じじぃの「科学・地球_371_デマの影響力・ソーシャル・メディア・フェイスブック」

Donald Trump: Facebook and Twitter restrict the president’s accounts - BBC Newsnight

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=1G4D6s4nHxg


世界アプリランキング:Facebook系が上位を席巻、後発ながらTikTokが大躍進

2019年12月21日  36Kr Japan
●後発ながらTikTokが大躍進
2010年以降の10年間のランキングをみると、ランク入りしたアプリのほとんどがメッセンジャーSNSで、トップ10のうち7個を占めている。
Facebook関連アプリが上位を席巻しており、1位がFacebook、2位がFacebook Messenger、3位がWhatsApp Messenger、4位がInstagramだ。また、中国発の短編動画アプリTikTokが7位に入った。
https://36kr.jp/42897/

『デマの影響力――なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』

シナン・アラル/著、夏目大/訳 ダイヤモンド社 2022年発行

第1章 ニュー・ソーシャル・エイジ より

人間は昔から今にいたるまで社会的な動物である。狩猟採集生活をしていた時代から、私たち人間は他者と情報を交換し合い、他者と協力、協調してきた。しかし、現代は少し違ってきている。この10年間、私たちは遠い過去からつないできたコミュニケーションの火にハイオクガソリンを注ぎ込むようなことをしてきた。世界中で大量の情報を送り合える多機能な装置を作りあげてからだ。その装置のおかげで、遠くにいる人たちの意見や行動なども瞬時に伝えられるようになった。私が「ハイプ・マシン[Hype Machine:誇大宣伝機械というような意味]」と名づけたその装置は、世界規模の通信ネットワークで私たちをつなぎ、1日に何兆という数のメッセージを運ぶ。ハイプ・マシンは私たちに様々なことを知らせ、楽しませ、考え方に影響を与えて行動を探る。そういうアルゴリズムによって動いている装置である。

第7章 過剰な社交(ハイパーソーシャライゼーション) より

ソーシャル・メディアとその他のメディアの違いは、ソーシャル・メディアの場合、私たちは広告による直接の説得にのみ影響を受けとるわけではないということだ。それだけではなく、自分の友人、知人、群衆からの社会的信号、そしてその幾分耳障りな残響によっても揺れ動くことになる。それは、ハイプ・マシンの影響を増幅、強化し、拡散させる。たとえば、2010年のアメリカの中間選挙では、そうしたソーシャル・メディアの直接、間接の影響が顕著に表れた。
フェイスブックは2020年6月、同社の歴史でも最大規模の投票者動員活動を実施すると発表した。なかでも重要だったのは、フェイスブックとインスタグラムのトップ両面に、不在者投票、郵便投票の方法を説明する動画を掲載したことだろう。フェイスブックは2010年にも同様の活動を実施したが、その細かい内容は2020年とは異なっていた。2010年11月2日、アメリ中間選挙の投票日に、フェイスブックは、ニュースフィードにどの程度、選挙を動かす力があるかを見るための実験を行なった。その日、18歳以上のユーザー6100万人が、ニュースフィードで投票を呼びかけるメッセージを見ることになった。メッセージには「今日は投票です(Today is Election Day)と書かれ、「あなたの投票所はここです(Find your polling place)というリンクも設けられていた。さらに、友達に自分が投票したことを知らせるための「投票済み」(I Voted)ボタンもあった。画面の上のほうには、何人のフェイスブック・ユーザーがすでに「投票済み」ボタンをクリックしたかを知らせるカウンターも作られていた。
ただし、全員がまったく同じメッセージを見たわけではない。メッセージにはいくつか種類があったが、誰にどれが表示されるかはランダムに決定された。なかには、単に今日が投票日であることを知らせるだけのあっさりしたメッセージを見た人もいた。かと思えば、今日が投票日だと知らせるだけでなく、それに加えて友達のなかですでに「投票済み」ボタンを押した人がランダムに6人選ばれ、個々のプロフィール写真が表示される、という一種「社会的」なメッセージを見た人もいた。なかには選挙に関するメッセージが一切、表示されない人もいた。
今日が投票日であることを知らせるメッセージを見た人と、そうでない人の行動を比べれば、フェイスブックは、自分たちの直接的なメッセージにどのくらい有権者を動員する力があるかを推定することができる。また、社会的なメッセージを見た人とそうでない人の行動を比べれば、友達の行動にどの程度、有権者を動員する力があるかを推定できる。フェイスブックでは実際に、対象となるユーザーの行動からメッセージの影響力を分析したのだが、その結果は驚くべきものだった。
フェイスブックのニュースフィードの1つのメッセージには、なんと、選挙への投票者を34万人も増やす力があったとわかった。メッセージは投票率を0.6パーセント押し上げたのだ。よく考えてみてほしい。ソーシャル・メディアのたった1つのメッセージである。それを表示するコストは限りなくゼロに近い。にもかかわらず、中間選挙への投票者を34万人も増やしたのだ。
フェイスブックは、2012年の大統領選挙でも同様の実験をした。この時は1500万人の有権者にメッセージを見せた。中間選挙とは違い、大統領選挙のような「一発勝負」の選挙では、投票を呼びかける運動がほかにも多く行われるため、フェイスブックのメッセージの影響力がどうしても低下する。それでも、メッセージには、投票者を27万人も増やす力があった。投票率を0.24パーセント押し上げたことになる。
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フェイスブックは、社会的メッセージには、受け取った本人以外への波及効果もあると見ている。社会的メッセージを受け取った人たちは、その友達の行動に影響を与えるということだ。友達本人は何のメッセージを受け取っていなくても、メッセージを受け取った人から影響を受けて投票行動を変える。しかも、そういう人は多数いる。近しい友達のなかに社会的メッセージを受け取った人がいるフェイスブック・ユーザーは、そうでないユーザーに比べ、投票率が0.224パーセント高くなるという。本人はメッセージを受け取っていなくても、友達が受け取っただけで投票する可能性が高まるのである。
ソーシャル・メディア上での友達からのこうした波及効果は、現実には、フェイスブックによる実験よりもさらに大きくなることが多い。すでに述べたとおり、フェイスブックの2010年の実験では、社会的メッセージが付随したものをふくめ、投票を促すメッセージにより、選挙への投票者が34万人増えた。また、メッセージを見た人から友達への波及効果によって、投票者は88万6000人増えた。ソーシャル・メディアの影響力が、友達から友達へと波及することで増幅しているようである。私たちがハイプ・マシン上で作り、消費する社会的信号は、元来が私たち人間の脳に影響を与えやすい。私たちの脳は生まれつき、そうした社会的信号を処理するようにできているからだ。私たちは日々、社会的信号を作り、消費しているし、その信号が絶えず私たちの行動に影響している。
この10年のあいだ、私たちはデジタルの社会的信号の爆発的増加を体験してきた。今、私たちは目が覚めてからわずか数分のあいだにも、実に多くの社会的信号を受け取ることになる。フェイスブックで家族の様子を確認し、インスタグラムで友人たちが昨夜どこで爵ジをしたかを知る。ツイッターで知人たちが身近な出来事を伝えているのを読むこともあれば、リンクトイン(世界最大級のビジネス特化型SNS)で誰かの転職を知ることもある。ナイキ・ラン・クラブやストラバ(ロードバイクをはじめとした自転車スポーツ愛好家に人気のサービス)でランニング仲間が昨日どのくらい走ったかを知ることもあるし、ティンダーやヒンジなどのマッチング・アプリで誰かが自分に脅威を持っていると知ることもある。10年前には、これほど大量の社会的信号が一気に押し寄せてくることはなかった。私たち人間の脳は、何十万年という時間をかけて社交のための進化を遂げている。そのため、この10年のあいだに、私たちの行動は、ハイプ・マシンを通じてかつてないほど他人の影響を受けるようになっている。つまり、私たちは過剰なほどに社交的になっているのだ。