じじぃの「科学・芸術_925_遺伝子DNAのすべて・脳の配線」

Human brains compared to other animals

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=iCXSZQSWwdM

Brain size and complexity comparison.

Are We Really Just Wired Differently?

Baen Books
It's a common attitude in modern society that persons with extraordinary talent are simply wired differently than everyone else. The notion is reinforced by findings of differences in brain structure between persons with different talents, abilities, and even neurological disorders. In contrast, if there is one thing that neuroscientists are sure of, it's that the human brain is highly "plastic"-capable of overcoming disease and even rewiring itself after injury. There is new emerging evidence that many of the differences aren't really there, and the human brain is capable of re-wiring at need.
https://www.baen.com/wireddifferently

『ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて』

キャット・アーニー/著、長谷川知子、桐谷知未/訳 原書房 2018年発行

脳の配線

ヒトの脳はおそらく、宇宙でいちばん複雑な物体だろう。脳は経験や環境によって絶えず発達しているが、この高性能な生物コンピューターの構築には、遺伝子が大きな役割を果たしている。

能は、原腸の創成(動物の一生で最初に起こる複雑な形態形成運動)と同じころに形成が始まる。胚が、外胚葉(外側)、中胚葉(中側)、内胚葉(内側)という3種の異なる細胞の層に折りたたまれる時期だ。この過程は、原始線条と呼ばれる細胞のすじから始まる。またこれは、最終的に脊髄と脳を形成する構造が最初に発達し始める場所の印にもなる。
能構築過程の第1段階(神経管形成と呼ばれる)では、原始線条に続いて、胚の最上部に沿った外胚葉細胞のシートに溝が形づくられる。溝はどんどん深くなり、最終的には丸く閉じられて、いずれ胎児の背中になる部位の内膜を上下に走る中空の神経管になる。
胚が発育するにつれて、神経管の上端がふくらんで、液体で満たされた3つの隆起ができ、これが最終的に、前脳、中脳、後脳になる。神経管の残りの部分は脊髄をつくる。脊髄は体の全神経が脳につながる主要な経路だ。このすべてが、ともに働くさまざまな遺伝子とタンパク質に指示され、適切な時に適切な場所へ確実に移動するよう、細胞間にシグナルが送られている。こういう基本的な過程に間違いが起こると、きわめて深刻な結果につながることがある。
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脳の基本構造は妊娠8週めまでにすべて配置され、その後はただ、より多くのニューロンをつくって、そのすべてを接続するだけになる。実際、脳の新たな神経細胞の生産は誕生後、さらには成人期になってからも行われる。大人は新しくニューロンをつくらないという通説に反して、大人の脳の一定の場所――特に、学習や記憶の立役者でもある海馬では、まだいくらかつくられている。けれども、膨大な数のニューロンと、大きく立派な脳を持つだけでは、人間が特別な存在になるのにじゅうぶんではない。本当に重要なのは、これらの神経細胞すべてが互いにどう接続されているかを理解することだ。
2つの神経細胞間の接続はシナプスと呼ばれ、単一のニューロンは周囲の細胞と何百、あるいは何千もの接続をつくることができる。1つのニューロンが多数のシナプスをつくるほど、処理できる情報も多くなる。ヒトの神経細胞は、他の動物に比べ、並外れて多数の接続をつくれるようだ。それが、ヒトに並外れた知力がある根拠と考えられ、その真相は確実に遺伝子に存在する。

大きいことはよいことか? より

ヒトの脳は、他の霊長類に比べると、体の大きさから予想されるより大きい。たとえば、ヒトの脳には、およそ860億個の神経細胞がある。マカク属などのサルの脳が持つ数のおよそ12倍だが、ヒトの体は8倍ほどしか大きくない。これは長年、他の動物に比べてヒトの知能が優れていることを説明するのに使われてきた。
ところが、マウスや鳥は、脳と体の大きさの比率がヒトと同じくらいだが、それほど利発ではない。これは脳が他の動物とは違う形で構築されるからだ。大脳皮質(思考や言語に利用される前方の部位)がずっと大きいうえに、他にも比類の適応力がある。
ネアンデルタール人は、現生人類より大きな脳を持っていた。1600立方センチメートルもあったそれに比べ、現代の男性は平均1440立方センチメートル、女性は1330立方センチメートルほどだ。しかし証拠に基づけば、ネアンデルタール人が絶滅した理由の1つは、現生人類に知恵で負けたからだった。つまり、大きな脳が生存能力を高める結果にはならなかった。大きな脳を持つからといって、男性が女性より利口なわけではない。研究によると、一般集団全体の男女間で、脳の大きさと知能に相関関係はほとんどない。