じじぃの「科学・地球_364_気象の世界ハンドブック・気候温暖化の衝撃・気候難民と人口の移動」

Bangladesh town offers new life to climate migrants

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=KEiKMLqPoTg

Climate Change and Environmental Risk Atlas 2013


Climate Change and Environmental Risk Atlas

30 October 2013 Development Workshop
The economic impacts of climate change will be most keenly felt by Bangladesh (1st and most at risk), Guinea-Bissau (2nd), Sierra Leone (3rd), Haiti (4th), South Sudan (5th), Nigeria (6th), DR Congo (7th), Cambodia (8th), Philippines (9th) and Ethiopia (10th), which make up the 10 most at risk countries out of the 193 rated by the CCVI. However, other important growth markets at risk include: India (20th), Pakistan (24th) and Viet Nam (26th) in the ‘extreme risk’ category, in addition to Indonesia (38th), Thailand (45th), Kenya (56th) and, most significantly, China (61st), all classified at ‘high risk.’
https://www.dwf.org/en/blog/climate-change-and-environmental-risk-atlas

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

気候温暖化の衝撃 より

2℃、3℃、4℃…、と予想される平均気温の上昇温度は、一般の目にはささやかに見えるのかもしれない。とくに、冬の北半球から夏の南半球に行く機会があり、30℃から40℃の高温差を実感できる人にとってはそうだろう。しかし、平均気温が2℃上昇――今世紀末に人類を待ち受けるもっとも楽観的な予想値――すれば、人間活動全体に大きな打撃をあたえるだろう。すでに記録された平均気温の上昇[IPCCの報告では1800-2012期で0.85℃上昇]でさえ、異常気象、氷の融解、海水面の上昇、人口移動、動・植物の消滅、病気の蔓延…などが起きている。

大気は確実に温暖化しており、この傾向が今後も長期にわたって継続するのは避けられないだろう。仮に、排出される二酸化炭素(わたしたちがますます多く排出しつづけている)の一部が、比較的速く大洋に吸収されるとしても、排出量の25パーセントは何千年にもわたって大気中に残るだろう。そうなるとわたしたちは、温暖化して、平均降雨量が変化する地球に住むすべを学ばなければならないだろう。

気候難民と人口の移動

気候難民は、複雑でさまざまな状況から故郷をあとにしている。突然の異常気象(ハリケーン、暴風雨、洪水など)に襲われたからであり、国土や生態系が徐々に、ゆっくりと悪化(干ばつ、海水面の上昇、氷の融解…)したからでもある。被害者の大半は、地域内で移住するのだが、ただし、居住区域が浸水したか浸水しつつあり、戻れる希望のない人々は別である。

地域全体がおびやかされる

2008年から2013年にかけて、気候変動の圧力で、119ヵ国の平均2700万人が自宅をあとにし逃げなければならなかった。中国では、ゴミ砂漠が年に1万平方キロメートル近く拡張し、北京に近づいている。北極では永久凍土が融解して、北極圏の人々は集団脱出を余儀なくされている。気候変動にもっとも弱い国々の状況は、二酸化炭素を大量に排出する国々とは大きくかけ離れている。
デルタ地方。
海水面の上昇でとりわけ影響を受けるのは、広大なデルタ地方で、人口が密集している地域が多い。たとえば、ガンジス川ブラマプトラ川のデルタは、インドとバングラデシュにまたがり、フランスの半分ほどの広さがある。その海面から高さわずか12メートルにも満たない土地に、1億5200万人のバングラデシュ人が住み、うち約10パーセントの土地は海面より低い。現在の水面上昇のペースでは、今後2100年までに[2050年との予測も出た]バングラデシュの国の面積の17パーセントが水に沈むといわれている。いっぽうナイル川のデルタでは、海面から2メートル以下の高さの土地2万4000平方メートルに1940万人が住み、そこでエジプトの農業の40パーセントが生産されている。もし海面が1メートル上昇したら、デルタの4分の1は浸水し、国の人口の10パーセントは移住を余儀なくされるだろう。それだけではない。今後2100年までに地域の土地の60パーセントで、地下水の塩害の影響がおよぶだろう。

問題をはらむ人口移動

国民的な移動。
気候変動が原因で、数百万人の人々が住居をすて、多くはいちばん近くの被害をまぬがれた都市に移動している。もっとも顕著な大陸はアジアで、2014年は気候変動による国内移住者の87パーセントを占めている。次に位置するのがアフリカだが、しかし人口が2050年までに倍増すると予想されるこの大陸では、人口移動によるリスクはほかの地域より速く高まるだろう。アフリカでは巨大都市周辺で人口が増えつづけており、資源や基本のインフラへのアクセスが混乱し、それとともに貧困国で緊張が高まるリスクがある。
先進国も例外ではない。日本では平成25年台風18号(アジア名マンニイ)で26万人が非難を強いられ、2013年、オクラホマ州アメリカ)の竜巻では21万8500人が非難している…。ヨーロッパでも、1998年から2002年にかけて、洪水で50万人が移動を強いられた。しかし、いくつかの大災害が新聞の一面を飾っても(思い出すのは2005年、ニューオーリンズを襲ったハリケーンカトリーナ)、先進国には非難した住民を管理する手段があるのに対し、途上国(低開発国)はもちあわせていないのが実情だ。
気候難民を受け入れる負担が重くのしかかっているのは、ほとんどが途上国である。国連によると、今後2050年までに約1億5000万人が気候難民になるとされている。