じじぃの「タンパク質・AIMによるゴミ掃除と腎臓病!猫が30歳まで生きる日」

【本要約】猫が30歳まで生きる日 ~人間の病気にも効くゴミ掃除タンパク質「AIM」~【アニメで本解説】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0-8UdrPzakg

タンパク質・AIMの役割

猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見 Amazon

宮崎徹(著)
日本では1000万頭近い猫が飼われているといわれますが、その多くが腎臓病で亡くなっています。猫に塩分を控えた食事をさせて日々気をつけていても、加齢とともに腎機能は必ず低下してしまいます。そんな猫の腎臓病の原因は、これまでまったく不明でした。
そんななか、宮崎徹先生が血液中のタンパク質「AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)」が急性腎不全を治癒させる機能を持つことを解明しました。猫は、このAIMが正常に機能しないために腎臓病にかかることもわかったのです。
この AIM を利用して猫に処方すれば、腎臓病の予防になり、猫の寿命が大幅に延び、現在の猫の平均寿命である15歳の2倍である、30歳まで生きることも可能であるとされています。
──これは、愛猫家にとっては、とてつもない朗報です。さらに、AIMは、猫だけでなく人間にも効き、また腎臓病だけでなくアルツハイマー認知症や自己免疫疾患など、これまで〈治せない〉と言われていた病気にも活用が期待されます。
本書は、最新医療の研究現場のリアルを伝えます。

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「ネコの宿命」腎臓病の治療法を開発 寿命が2倍、最長30年にも 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー

2021.07.11  時事通信ニュース
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070800906&g=soc

ノックアウトマウスとは 研究用語辞典 より

ノックアウトマウス(Knock-out mouse)とは遺伝子操作により1つ以上の遺伝子を欠損(無効化)させたマウスのことです。
遺伝子の塩基配列は決定しているものの、その遺伝子産物の機能が不明な場合にその機能を推定するための重要なモデル動物です。
また、組織特異的に遺伝子を欠損できる条件付ノックアウトマウス(Conditional Knock-out mouse)も近年は盛んに作製されています。条件付ノックアウトマウスは主に、遺伝子を欠損することで胎生致死(発生時期に分化の異常が生じ生まれてこない)や出産直後致死となる分子の機能解析や成体での遺伝子の機能解析を目的として作製されます。

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『猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』

宮崎徹/著 時事通信出版局 2021年発行

第5章 AIMによる〝ゴミ掃除〟と腎臓病 より

腎臓病の研究を開始

腎臓は血液を濾過(ろか)して老廃物を体外に排出する臓器だが、腎臓の細胞が必要とする栄養分や酸素は、濾過する血液が運んでくる。腎動脈は、腎臓の中に入ると細かく枝分れして臓器の隅々に血液を届ける一方、その本流は糸球体を通過しながら老廃物を濾過し、きれいな血液となって腎臓から出て行く。
糸球体の先にある尿細管の内側に敷き詰められた上皮細胞は特にデリケートで、血流が遮断されるといっせいに死んで剥(は)がれ落ち、その死骸が「デブリ(ゴミ)」となって尿細管を詰まらせる。そこに炎症が発生し、やがて糸球体を含むネフロン(濾過装置)自体が機能を停止する。急性腎障害は、その現象が同時多発的に発生した状態のことだ。

AIMによる治療のメカニズム

それでは、AIMはどのようにして急性腎障害(AKI)を治療しているのだろうか。
急性腎障害を発症して1日目の普通のマウスの腎臓を調べてみると、尿細管に詰まっているデブリの表面に、べったりとAIMがくっついていることがわかった。
もちろん、AIMを持たないノックアウトマウスではデブリにAIMはついていないが、ノックアウトマウスにAIMを注射した後はAIMがデブリに付着していた。
3日目の腎臓を調べると、普通のマウスやAIMを注射したノックアウトマウスでは、デブリによる尿細管の詰まりは急激に改善されているが、AIMを注射していないノックアウトマウスでは、デブリの量は減っておらず、詰まりは解消されていない。
AIMがデブリを掃除しているわけではない。試験管の中でAIMとデブリを混ぜても何も起こらない。
それでは何が起こっているかというと、腎臓の中の貪欲運動が、AIMを目印にしてデブリに到達し、AIMと一緒にデブリを食べてしまうのだ。食細胞に食べられたデブリとAIMは、そのまま細胞の中に消化され、跡形もなく消えてしまう(画像参照)。
すなわち、AIMは健気にもデブリの目印となり、自分を犠牲にして貪欲細胞にデブリを食べさせることによって、尿細管の詰まりを解消していた。
デブリを掃除した貪欲細胞は、腎臓の外から来たわけではない。尿細管壁上に生き残っていた上皮細胞が、貪欲細胞に変身するのだ。普段は物を食べることはなく、尿細管の内腔壁面を形成して糖やミネラルの再吸収を行っている上皮細胞が、急性腎障害という非常時には、貪欲細胞に変身し、詰まったデブリを取り除く役割を果たすようになる。
デブリを食べた貪欲細胞は、その後上皮細胞に戻り、さらに何度も分裂し、尿細管を速やかに再生してゆく。消化したデブリを栄養源として、盛んに分裂するようになったのかもしれない。普通のマウスやAIMを注射したノックアウトマウスでは、急性腎障害を発症してから7日目になるとデブリはすっかり片づけられ、尿細管はきれいに再生していた。
救命救急科で研修医として働いていたとき、急性腎障害を発症した患者さんの中に、自然に回復する人としない人がいて、その分かれ目がなんなのかわからなかったが、そこにはこのようなAIMのはたらきがあったのかもしれない。
こうして遺伝子改変マウスを使った実験で、AIMが急性腎障害の治療に役立つことがわかった。

それと同時に、もう1つの大きな成果が得られた。

AIMの持つ「体から出たゴミの掃除」という根本的な機能が自分の中ではっきりと見えたことである。すなわち、肥満も脂肪肝も肝臓癌も、種類は違ってもすべて「体から出たゴミ」が溜まって起こるもので、AIMによってそれらのゴミを片づけることで、病気を抑えていたのだ。

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どうでもいい、じじぃの日記。
近年、免疫反応のゴミ処理係と言われていた白血球の一種「マクロファージ(貪欲細胞)」が注目を集めているそうです。
宮崎徹著『猫が30歳まで生きる日』によると、
「スイスでは、名門バーゼル免疫学研究所で新しい遺伝子を発見。白血球の一種であるマクロファージを死ににくくする働きがあることを試験管で確認し、apoptosis inhibitor of macrophageの頭文字を取って自らAIMと名づけました」
「しかし、AIMと名づけてはみたものの、AIMが実際に体の中で何をやっているか、さっぱりわかっていなかった」
「テキサス大では十分な研究費を獲得し、AIMの研究を続けたが、やはり成果は出なかった。しかし、それでも研究をやめることはできなかった。さまざまな実験を繰り返していると、確たる成果は出ないものの、データに”小さな違和感”を覚えることが何度もあったからだ」
動脈硬化巣に集まったマクロファージは、AIMをたくさん生成していた。AIMのはたらきはマクロファージを長生きさせることだから、マクロファージの数が増え続け、動脈硬化巣の壁はどんどん厚くなっいく」
著者は免疫学者だったので、発見したAIMが免疫に関係するタンパク質と捉えていたが、実は動脈硬化に関係するタンパク質だったのである。
ずっと気になっていたのが、ある論文を読んだことがきっかけで、その正体が現れたのであった。
日本では腎臓疾患で人工透析を受けているが30万人以上もいる。
ネコ用に開発された腎臓病の薬が、そのうち、人間にも使えるようになるらしい。
そのうち、お世話になるかもしれないなあ。