こうしたネット記事の多くもロシア当局の意向が強く反映される。
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ここで興味深いのは、ロシア、中国、イランの3ヵ国が、米国の反人種差別デモを利用して「自分たちよりも米国のほうがひどい」との印象を強めるような情報発信を、互いに拡散し合っていることだ。
たとえば、ロシアの「RT」は2020年5月29日の番組内で、「米国政府が香港のデモ参加者を自由の戦士と呼ぶ一方で、米国のデモ参加者を凶悪犯と呼んでいる」と非難した。これはまさに中国当局の主張と通じる。これに対し、中国外務省の華春瑩報道局長は同31日、自身のツイッターでこの「RT」の動画をリンクした。
また、同5月30日には、ロシアのポリャンスキー国連次席大使も、米国政府の香港問題との二重基準を非難するツイートを発信。これを中国外務省の趙立堅・副報道局長がツイートした。さらに、中国の新華社は5月31日、デモ中の記者に対する米国の警察の横暴を批判したロシア外務省の声明を掲載した。
イランに対してもロシアは援護射撃をしている。たとえば、『スプートニク』は同5月29日、米国を批判したハメネイ最高指導者のツイートを大きく紹介している。

こうした連携プレーは、つまりは「敵の敵は味方」という流れだろう。3ヵ国はそれぞれ政府が自国民を弾圧しており、さらに国外でも人権侵害に深く関与している。3ヵ国はそれを米国にさんざん非難されてきたが、米国でのデモ騒動を利用して、米国での人権問題をクローズアップすることで、自分たちの人権抑圧への非難を弱めたいという共通の狙いがある。要するに、「ならず者国家」たちが互いに利用し合っていたわけである。