じじぃの「少年とピンポン・ピザゲート事件に見る情報の混乱!ディープフェイク」

How did 'pizza gate' inspire violence?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=L-VslYnrVWM

ピザゲート(Pizzagate)?

民主党の「ピザゲート」? 偽ニュースや陰謀論の生まれ方

2016年12月2日 BBC
●訴え出た被害者はいない。捜査も行われていない。物的証拠は? それも存在しない。
それでも何千、何万という人たちが、米ワシントンのピザ店を根城にする小児性愛者の集団があり、そこには民主党最高幹部たちが関わっていると確信しているのだ。
ツイッターの一部の利用者は、この噂に夢中になった。11月には「pizzagate(ピザゲート)」という単語を含むツイートが100万近く送信された。
では、この偽の「ニュース」はいったいどうやって、ドナルド・トランプ氏を支持する極右のいわゆる「alt-right(オルタナ右翼)」をはじめ、ヒラリー・クリントン氏を嫌う人たちの間で定着していったのか。
まずは、事実から始めよう。
「バスケットに入った子供の写真は、時にはただ単に、何の罪もない、バスケットに入った子供の写真だということもある。それだけでは、児童買春シンジケートの証拠にはならない」
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38179131

ピザゲート

ウィキペディアWikipedia) より
ピザゲート(Pizzagate)は、2016年アメリカ合衆国大統領選挙の期間中に広まった、民主党ヒラリー・クリントン候補陣営の関係者が人身売買や児童性的虐待に関与しているという陰謀論である。
この疑惑は、コロンビア特別区首都警察(MPDC、ワシントンDC警察)など多数の機関によって虚偽であると証明されている。
2016年秋、ヒラリー・クリントン候補陣営の選挙責任者であったジョン・ポデスタの私的なメールアカウントがフィッシングの被害に遭いハッキングされ、メールがウィキリークスに公開された。このメールに、アメリカ国内の複数のレストランや民主党の上級関係者が、ワシントンD.C.にあるコメット・ピンポンというピザ店を拠点とした人身売買や児童買春に関わっていることを示唆した内容が含まれている、という主張が喧伝された。

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『ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち』

ニーナ・シック/著、片山美佳子/訳 ナショナル ジオグラフィック 2021年発行

第5章 犯罪の武器になる野放しのディープフェイク より

ピザゲート事件に見る情報の混乱

陰謀論者は、こじつけが得意だ。例えば、問題のピザ店はコメット・ピンポンという店名だが、CPという頭文字には児童ポルノを表す(チーズピザもCPだ)。

この店のジェームズ・アレファンティスがリベラルな民主党支持者の組織と関係があったことも、さらなる「証拠」とされた。ジェームズ・アレファンティスという名前を声に出して読むと、「私は子供を愛している」という意味のフランス語「ジェム、レゾンフォン」に似ているのも、「しるし」とされた。アレファンティスのインスタグラムのアカウントのコンテンツも火に油を注いだ。子供の写真があり、その中の一人がピザを食べていたのだ。他にもオバマ大統領をホワイトハウスで少年と卓球(ピンポン)をしている写真もあった。これらが、アレファンティスが病んだ小児性愛者の組織とつながっている「証拠」だと説明された。
ピザゲート事件を取り上げたウェブサイト、プログ、フォーラムが次々と出現した。例えば、ワードプレスというサービスを使って匿名の人物が作った「dcピザゲート」というブログでは、噂が本当だということを長々と力説している。冗長で要領を得ない文章でEメールについて、「これが暗号でなければ、意味がわからない。これが本当にただのピザ(中略)の話だとしたら、ポデスタ(2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン選挙対策本部長を務めた)の弁護団や主要メディアの誰一人として、それがどういう意味なのか筋の通った説明ができていない」と主張している。さらにアレファンティスのインスタグラムのプロフィールは異常だと指摘し、「彼のインスタグラムへの投稿を見て、鳥肌が立たなかったら教えてくれ」と述べている。また、投稿されている写真を1枚1枚解説し、小児性愛者の組織を運営しているに違いないという話に持っていく。その上、小児性愛だけでなく、恐ろしい悪魔崇拝の儀式に心酔しているとまで書いているのだ。
どれもこれもばかげた話に聞こえるし、実際そうだ。へんてこりんな話ばかりなのだ。
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事態はさらに悪化する。ポデスタのEメールがウィキリークスで公開されたのは、2016年の10月と11月のことだった。ドナルド・トランプが当選した後、嫌がらせは止まるだろうとアレファンティスは思っていた。だがそうはならなかった。2016年12月4日、ライフル銃AR-15を手にした男がコメット・ピンポンに押し入り、数発発砲したのだ。幸いなことに負傷者はいなかった。そもそも地下室など存在しないのだが、犯人のエドガー・マディソン・ウェルチは子供がいないことに満足し、店を出て警察に投降した。警察には、小児性愛者の組織の噂を「独自調査」するため、カリフォルニア州北部の家から首都ワシントンまで運転して来たと話した。その後、ウェルチには4年の実刑が宣告されたが、それでもインターネット上ではピザゲート事件が終わることはなかった。なんと陰謀論者たちはウェルチの襲撃は真実から自分たちの目をそらすために仕組まれた「やらせ」だと思ったのだ。
この奇想天外な事件から、インフォカリプス(情報の終焉)においては、ばかげた噂がどれほどエスカレートし、拡散されるかがわかる。「ピザ」の話した2通のEメールがもとで、小児性愛者組織に捕らえられた子供を逃がそうと、銃を持った男が店を襲撃するような事件が起きるのならば、ディープフェイクは加わったら、どんな重大な出来事に発展するか想像してほしい。クリントンアレファンティスが未成年者への性的虐待の話をしているニセ動画でも作られていたらどうなっていたことだろう。単独犯による銃撃事件どころではすまなかったかもしれないのだ。アレファンティスの「日常」は戻っていない。陰謀を信じ続けている人々がいて、相変わらず嫌がらせを受けているのだ。後に、「あのときからいつもおびえています。今でも殺すと脅かされているのです。出かけるときには帽子とサングラスが欠かせません。警備員にも『ああ、危ないよ』と言われます」と話している。
ピザゲート事件は常識では考えられないような事件だが、アレファンティスが巻き込まれたこの騒動は、インフォカリプスが現実の世界をいかに変容させているかを示している。情報の環境がもっと汚染され、腐敗が進めば個人や企業が標的にされたり、巻き添えになったりする危険がさらに増していくだろう。