じじぃの「科学・地球_363_気象の世界ハンドブック・気候温暖化の衝撃・海の生物多様性が危機」

グレートバリアリーフのサンゴ白化、過去最大規模に

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=RgPJAQRRQ6s

The map, detailing coral loss on Great Barrier Reef


Great Barrier Reef Dying, Suffering Worst Coral Bleaching Ever Recorded

11/28/16 International Business Times
The most impacted zone stretches 700 kilometers (about 435 miles) of the northern area of the Great Barrier Reef, scientists say. That region lost an average of 67 percent of its shallow-water corals in less than a year.
https://www.ibtimes.com/great-barrier-reef-dying-suffering-worst-coral-bleaching-ever-recorded-2451877

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

気候温暖化の衝撃 より

2℃、3℃、4℃…、と予想される平均気温の上昇温度は、一般の目にはささやかに見えるのかもしれない。とくに、冬の北半球から夏の南半球に行く機会があり、30℃から40℃の高温差を実感できる人にとってはそうだろう。しかし、平均気温が2℃上昇――今世紀末に人類を待ち受けるもっとも楽観的な予想値――すれば、人間活動全体に大きな打撃をあたえるだろう。すでに記録された平均気温の上昇[IPCCの報告では1800-2012期で0.85℃上昇]でさえ、異常気象、氷の融解、海水面の上昇、人口移動、動・植物の消滅、病気の蔓延…などが起きている。

大気は確実に温暖化しており、この傾向が今後も長期にわたって継続するのは避けられないだろう。仮に、排出される二酸化炭素(わたしたちがますます多く排出しつづけている)の一部が、比較的速く大洋に吸収されるとしても、排出量の25パーセントは何千年にもわたって大気中に残るだろう。そうなるとわたしたちは、温暖化して、平均降雨量が変化する地球に住むすべを学ばなければならないだろう。

海の生物多様性が危機に瀕している?

海の生物多様性は、「健全な」大洋(光合成、魚の繁殖…など)に欠かせないものである。気候変動が海域の豊かさと多様性、何百万種という魚の分布を変え、それだけではなく、食糧状況や生育、繁殖、また、魚類同士のあいだで保たれている関係も変えている。一部の海域では、生物多様性の損失や、海のバイオマスの減少がいちじるしくなっている。

温暖化に直面する海の種――適応、移動、または消滅

大洋は地球最大の生物圏で、35億年前、最初の生命があらわれたところでもある。水温や海水の酸性化、酸素濃度の変化は、海の生物の代謝や種のライフサイクル、被食者と捕食者の関係、そして生息環境に多大な影響をあたえている。
たとえば、ここ50年間で、生命の春の躍動――植物・動物プランクトンが最大限に繁殖・動物プランクトンが最大限に繁殖、無脊椎動物や魚類、鳥類の繁殖と移動など――が以前より早くなり、10年で平均4.4日前倒しになっている。一部の種は適応し、ほかの種は新しい生物圏へ移動するか、または消滅している。一般に、魚と海の無脊椎動物は、温暖化に対応して、より高緯度か、より深海部へと向かっている。そんな異種混合の大集団が極地へ移動していく平均距離は、10年で72キロメートル。こうして北のベーリング海バレンツ海、北海には暖かい海の種が増大し、極地的に生物多様性が豊かになっている。
いっぽう、異常気象による浸食で沿岸の生息環境は劣化し、二酸化炭素を吸収して種の繁殖には好条件のマングローブや海草などが衰退している。海水の酸性化では、骨格やカルシウムの殻のある海の生物(植物性プランクトン、甲殻類、軟体動物)に害をあたえている。

危機に瀕するサンゴ

サンゴ礁が大洋の表面積に占める割合はわずか(0.08から0.16パーセント)なのだが、そこには既知の海の生物の3分の1近くが生息している。水温の変化や海の酸性化にはきわめて敏感で、骨格の形成や、繁殖などの生命機能が乱されている。算定では、サンゴ礁の約20パーセントが消失し、25パーセントが現時点で危機に瀕し、仮に保護活動がいっさい行なわれなければ、2050年までにさらに25パーセントが危機におちいるといわれている。