じじぃの「脳科学・幻肢痛・脳が作り出す痛みの感覚!面白い雑学」

2-Minute Neuroscience: Phantom Limb

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=GYxksqaLBxc

Phantom limb effect


Study reveals why the brain can’t forget amputated limbs, even decades later

September 1, 2016 the conversation
●How the mind sees the body
These findings are doubly exciting because they stand in contrast to traditional wisdom regarding how the sensory body map in the brain is generated and maintained.
This sensory map is known as the somatosensory homunculus (from the Greek for “little man”), and it has long fascinated scientists due to its highly organised structure. Organised, in that the body parts are laid out in the brain in a very similar way to how they are on the body:
https://theconversation.com/study-reveals-why-the-brain-cant-forget-amputated-limbs-even-decades-later-64693

『面白くて眠れなくなる脳科学

毛内拡/著 PHP研究所 2022年発行

PartⅡ 脳はふしぎに満ちている――ないはずのものを感じる脳 より

幻肢痛のふしぎ

脳に障害を負うことは、当然私たちの体に大きな影響を与えます。患者さんにとってもその家族や社会にとっても大きな損失ですし、なるべく早く、治療が成功し、また元通りの日常生活を送れるように願うばかりです。
一方、何千、何万という脳障害の症例が、脳研究を進展させたことも確かです。というのは、どういう障害を負うと、どのような機能不全が生じるのか、行動異常が生じるのかというのは、脳の働きを知る上で非常に貴重な情報だからです。
そこからわかってきたのは、私たちが、世の中を認識したり、自分の体を自分のものであると感じたりするのは、当たり前のことではなく、非常に脆(もろ)く、あいまいなものであるということです。
ちょっとした薬や毒で簡単に、体の機能は変わってしまいますし、いくら堅牢に守られているとはいえ、一部でも障害を受けると、前出のフィニアス・ゲージのように性格まで大きく変わってしまうのです。
固有感覚をつかさどる脳部位が傷害を受けたために、自分の体が自分のものと感じられなくなった症例について、前に触れました。
また、不慮の事故で右手を失ってしまったトラックドライバーは、失ったはずの手が痛むという症状に悩まされてきました。これは幻肢痛(げんしつう)と呼ばれる現象で、手に限らず切断した足が痛くてしかたがないなど同じような報告が多数あります。
痛みを感じているはずの神経はすでに存在しませんから、痛み止めは効果がありません。つまりこの痛みを感じているのは脳が作り出したものということになります。
アメリカの神経科医のV・S・ラマチャンドランは、”脳をだます”画期的な方法でこれを解決しました。中央に鏡に置いた箱(ミラー・ミックス)を用意し、その中に手を差し入れます。存在している手のほうから覗き込むと、あたかも両手がその箱の中に差し入れられているかのように錯覚します。この状態で、存在しているほうの手をさすってあげると、脳は失った手もさすられていると勘違いをします。このような治療を繰り返すと、やがて幻肢痛は消え去ったというのです。
脳が我々の痛みの感覚を支配し、脳が勘違いすることで痛みも消えてしまうのです。私たちの感覚はすべて脳によって決められているといっても過言ではありません。

衝動は脳のせい?

脳が支配しているのは、感覚だけではありません。
1966年、アメリカのチャールズ・ホイットマンという温和で誰からも愛されていた男が、ある朝突然、妻と母を殺害し、その後、テキサス大学オースティン校に立て籠(こ)もりました。警察に銃殺されるまでの間、無差別に銃を乱射し、合計で45名以上の死傷者を出したといわれる悲惨な事件として知られています。
ホイットマンは、事件前から頭痛に悩まされており、自分の体に異常が生じているだろうから、死後解剖してほしいという旨の遺書を残していました。そのとおり、死後、解剖して脳を調べてみると、脳の一部にこぶし大の腫瘍が生じていたといいます。その腫瘍が、恐怖や暴力をつかさどる扁桃体と呼ばれる脳部位を圧迫していたという報告があります。
また、2000年のこと、教師をしていたある男が突然、小児性愛児童虐待の衝動が抑えられなくなり、妻の連れ子である幼い娘への暴力未遂で捕まりました。その脳を調べてみると、こめかみの部分に卵大の腫瘍ができていたといいます。外科手術で、その腫瘍を取り除くと衝動は消え去り、何事もなかったかのように穏やかに暮らしたといいます。ところが、また1年後に衝動が起こり、再検査したところ、また同じ部分に腫瘍ができていたのです。再度取り除くと、やはり衝動が消えたといいます。
この事件からわかることは、脳が我々の行動を促す衝動すらも支配しているという事実です。