じじぃの「歴史・思想_454_韓国社会の現在・貧困化・ひとりごはん」

韓国、高齢者の相対的貧困率がOECD1位…日本は?

2020.10.09 朝鮮日報
現役を引退した人たちの相対的貧困率が、経済協力開発機構OECD)加盟国・地域のうち韓国が最も高いことが分かった。
http://life.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/10/09/2020100980051.html

『韓国社会の現在―超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』

春木育美/著 中公新書 2020年発行

第2章 貧困化、孤立化、ひとりの時代の到来 より

「先成長、後分配」による制度の遅れ

韓国は65歳以上の相対的貧困率が43.7%(2017年)とOECD加盟国36ヵ国仲トップだ。相対的貧困率とは、年収が中央値の半分に満たない所得で暮らす人の割合を示す。
OECD加盟国平均は14.8%で、韓国はその3倍も貧困率が高い。それにもかかわらず、国内総生産GDP)に対する社会保障支出比率は11.1%(2018年)と、日本の21.9%、OECD加盟国平均の20.1%のほぼ半分だ。社会保障面で、高齢者は置きざりにされているのに等しい。
韓国の高齢者の労働力率が主要国のなかで突出して高いのは、生活困難により働き続けることを余儀なくされているからだ。高齢者の自殺率は、毎年OECD加盟国のワースト1位と2位を行き来している。
このような状況に追い込まれたのは、近代化の過程で「先成長、後分配」をスローガンに、社会福祉が後回しにされたためである。開発独裁のもとで、目覚ましい経済発展を遂げたものの社会保障機能は家族や親族が担うものとされ、老後の生活を支える年金制度の房乳が遅れた。
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1997年のアジア通貨危機により、未曽有の経済不況と生活不安に直面するや、政府は社会保障制度の改革を急ピッチで進めた。都市自営業者らにまで加入対象が広がり、ようやく「国民皆年金」の仕組みが整ったのは1999年のことである。
公的年金の基本構造は国民年金のみの1階建てで、職域統合型の単一の国民年金となっている。満額受給には40年間の加入期間が必要である。1988年導入と歴史が浅い制度であるため、満額受給者が出るのは2028年以降となる。
統計庁の「高齢者統計(2019年)」によれば、現在の年金受給額は月平均61万ウォン(約5万3000円)と低額で、老後の生活保障には程遠い。年金受給額は45.9%と低く、2人にひとりは無年金状態にある。
ちなみに、年金制度が成熟している日本の場合、2019年時点で40年間保険料を払い続けた場合の国民年金は、平均月額で6万5000円、所得代替率は36.4%である。

増える「ホンパプ」

「ホンパプ」とは「ひとりごはん」という意味である。未婚、非婚化、高齢化にともない単身世帯が増加し、家庭でひとり食事をする「孤食」が増えているが、ホンパプは本来「ひとりで外食する」というニュアンスのことばである。
少し前まで、韓国ではひとりで外食する人はごく少数だった。飲食店でひとり食べたり飲んだりしている人には、「人間関係が希薄で哀れ」や「どこか問題がありそう」と言いたげな視線が飛んできて肩身が狭かった。
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こうした世帯構造の変化にマッチするように、あるドラマが韓国で大ヒットした。日本のテレビドラマ「孤独のグルメ」だ。輸入雑貨商の中年男性が仕事で訪れた都市の飲食店で、ひとり食事を堪能すう姿を描いたこのドラマは、「ホンパプは決してみじめなことではない」と認識を変えることに貢献した。
孤独のグルメ」はあちこちのケーブルテレビで放映されるうちに大評判となり、2018年の「ソウルドラマアワード」で、韓国でもっとも人気がある海外ドラマとして表彰された。

8割増しのひとり暮らし

1世帯当たりの人数は2.46人、およそ半分の世帯はひとり暮らしか夫婦のみ。2018年の韓国の家族像だ。1975年まで韓国は、「夫婦2人と子ども3人」の5人家族が、長らく標準モデルだった。世帯員数は1985年の4.1人を境に減り始め、1990年には3.7人となり、4人を切った。
さらに、2005年には2.9と3人以下となった。2018年には2.46人にまで減り、日本の2.47人(2017年)とほぼ並んだ。
この10年間は、韓国女性に関して大きな社会的変化が起きた時期だ。大学進学率が上昇し、地方から都市部へと人口移動が進んだ。社会進出が活発になり経済力を得た。結婚観の変化と経済的困難が重なり、未婚・晩婚化が増えた。
韓国統計庁によれば、2006~15年の10年間で、25~39歳の男性ひとり暮らしの世帯数には大きな変動がみられなかったのに対し、女性は8割も増えた。ひとりで暮らす20代女性の82%は大卒以上の学歴を有し、95.3%が都市部に居住している。
単身世帯の増加により、コンビニは年々売り上げを伸ばしている。単身世帯向けの食品や食材を販売するオンラインショッピングの取扱額は、2013年の2兆ウォンから18年には4兆ウォンと倍増した。フードデリバリーサービスも好調である。
ひとり暮らしが増え、他人との接触を避けたがる傾向が強まると、宅配便では出勤前の早朝に玄関前に荷物を置き配する「サイレント宅配」の需要が急騰した。防犯上の理由もある、特に女性に好まれている。
消費パターンの変化で打撃を受けたのは、デパートや都市近郊の大型スーパーと量販店である。置き場所がないため、単身世帯は必要なときそかモノを購入せず、買い置きをしない。オンラインショッピング市場が公共なのは、こうしたニーズにマッチしているからだ。