じじぃの「歴史・思想_455_韓国社会の現在・デジタル先進国・ペーパーレス化」

【行政サービス一元化、縦割り打破は可能か?】報道1930まとめ 20/9/22放送

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=mn4ACeqxNNc&feature=emb_title

報道1930

2020年9月22日 BS-TBS
【キャスター】出水麻衣、松原耕二 【コメンテーター】堤伸輔 【ゲスト】平井卓也(デジタル改革担当大臣)、庄司昌彦武蔵大学教授)、澤田伸(渋谷区副区長)中継出演
行政サービス一元化、縦割り打破は可能か? なぜ出来た?IT化進む自治体の現場では。 コロナ時代の“デジタル田園都市構想”。日本は「失われた20年」を取り戻せるのか?

行政サービス一元化、縦割り打破は可能か?

霞が関の官公庁 デジタル化のちぐはぐ
各省庁は仕様の異なるシステムを使用していて、ネットワークも縦割り。
平井卓也、「国民から見て繋がっていない。これは不便。サービスデザインを根本的に変えていこうというのが今回ある。(これまでは)情報統合をしようという考えがなかった」

日本と韓国、引っ越しを例に比較。

日本は、引っ越しの前に役所、郵便局などに書類を提出。
引っ越しが完了したあとは、転入届や学校にも届出が必要、ガス、水道、電気にも個別の申請が必要。
最大で7ヵ所訪問、13種類の書類が必要。
一方の韓国は、2001年以来国家レベルで行政情報を一元化。
現在は、政府のサイトにアクセスし引っ越し先の住所を入力するだけで手続きが完了、書類の必要なし。

松原耕二、「日本では引っ越しをしたらいろいろな手続きが必要だ。日本が韓国のようになるのは2年後かそれとも10年後か」

平井卓也、「国民の声を聞きながら、優先度をチェックしながら進める」

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『韓国社会の現在―超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』

春木育美/著 中公新書 2020年発行

第3章 デジタル先進国の明暗―最先端の試行錯誤 より

国策によるクレジットカード使用の推奨

2016年時点で、日本のキャッシュレス決済比率は19.8%にすぎず、日本政府は2025年までに40%へ高める目標を掲げている。「キャッシュ大国」の日本と異なり、「キャッシュレス大国」の韓国では、2016年にはすでにキャッシュレス決済が96.4%と突出して高く、世界最高水準にある。
韓国のキャッシュレス決済は、クレジットカードの割合が全体の約8割を占める。政府が国策として、クレジットカード決済を後押ししてきたからだ。1997年のアジア通貨危機後、未曽有の不況に襲われたことが契機となり、政府はクレジットカードの普及を強力に推進した。
その目的は、第1に税収を向上させるためである。韓国は自営業率が25.1%(2018年)と高く、自営業者の所得捕捉率を高め、脱税防止策を強化する必要があった。
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今後は、モバイル運転免許証などが発行されるようになる。政府は紛失による再発行費用を節減するため、財布レス化を積極的に進めている。
いまや若い世代ではデート代は割り勘で、2人でまとまったお金をチェックカードに入金し、デートの支払い時にはそのカードを使用するカップルもいる。チェックカードは日本のデビットカードに似たもので、銀行ATMのカードであるが、このカードで支払いにも使える。クレジットカードが持てない未成年は、チェックカードを使うことが多い。
友人同士の食事は、誰かがまとめてクレジットカードで支払い、自分の分はスマホで銀行のアプリを通じて相手の口座に振り込む。あるいはモバイル決済で簡単に個人間送金ができる。キャッシュレスの普及により、以前にはあまりなかった割り勘文化が若い世代を中心に急速に広がった。
店舗の端末の不具合などでクレジットカードが使えない場合は、店から提示された口座番号にその場で振り込む。スマホのアプリを通じて簡単に送金ができるカカオペイなどの簡単決済も利用度が高い。
公的機関では、決済はすべて法人カードで行い、個人のカードを現金での立替払いはありえない。

不必要な文書を書かせてはいけない

韓国は2001年、行政手続きを電子申請に統一し、行政事務は原則として電子処理化することを定めた「電子政府法」を制定した。
電子政府法は行政の業務効率やサービスの向上を目的とし、各省庁や自治体は行政機関の間で確認できる情報を共有し、不必要な文書を国民に書かせたり求めたりしてはならないと定めている。
日本の行政手続きは電子化されていない部分が多く、「eガバメント」の遅れが課題となっている。各種の証明書は必要な場合、役所に出向いて申請し紙で発行してもらうという手間がかかる。ネットで申請できる自治体でも、返信は郵送でなされるため時間がかかる。なかにはネットで申請するのは別に発行手数料を郵便為替で送れという自治体もあり、結局、郵便局に行くはめになる。韓国では、こうしたアナログ方式の手続きが必要となることはない。
日本も周回遅れではあるが、2019年5月に行政手続きを原則電子申請に統一する「デジタル手続(デジタルファースト法)法」が成立し、利便性を高めようとする動きが進み始めた。
すでにコンビニなどに置いてあるマルチコピー機で、住民票の写しなどの各種証明書を収得することは可能だ。ただ、利用にはマイナンバーカードが必要だ。カードの取得率が低いだけに、こうしたデジタル行政サービスの利用は限定的となっている。
一方、韓国では、就職などで住民票や戸籍謄本、卒業証明書といった各種証明書が必要な際には、役所に出向かず、オンラインで申請する。書類交付はメールで知らされ、簡便で速く、交付手数料もかからない。発行書類はそのまま提出先にメールで送信するが、必要に応じて自宅のプリンターで印刷して使うこともできる。
スマートフォンを使った電子申請システムも進んでいる。「政府24」というアプリから、住民登録謄本・抄本や、健康保険資格確認書、地方税納税証明書といった電子証明書の発行が申請できる。電子証明書の発行対象は、2020年には家族関係証明書、国民基礎生活受給者証明書、障がい者証明書など100種に、2021年までには印鑑証明書など300種まで拡大し、スマホで手続きを行いオンラインで完結できるようになる。
計画通りペーパーレスが順調に進めば、2022年までに紙の証明書発行数は半減し、約3兆ウォンのコスト削減につながると見込まれている。

新型コロナウイルス下のオンライン授業

さて、韓国の学校教育は3月始業である。2020年は新型コロナウイルス感染者の増加により、3月2日の入学式や新学期開始が見送られた。同時に「学習機会の確保を最優先に」を合言葉とし、オンライン授業に切り替える準備が早急に進められた。4月9日に中学3年生と高校3年生から始まったオンライン指導は段階的に拡大し、4月20日には全学年で遠隔学習が行われるようになった。官民協力のもと、低所得層の生徒にはオンライン授業に必要なスマート機器約30万台が貸与された。
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一方、日本の学校教育は、紙の教材を用い黒板にチョークで書いて教えるというスタイルがいまだに主流である。コロナ禍による休校でICT(情報通信技術)の導入やオンライン授業の環境整備の遅れが露わになり、在宅学習が十分にできない問題に直面した。首都圏では、公立と私立、あるいは学校間のオンライン授業対応の差も顕著に見られた。
本の学校はデジタル機器の利用頻度がOECD加盟国で最も低く、情報化やデジタル対応に不備があり出遅れていることは、これまでもたびたび指摘されていた。オンラインで学習機会を提供する手だてが不充分なまま、全国一斉休校に突入した日本の教育現場が大混乱に陥ったのは当然であった。