じじぃの「序・創刊後すぐに日本を特集!150年前の科学誌『NATURE』には何が」

科学のネットワーク:Natureの論文の150年

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=GW4s58u8PZo

Nature, 1888 南方旧蔵の『ネイチャー』誌表紙


[Photo: cover logo of Nature, 1888] 南方旧蔵の『ネイチャー』誌表紙

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『いつのまにやら本の虫』

出久根達郎/著 講談社 1998年発行

猛勉 より

民俗学者にして植物学者の南方熊楠(みなかたくまぐす)は、18歳の日記の巻頭に、「憲法」を記した。自分自身のおきてである。
一、朝六時に起き夜十一時に臥(が)す。 一、今日出来ることは明日迄のばさず、万事敏捷なるべし。 一、間食を厳禁す。但し日曜は許す。 一、飯は三盃(杯)より以上なるべからず。 一、土曜、日曜及び其の他休日には図書館へ行く。
頭の中に百科事典が詰まっている、と言われた熊楠も、このころは、土日と休日くらいしか図書館にでかけなかったのだ。
10年後、熊楠は英国にいる。大英博物館図書館に、5月から連日通い独学。日記は次の如し。
「七月八日 二時四十分より七時まで書籍室」 「九日 一時七分より七時迄」 「十日 十二時五十分より七時迄」 「十一日 二時より七時」 「十二日 一時四十五分より七時」 「十三日 十一時二十分より七時」
休館日の日曜を除いて、7時閉館まで居る。

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150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか 紀伊國屋書店

瀧澤 美奈子【著】
【目次】
序 なぜ今、150年前の科学雑誌を読むのか(本書の目的)
第1章 Nature創刊に託された思い
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第7章 モースの大森貝塚
第8章 Nature誌上に見る150年前の日本
付録 初期のNatureに何度も載った日本人
【感想・レビュー】
●150年前の雑誌「NATURE」に書かれていた内容から現代を読み解く一冊。「NATURE」はイギリスの科学雑誌で、ノーベル賞などのさまざまな論文を掲載してきた、150年間続いていることがそもそもの驚き。初期の「NATURE」は、現代のSNSのごとく雑誌上で専門家・一般読者を巻き込んだ論争が掲載されていたり、明治維新直後の日本が描かれていたり非常に面白かった。南方熊楠の論文が大量に掲載されていたという事実も初めて知った。

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『150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか』

瀧澤美奈子/著 ベレ出版 2019年発行

序 なぜ今、150年前の科学雑誌を読むのか(本書の目的) より

創刊後すぐに日本を特集

natureは1869年11月4日にイギリスのアマチュア天文家、ノーマン・ロッキャーが出版社のマクミラン社の資金提供を受けて創刊し、以降毎週木曜に刊行されました。
natureの創刊がちょうど150年前であったことに加え、それが日本では明治維新(明治に改元された年)からわずか1年しかたっていないことを知ったとき、私は胸が高鳴るのを感じました。
鎖国を解いて近代化への道を歩みはじめたばかりの日本は、どのようにして科学や技術を導入したのでしょうか、多くの日本人がヨーロッパに国費派遣され、西洋の知識を貪欲に学んだ時代です。そのころ、ヨーロッパの現地ではいったい何が起きていたのでしょうか。そこで日本人は科学や技術をどのようなものとして学んだのでしょうか。
そんな思いで創刊当時のnatureのページを繰ってみて驚いたのは、西洋の人々もまた日本を好奇の目で凝視していたということです。創刊からまもなく、natureには日本の特集記事が組まれ、江戸を中心とした当時の日本の姿が生き生きと描かれていました。
詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、そこに描かれている日本は、それまで私がイメージしていたものとはだいぶ違いました。
私は大学の理工系の学部で教鞭をとる傍ら、講演することもありますが、いくつかの大学の理工学部で当時のnatureに書いてあったことを話してみました。すると学生は「へえー」と言って目を輝かせていました。それはたぶん、私たち自身が知らない文明開化前の日本人や日本文化の素の姿を、西洋のフィルターを通して見せてくれているからなのだと気づいたのです。
当時の日本のことは最終章に紹介してあります。さらにその章ではnature創刊後の10年間に日本がどのように登場しているかも追いました。日本が猛烈な勢いで変わっていくのと同時に、彼らの認識が変容していった様子が浮かび上がり、この先の私たちの進むべき方向も、少し見えた気がします。