じじぃの「太陽系を超えて・ハビタブル惑星の探索・トラピストー1!地球外生命」

NASA & TRAPPIST-1: A Treasure Trove of Planets Found

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bnKFaAS30X8

地球に似たその惑星群(b~h)

超低温の恒星「トラピストー1」と地球に似たその惑星群

2017-02-26 TOKYO EXPRESS
図1:(NASA/JPL-Caltech) 左端の恒星「トラピストー1」を回る7個の惑星の想像図。
それぞれの惑星には ”b”から ”h”の記号が付いている。この内 ”b”、”c”、”e”、”f”、”g”、の5個が地球と同じ大きさ、”d”と“h”は地球と火星の中間の大きさ。生命存在可能範囲(habitable zone) にあるのは”e”、”f”、”g”の3個で、”e” の公転周期は9日である。
http://tokyoexpress.info/2017/02/26/%E8%B6%85%E4%BD%8E%E6%B8%A9%E3%81%AE%E6%81%92%E6%98%9F%E3%80%8C%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%94%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%EF%BC%91%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%9C%B0%E7%90%83%E3%81%AB%E4%BC%BC%E3%81%9F%E3%81%9D/

『地球外生命-アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来』

小林憲正/著 中公新書 2021年発行

第7章 太陽系を超えて より

太陽系外惑星の発見

太陽系外の惑星を望遠鏡で見つけるのは、極めて難しいのです。恒星だったら、どんなに暗い、遠く離れた天体でも望遠鏡の解像度を上げていけば原理的には撮像が可能です。しかし、惑星は自分自身は光を出さないのに対し、そのすぐそばに遙かに明るい中心星が存在することが問題となります。たとえば、太陽は地球から見るとマイナス26.7等星に相当する明るさですが、太陽系最大の惑星、木星が最接近して最も明るく見える時でもマイナス1.46等星です。1等級違うと、明るさは約2.512倍になるため、太陽は木星の120億倍の明るさです。地球からの距離は木星の方が4倍以上遠いため、これを補正し、はるか遠方から太陽と木星を観測した場合でも太陽は木星より7億倍以上明るいことになります。このように明るさが桁違いに異なる天体がたった0.00008光年しか離れていないのですから、太陽系外から2つを識別するのは非常に難しくなります。
しかし、天文学者たちは間接的に太陽系外の惑星を検出する方法を考え、挑戦を続けてきました。たとえば、救急車が近づいてくるとき、ドップラー効果によりサイレンの音は高く聞こえ、遠ざかる時は低くなります。これは音波が音源の移動により圧縮されたり引き延ばされたりするためです。光にも同じことが起こり、光源が近づく時には光の波が圧縮されて波長が短くなります(青っぽくなる)し、逆に遠ざかる時は赤っぽくなります。惑星は恒星よりも小さいとはいえ、その重力により恒星を若干なりとも動かしており、地球でさえ太陽を毎秒10センチメートルの速度で動かしています。この性質を用いて恒星の色の変化を観測することにより惑星の存在を知ろうとするのがドップラー法(視線速度法)です。また、惑星が恒星の前を横切る時に、恒星から来る光を遮るため、恒星の光度が下がります。これを利用して惑星の存在を知る方法がトランジット法です。

「ハビタブル」惑星の探索

系外惑星探査は世界的な大ブームとなりました。当初はドップラー法による発見が主でした。これはトランジット法ですと、中心星ー系外惑星ー地球がほぼ一直線上に並ぶ必要があることなどの制限があることにも起因します。しかし、2009年にトランジット法による地球サイズの系外惑星発見をめざした宇宙望遠鏡「ケプラー」が打ち上げられると、2018年の運用終了までに2600個以上の系外惑星が発見されるなど、現在ではトランジット法が系外惑星発見の最大のツールとなっています。トランジット法にはもうひとつメリットがあります。惑星大気の組成を知ることができる可能性があることです。
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現在、ハビタブル惑星(生物が生存可能な惑星のこと)探しにおいて特に注目されているのが、主系列星の中でも太陽のようなG型星よりも1回り小さいM型星です。M型星は、質量が太陽の0.08ー0.45倍のもので、宇宙においてG型星やそれより大きい恒星よりも多数存在します。M型星の表面温度は3000℃前後と低く、星の中で水素が核融合する速度が遅いため長命です。さらに、小さい惑星が前を通過するときの相対的な明るさの変化や、惑星によるふらつきが大きく、トランジット法、ドップラー法のいずれでも小さな地球型の惑星が検出しやすいという利点があります。さらに、G型星まわりのよりも暗いということは、M型星まわりのハビタブルゾーンはG型星より中心星に近いところにあるため、中心星近くまわるを惑星がハビタブルである可能性も高まるわけです。

2017年には地球から40光年離れたM型星の「トラピストー1」を周回する地球型の惑星が7つ見つかりました。

その質量は地球の0.75ー1.17倍と地球とほぼ同じですが、中心星の近くを回っているため、公転周期は1.5ー12.4日にすぎません。そして、そのうち3つはハビタブルゾーン内にあると報告されました。地球に最も近いプロキシマ・ケンタウリは質量が太陽の約7分の1のM型星ですが、これを周回する惑星プロキシマ・ケンタウリbがドップラー法で発見されたのが2016年8月です。
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太陽系でいえば、bが地球、cは木星海王星的なものといえます。本章冒頭で紹介したブレークスルー・スターショット計画が順調に進んだ場合、プロキシマ・ケンタウリbの近接写真が見られる可能性がありますが、それは早くて2060年代で、まだ少し先です。