じじぃの「科学・地球_362_気象の世界ハンドブック・気候温暖化の衝撃・陸の生物多様性が危機」

Biodiversity Crisis - Advocacy Video

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=x5Xs4DMqj44

Biodiversity loss breaching safe limits worldwide


熱帯雨林が伐採されアブラヤシ農園に


Biodiversity loss breaching safe limits worldwide

Natural History Museum
The loss of species diversity has reached unsafe levels across 58% of the world's land surface, according to a new assessment led by Museum scientists.
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2016/july/biodiversity-breaching-safe-limits-worldwide.html

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

気候温暖化の衝撃 より

2℃、3℃、4℃…、と予想される平均気温の上昇温度は、一般の目にはささやかに見えるのかもしれない。とくに、冬の北半球から夏の南半球に行く機会があり、30℃から40℃の高温差を実感できる人にとってはそうだろう。しかし、平均気温が2℃上昇――今世紀末に人類を待ち受けるもっとも楽観的な予想値――すれば、人間活動全体に大きな打撃をあたえるだろう。すでに記録された平均気温の上昇[IPCCの報告では1800-2012期で0.85℃上昇]でさえ、異常気象、氷の融解、海水面の上昇、人口移動、動・植物の消滅、病気の蔓延…などが起きている。

大気は確実に温暖化しており、この傾向が今後も長期にわたって継続するのは避けられないだろう。仮に、排出される二酸化炭素(わたしたちがますます多く排出しつづけている)の一部が、比較的速く大洋に吸収されるとしても、排出量の25パーセントは何千年にもわたって大気中に残るだろう。そうなるとわたしたちは、温暖化して、平均降雨量が変化する地球に住むすべを学ばなければならないだろう。

陸地の生物多様性が危機に瀕している?

気候変動は、あらゆる生物の生活リズム、繁殖、成長、生息環境、食糧資源に影響をおよぼしている。一部の種はそれで得をし、ほかは損し、なかには消滅いたるものもいる。しかし、生物種のすばやい環境適応能力についてはよく知られておらず、これもまた予測はむずかしいのである。

全体に加速する無秩序

気候変動は、生物多様性の浸食が急激に進むおもな原因ではないが、しかしその影響で人為的圧力が高まり、それがすでに生物種とそれぞれの生息環境におよんでいることが知られている。
猛暑や、長期にわたる厳しい干ばつ、そして気温上昇で、水辺の環境は大きく変わり、とくに気温上昇による酸素不足に適応できない種が被害を受けている。気温上昇はまた、生物季節学上の変化もひき起こしている。つまり気候の変化が、一部の動植物の周期的な生命現象に影響をあたえているのである。
植物では、発芽や開花の時期が以前より早まり、したがって植生のシーズンが長くなる。昆虫や鳥類でも、孵化が早くなり、渡り鳥が移動する日にちにもズレが出て、相互依存関係にある生物種にとって、時期が合わない大問題を引き起こす。

それにくわえて、人為的な圧力が生態系を苦しめている。これらすべてが種の適応能力をむしばむのである。というのもその土台となる2つの要因、遺伝子の多様性と、活発な遺伝子流動[ある集団の中または外への遺伝子の移動]が、生息環境の分断で不可能になるからだ。こうした個体群の出生率の低下と、死亡率が高まることが予想される。

多くの種の分布圏はすでに変わってしまった。鳥類では500種近くのケースがそうだ。たとえばフランスでは、もともと地中海地方にいる鳥類が近年に移動している。南フランスにいたアマサギはいまや北のピカルディー地方で巣をつくり、南ヨーロッパで繁殖していたヨーロッパハチクイはベルギーの国境まで北上した。また、さまざまな種(昆虫、植物、一部の鳥類)が、平原では北上し、山では標高を上げていっているのが確認されている。
将来的には、新しい環境に適応できない種は、移動するか消滅していくのだろう。そうして、ある地域の生物多様性は衰退し、ほかが豊かになって、生態系の豊かさと構成が変わっていき、食糧チェーンとしての被食者と捕食者、寄生者の分布を乱していくのだろう。
残念ながら現在の知識では、これらの変化の大きさを正確に見とおすことはまだ不可能である。