じじぃの「歴史・思想_453_韓国社会の現在・世界でもっとも老いた国へ」

韓国の世界一位。出生率ぶっちぎりの世界最低を更新中。他に例を見ない出生率0人台

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https://www.youtube.com/watch?v=8v2BqTqR9qA

韓国、急速に進む少子化 「出産奨励」に冷ややかな若者

2019年12月24日 朝日新聞デジタル
日本では今年の出生数が90万人を割る見込みだが、お隣の韓国もさらに急速な少子化に直面している。
政府が対策を打ち出す中でも出生率はむしろ下がり、昨年、とうとう1を割った。子どもを持つかは個人の選択だが、選択肢を狭める要因とは何か。韓国の専門家はそれを、韓国社会が取り組みを迫られる「宿題」なのだという。
https://www.asahi.com/articles/ASMD37FY3MD3UPQJ00X.html

『韓国社会の現在―超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』

春木育美/著 中公新書 2020年発行

第1章 世界で突出する少子化―0.92ショックはなぜ より

「世界でもっとも老いた国」へ

韓国統計庁の「将来人口推計」によれば、近未来の韓国は、人口構造が極端に歪んだ社会となる。具体的にみていこう。
韓国の近未来図は、少子高齢化が加速度的に進んだ社会である。この点は日本も同様である。WHOの発表(2018)によれば、平均寿命は日本1位、韓国9位で、世界トップランクである(2016年時点)。今後、高齢者の層はさらに厚みを増し、生まれる子供の数はますます先細る。
両国を待ち受ける未来は、国民の2~3人にひとりが高齢者といういまだかつて経験したことのない高齢者大国となることだ。

50年で人口1200万人が消えるという推計

韓国の総人口はこの先、急激に減少する見通しだ。出生率と寿命を低く見積もる「低位推計」では、2067年に総人口は4000万人を下回り、3929万人に落ち込む。2017年から67年にかけて人口が約1200万人減ると推計されているが、現在のソウル市の人口が約1000万人であることを考えると、ソウル市がすっぽり消滅してしまう激減ぶりである。
さらに2117年には、人口が1168万人にまで低下する見込まれている。2017年から100年間で、人口規模が現在の5分の1になるという、衝撃的な予測だ。
ちなみに日本では、2115年には人口人口が5055万人まで低下すると見通されている。2015年の1億2709万人から100年間で、人口が半減する。韓国ほどではないものの、日本でも人口減のインパクトは大きい。
大規模な移民の流入で生産年齢人口の減少スピードを遅らせることはできても、出生率が低いため、人口減少を食い止めるのに十分な政策とはいえない。日本や韓国では、将来的に人口が増える見込みはほぼない。

子どもを産まない理由

日本では結婚した男女からは、いまでも平均して2人近くの子どもが生まれている。韓国では1.33人にとどまり、日本より少ない。
各種の調査で「子どもを産まない」理由のトップに挙げられるのは、「養育費や教育費がかかりすぎる」である。特に習い事や塾通いなど、学校外の教育費が家計に占める割合の高さが大きな負担となっている。熾烈な受験戦争が続き、教育費は高止まりしたままだ。韓国の保健福祉省によれば、子どもひとりを4年制大学に進学させ卒業させるまでにかかる費用は、少なくとも3億ウォン超(日本円で約2600万円)の上る。
そもそも職に就けなかったり、不安定な非正規職にあり生存圏が脅かされている若者が、「自分自身が生きていくことで精一杯で扶養家族なんて持てない。自分のことしか責任持てない」「弱者(子ども)を抱えたら共倒れ」と言うのは無理もない。
生活の質が悪化するなか、子どもを産むことで生じる新たな経済的負担を回避したい、という意識は、日本でもかなり共通したものがあるのではないだろうか。
ただ、ここでも看過できないのが、韓国女性が結婚のみならず出産・育児に対してもネガティブな感覚を強く持っている点である。
若い女性たちは「子育てが楽しいそうに見えない。自己犠牲の上に成り立っている」「これは出産スト。国の対策が全然できていないことに対する抗議活動」「働きながら子どもを産み育てる環境がまるでない」「教育にお金がかかるし、受験は情報戦で母親の負担が大きすぎる」「子どもに自分のようなたいへんな思いをさせたくない。必死で勉強しても就職すらできないのに」と口をそろえる。
韓国の若い女性たちは、想像以上に厳しく現実を見ているともいえるが、出産や育児で得られる喜びや楽しさには想像力が及ばないようにも見える。だが、そうした想像さえもさせない現実の厳しさがあるとしたら、それはいったい誰の責任なのであろうか。
第5章で詳述するが韓国でミリオンセラーとなり、日本でも2019年にベストセラーとなった小説『82年生まれ、キム・ジョン』は1982年生まれのひとりの女性を主人公に韓国社会での生きづらい現実を描いている。仕事を辞めて育児をするうちに精神を患った主人公ジョンは、夫にこう叫ぶ。
「死ぬほど痛い思いして子どもを産んで、自分の生活も、仕事も、夢も捨てて、私の人生、私自身、すべて放棄して子どもを育てているのに……」
この台詞を読んだ若い世代が子どもを産みたくなくなっても、不思議ではないように思われる。
この間、韓国政府はこの現実をどう見つめていたのだろうか。韓国の少子化政策とはどのようなものであったのだろうか。

人口減少不可避の認識のうえで

少子化の流れはもはや止めることは困難である。人口が減少していくことは明白なだけに、一気にさまざまな布告を打つ韓国の政策推進のスピード感には目を見張るものがある。日本にはない発想で、少子化がもたらす人口減を見据えて試行錯誤を重ねている。
しかし、韓国が実行している一部の政策には、出生率の向上に結びつくとは考えにくい施策もあり、少子化対策として予算を投入する方向性が違うと思われるものもある。

深刻な少子化を引き起こした直接的要因は、未婚や非婚の増加である。その背景にあるのは、極度の就職難と不安定雇用などの経済的不安である。