Why won't China Surpass the United States? - VisualPolitik EN
A Shrinking China Can’t Overtake America
China's Population Decline Can't Overtake America's Economy
JULY 29, 2022 Foreign Policy
In 2009, on the heels of a U.S.-driven international financial crisis, a book by a British journalist, Martin Jacques, exploded out of the gates of the publishing world and, for a time, dominated perceptions of what many saw then (and now) as perhaps the most important questions in global affairs: Whither China? And with its stirring rise, what will its impact be on the distribution of global power?
https://foreignpolicy.com/2022/07/29/china-population-decline-demographics-ecomomic-growth/
第8話 米中人口戦のカレンダー より
社会の若さを比較する
「米中人口戦」のポイントの1つ目は、国家としての「若さ」の維持である。
高齢化率を計算すると、2020年は中国が12.0%(中国の人口センサスでは2020年の高齢化率は13.5%)に対して米国は16.6%と中国社会のほうが少し若い。しかしながら2035年になると、中国21.4%、米国21.2%と逆転し、2050には中国28.3%、米国22.4%とが逆転の差が開く。
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両国ともに21世紀を通じて高齢化が上昇するが、中国の高齢者数の増加ペースがいかに速いかについて、具体的にイメージしてもらえただろう。繰り返しになるが、それは急ピッチでの高齢化対策や社会システムの作り替えが求められるということである。
しかしながら、高齢化率が急上昇する社会とは、その必要性を理解しながらも社会の作り替えが遅れがちになる。支え手である勤労世代の負担が急速に重くなるからである。
潜在扶養指数が示す深刻さ
1人の高齢者を何人の勤労世代で支えているかを見ると、その意味がよく分かる。国連は65歳以上の高齢者人口に対する25~64歳人口の比率を「潜在扶養指数」としている。潜在扶養指数が低下するということは、医療、年金、社会福祉といった高齢者を対象とする公的制度を構築・維持するための勤労世代1人当たりの財政的な負担が大きくなるということだ。少子高齢化が労働市場や経済成長に与える影響を明確にする指標としてもよく使われるが、この指標が今後どう推移していくのか確認しよう。
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21世紀後半の両国を比較すると、高齢化に伴う負荷は圧倒的に米国のほうが軽くなる。
ただし、米国もほぼ勤労世代が2人で1人の高齢者を支えなければならない社会が続くという意味では、1人の勤労世代が1人を支えなければならない中国よりはマシだとはいえ、決して楽ではない。
中国の生産年齢人口の変化
「米中人口戦」のポイントの2つ目は、勤労世代の推移だ。20世紀後半から21世紀初頭にかけての人口戦で勝利を収めてきた中国が、豊富な国内マーケットや労働力を武器に国勢を拡大してきたことは先述の通りだ。しかし、中国がこうした手法をいつまで続けられるかは、米中人口戦の行方を占うだけでなく、多くの日本企業にとっても最大の関心事だろう。
働き手となり、消費が盛んな年齢層でもある生産年齢人口の減少スピードを確認すれば、おおよその予測はつく。
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中国政府は人口センサスで、2020年の15~64歳人口を国連の低位推計よりも少ない9億6776万人とし、ピークだった2013年より3.8%減ったことを明らかにしている。ちなみに、中国は60歳で現役をリタイアする人が多いことを先述したが、中国の勤労世代である15~59歳は、2020年は8億9438万人となり、この10年間で4500万人ほど少なくなった。就業者数も2017年にはピークアウトしている。中国の労働力や巨大な国内マーケット(消費力)は国連の推計以上に速いスピードで縮小していくということだ。
中国のウィークポイントとして、十分に経済発展する前に高齢者対策にエネルギーを割かざるを得なくなる「未豊先老(みふせんろう)」が指摘されてきたが、その具体的なイメージがお分かりいただけただろうか。
少子化の速度を比較する
「米中人口戦」のポイントの3つ目のポイントは、今後の少子化の行方だ。出生数の激減が続けば、両国とも少子化対策に取り組むだろうが、結婚、妊娠、出産はセンシティブな問題であり、政策上の有効な手立てが存在しないことは日本が証明している通りだ。両国の出生数を予測するには、出産可能な女性人口をチェックすることである。若い女性が激減してしまえば、合計特殊出生率が多少上昇しても、将来にわたって出生数の減少は止まらなくなる。
出産の中心的年齢である25~39歳の女性数の将来推計を比較しよう。中国は2020年が「1億5750万8000人」なのでこれを基準値とすると、2040年には26.8%減、2060年は50.2%減、2080年62.0%減、2100年74.4%減と凄まじい勢いで減少する。
対象年齢を15~49歳に拡大しても、2040年が20.9%減、2060年41.3%減、2080年60.2%減、2100年71.7%減と焼け石に水といったところだ。
日本と同じく、中国も”絶滅”への道に足を踏み入れたと言える。一人っ子政策という自殺行為は、これからの中国に深く広く、どこまでも付きまとうことになるのである。
これに対して、米国の25~39歳の女性人口は2020年が「3379万8000人」だ。これを基準値として計算すると、2040年は2.7%増でわずかながら増える。以降も少しずつ増えて、2060年4.9%増、2080年6.0%増となり、2100年には9.6%増で現在の1.1倍となる。
対象年齢を15~49歳にすると、2040年5.7%増、2060年6.9%増、2080年9.9%増、2100年12.5%増だ。
低位推計では15~49歳の女性人口は2035年の7930万3000人でピークとなり、以後は減り始める。2045年までは2020年を上回る水準で推移するため、2040年で3.8%増だが、2060年には9.0%減、2080年20.9%減、2100年28.7%減と、中国ほどでないにせよ大きく減ることとなる。移民を受け入れることで社会としての「若さ」を維持するという効果がいかに大きいかは一目瞭然だろう。
ここまで「米中人口戦」について3つのポイントに絞って展望してきたが、人口をめぐる中国の変化の速さを考えると、中国がこれまでのような経済成長の勢いを続けられるのも今後10~20年程度であることを窺わせる結果となった。
高齢化に伴う社会保障費の伸びは、中国社会の手足を縛ることとなろう。軍事費の伸びを遠からず抑制せざるを得ない状況が来ることは間違いない。各国に大盤振る舞いの資金援助をすることで国勢を拡大するといったこれまでの手法も、見直さざるを得なくなるだろう。それを無理に続けようとするならば、そのひずみは中国政府が考えるより大きくなる可能性がある。
世界中が固唾(かたず)を呑んで見守る両国の覇権争いであるが、人口戦から見る限りでは、中国に勢いが残っている今後10~20年間を、米国と価値観を同じくする国々がいかに乗り切れるかにかかっていると言えそうである。